
斜め読みされても伝わる文章の書き方——シズル感が読者を引き止める
じっくり読ませようなんて愚の骨頂
現代人はみんな忙しい。じっくり文章を読んでいる時間はない。 文章の大半は斜め読みで、必要ない部分は容赦なく飛ばし読みされる。
忙しい人たちのために、まずは読者の「興味を惹くタイトル」。次に、「なぜこの文章を読む必要があるのか?」を考えて、あとはキーワードだけ拾い読みしても全体がわかる文章を書くことが大切だ。
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夕食前の買い物に出かける主婦や、通勤途中のサラリーマンなど、時間がない人が目にすることを前提にタイトルを考える。「朝食に食べたい副菜」と書くと、よっぽど副菜に興味がない限りは読まれない。しかし、 「忙しい朝」「たった5分でできる」 と入れることで、一気に主婦層の興味関心を惹きつけることができる。
読者に「これは自分のことだ」と思わせる
「じっくりと読まない相手」をどう惹きつけるか。 1つは 「あるあるネタ」を入れて「これは自分のことだ」と思わせる こと。さらに 「読者が考えている」ことを裏切る こと。たったこの2つを意識するだけで、読者に「えっ!?」と思わせ、最後まで文章を読ませることができる。
文章に「シズル感」を出すだけで読まれ方が変わる
「ステーキを売るな、シズルを売れ」 とは、「ホイラーの法則」で有名な経営コンサルタント、エルマー・ホイラー氏の言葉だ。「商品そのものを売るのではなく、ステーキの焼ける音や匂いを伝え、お客さまがそれを買いたくなる理由」を表現しなさい、という意味である。
文章も同じだ。 「読みたくなる理由」こそが、文章におけるシズル感 なのだ。
✕ 赤いサクランボがいっぱい売られている
○ 真っ赤に熟れて、いまにも果汁があふれ出そうな佐藤錦が売られている
✕ 卵かけご飯
○ プリっとして、箸で軽く黄身を押さえると、まるで黄身が押し返しているかのような弾力のある、究極の卵かけご飯
リアリティのある文章は読者の心を惹きつける。そして、シズル感を演出する際に欠かせないのが 「オノマトペ」 だ。
視覚 ……キラキラ、チカチカ、くっきり 聴覚 ……ザーザー、ジャージャー、キーキー 触覚 ……ふわふわ、ザラザラ 嗅覚 ……ツンとした、まろやか 食感 ……モチモチ、とろーり、シャキシャキ、トロトロ
実例を見てみよう。
これはおいしい牛肉です。 ↓ これはヒレ肉の中でも最高級の部位、シャトーブリアンです。柔らかいのに脂肪が少なめなので、噛んだときに肉汁がジュワッと口の中で広がります。
水槽で泳いでいた魚を捕まえてきたので、これからさばきます。活きがいいお刺身が楽しめますよ。 ↓ 5分前まで目の前の水槽で泳いでいた、ピッチピチの魚の活け造りをいただきましょう。身が引き締まっているから、口に入れて噛むとコリコリとした食感が楽しめます。
シズル感を意識して書くと、単調でつまらなかった文章が一気にリアリティを増してくる。
ただし注意点がある。シズル感を出そうと思ったら、極力 「きれい」「美しい」「かわいい」「おいしい」など一般的な形容詞は使わない こと。「きれいな人」であれば「肌がつやつやして、顔立ちが整っている人」。「かわいい犬」であれば「毛並みがよくて、人懐っこそうな顔をした小型犬」など、より具体的な言葉で置き換える。
臨場感や躍動感を演出するテクニック
擬声語や擬態語、擬音語を入れることも有効だ。
✕ 桜が散る春
○ 桜がひらひらと舞い散る春の夜
✕ この車は最高時速○○キロで走ることができます
○ 最高時速○○キロでグングンと走るため、爽快感を味わえます。まるで、仕事の疲れをふきとばしてくれるかのようです。
「桜が散る」でもいいのだが、「舞い散る」「春の夜」と付け加えることで、「まさに今桜が目の前で散っている」「昼ではなく夜である」という情景をリアルに思い浮かべることができる。
擬態語、擬声語は臨場感を描くのに有効な反面、何度も繰り返し用いると子どもが書いたかのような、締まりのない幼い文章になることもある。 多用は避けつつも、感じたままを書き記し、読者の心をぎゅっとつかんで離さない ——そんな使い方が理想だ。