
欲とあさましさ(ポエ部)
友の本が売れたと聞いて
おめでとう、と打った指の下で
うらやましい、と別の指が動く
二本とも、まちがいなく私の手だ
人はそんなに、美しくない
私はそこが、好きだ
葬式の帰り道に腹が減る
悲しかったのは嘘ではない
腹が鳴ったのも嘘ではない
どちらも同じ体に住んでいる
人はそんなに、上等ではない
私はそこが、好きだ
人の不幸を聞いて
かわいそうに、と言いながら
自分でなくてよかった、と思う
思った自分を、あとで少し嫌う
嫌いながら、また同じことを思う
そういうところが、好きだ
もう歳だと言った五秒後に
次のがいちばん良くなると思っている
そいつは私より欲が深くて
私よりずっと正直だ
しつこくて、諦めが悪い
そういうやつが、好きだ
欲を捨てた顔をしてみせる
捨てたふりがうまくなっただけで
一つも捨ててはいない
隠すのが下手で、隠したがる
そこが、たまらなく好きだ
きれいに削がれた人を見ると
少し、寂しくなる
私は、余ったところが好きなのだ
はみ出して、垂れて、隠しきれない
あの、みっともないところが
そして明日も腹は減る
減るなら、まだ、こちら側にいる