
🎸Guitar名曲てんこもりManuel de Falla に聞く🎤「なぜ粉屋はあんなに踊り狂ったのですか?」
スペイン音楽を学んでいると、ある日こう思う。「クラシックギターなのに、なんだこの情熱は。」
スペイン音楽は、上品なだけでは終わらない
スペイン音楽を学んでいると、ある日ふと思う。
「クラシックギターなのに、なんだこの熱量は」
その代表格が、Manuel de Falla の《Danza del Molinero》である。日本語では「粉屋の踊り」。原曲はバレエ《三角帽子》の一場面で、粉屋の男が力強く、陽気に、少し見栄を張りながら踊る音楽である。
今日は、その作曲者ファリャ先生に、エリカが突撃インタビューしてみることにした。
登場人物
エリカ「先生、この曲、最初から喧嘩売ってません?」
ファリャ「ほう。なぜそう思いますか」
エリカ「だって、最初からドン、ドン、ドンって来るじゃないですか。優雅な貴族の舞踏会というより、村祭りで腕まくりした人が出てきた感じです」
ファリャ「よく見ています。この曲は宮廷の音楽ではありません。粉屋の男の踊りです。土の匂い、酒場のざわめき、民衆の熱が必要です」
エリカ「つまり、燕尾服より作業着」
ファリャ「かなり近いです」
《Danza del Molinero》とはどんな曲か
エリカ「そもそも、この粉屋さんは何者なんですか」
ファリャ「バレエ《三角帽子》に登場する人物です。権力者に振り回されながらも、庶民の知恵と生命力で生きる男です」
エリカ「なるほど。だから音楽に反骨精神みたいなものがあるんですね」
ファリャ「その通り。ただ荒々しいだけではありません。陽気さ、皮肉、誇り、少しの芝居気が混ざっています」
エリカ「粉を挽くだけではなく、空気もかき回す男ですね」
ファリャ「うまいことを言いますね」
この曲の魅力はリズムにある
エリカ「弾いてみると、とにかくリズムが難しいです。自分では情熱的に弾いているつもりなのに、録音すると、ただ急いでいる人になります」
ファリャ「よくある症状です」
エリカ「病名は何ですか」
ファリャ「情熱と焦りの混同症候群です」
エリカ「それ、ギタリストの持病ですね」
ファリャ「この曲では、リズムが命です。音を並べるだけでは踊りになりません。低音が床を踏み、高音が身振りを作り、アクセントが視線を飛ばすのです」
エリカ「低音が足、メロディが表情、アクセントが目線」
ファリャ「なかなか良い理解です」
ギターで弾くときの難しさ
エリカ「ギターで弾く場合、何が一番難しいですか」
ファリャ「まず、低音の推進力です。低音が弱いと、踊りの足腰がなくなります」
エリカ「足腰の弱い粉屋は困りますね」
ファリャ「次にアクセントです。全部を強く弾いてはいけません」
エリカ「情熱だから全部フォルテ、ではないんですね」
ファリャ「それは情熱ではなく騒音です」
エリカ「耳が痛いです」
ファリャ「強い音の前には準備があり、弱い音の中にも緊張があります。上手い演奏は、ただ大きいのではなく、音の重心が明確なのです」
表現のイメージ
エリカ「この曲をどう表現すればいいですか」
ファリャ「居酒屋で自慢話をしている男を想像してください」
エリカ「急に具体的ですね」
ファリャ「私は強い。私は踊れる。私は働き者だ。私は女性にも人気がある」
エリカ「最後はだいたい盛ってますね」
ファリャ「その少し大げさな誇らしさが、この曲には必要です。真面目すぎると面白くありません。軽すぎると薄くなります。堂々として、少し芝居がかって、しかし品を失わないことです」
エリカ「庶民の踊りだけど、音楽としては品格が必要」
ファリャ「その通りです」
練習のポイント
エリカ「では、具体的にどう練習すればいいですか」
ファリャ「最初はゆっくり弾きなさい」
エリカ「また出ました。ギター界の万能薬、ゆっくり練習」
ファリャ「速く弾けない人ほど、遅く練習したがりません」
エリカ「それ、全員に刺さります」
ファリャ「まず低音だけを取り出し、リズムの骨格を作ります。次にアクセントを確認します。そして最後に装飾や細かい動きを乗せます。最初から全部を弾こうとすると、情熱ではなく交通渋滞になります」
エリカ「スペインの太陽の下で渋滞はつらいですね」
録音して確認すべきこと
エリカ「録音すると、何を聴けばいいですか」
ファリャ「まず走っていないか。次に低音が踊っているか。そしてアクセントが乱暴になっていないかです」
エリカ「音を間違えたかどうかだけでは足りないんですね」
ファリャ「もちろんです。この曲で大切なのは、間違えないことだけではありません。聴いている人が、粉屋の男の動きを感じられるかどうかです」
エリカ「つまり、録音を聴いて足が動きそうなら成功」
ファリャ「少なくとも、椅子から少し腰が浮けば良い兆候です」
この曲が育ててくれる力
《Danza del Molinero》は、ただの技巧曲ではない。リズム感、低音の支配力、アクセントの品格、舞曲としての推進力、そしてスペイン音楽特有の熱を学ばせてくれる曲である。
エリカ「先生、この曲、指だけでは弾けませんね」
ファリャ「ええ。身体でリズムを感じ、耳で重心を聴き、心で人物を演じる必要があります」
エリカ「粉屋を演じるギタリスト」
ファリャ「そうです。音楽家は、ときどき俳優でもあります」
まとめ
《Danza del Molinero》は、スペインの土、太陽、笑い、反骨精神が凝縮された一曲である。演奏するときは、単に速く、強く、派手に弾くのではなく、低音で床を踏み、アクセントで身振りを作り、リズムで人物を立ち上がらせることが大切だ。
エリカ「最後に一言お願いします」
ファリャ「音符を弾くのではなく、粉屋を踊らせなさい」
エリカ「決まりましたね」
ファリャ「作曲家ですから」
エリカ「でも、ちょっと自慢げです」
ファリャ「粉屋の踊りですから」