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Photo byvalo__427

「チョン・ガンギ」

    「今までの人生で、

    一番記憶に残っている人は誰ですか?」

    そう聞かれたら、

    僕は、

    チョン・ガンギさんと答えるかもしれない。

    もちろん、

    会ったことはない。

    顔も知らない。

    話したこともない。

    それどころか、

    本人を見たことすらない。

    7年ほど前、

    僕はグアムに旅行に行った。

    ホテルのエントランスには、

    韓国から来たと思われる旅行客の集団がいた。

    僕たちも、

    次の場所へ移動するため、

    バスを待っていた。

    その時だった。

    ものすごく大柄な男性が、

    突然、

    ホテル中に響き渡るような声で叫んだ。

    「チョン・ガンギーーー!!!」

    本当に、

    耳が痛くなるくらい大きな声だった。

    そして、

    もう一度。

    「チョン・ガンギーーー!!!」

    何が起きたのか、

    僕には分からない。

    ただ、

    状況から考えると、

    おそらく韓国人旅行客の集合時間だったのだと思う。

    そして、

    チョン・ガンギさんが、

    まだ来ていなかった。

    大柄な男性は、

    必死に探していたのだろう。

    でも、

    僕たちのバスが来た。

    そのまま乗り込み、

    次の目的地へ向かった。

    だから、

    物語はそこで終わっている。

    チョン・ガンギさんは、

    現れたのか。

    寝坊していたのか。

    部屋番号を間違えていたのか。

    買い物に行っていたのか。

    そもそも、

    本当に遅刻していたのか。

    何も分からない。

    そして、

    7年経った今でも、

    時々思い出す。

    チョン・ガンギさん、

    あの後どうなったんだろう。

    不思議なものだと思う。

    僕たちは、

    毎日たくさんの人とすれ違っている。

    名前も知らない。

    二度と会わない。

    人生には、

    何の関係もない。

    それなのに、

    ほんの数秒の出来事だけが、

    なぜか何年も記憶に残ることがある。

    人生で記憶に残る人は、

    必ずしも、

    長く付き合った人とは限らない。

    ものすごく大切なことを教えてくれた人とも限らない。

    たった一度、

    ものすごい声で名前を呼ばれただけで、

    知らない誰かが、

    別の知らない誰かの記憶に、

    7年間住み続けることもある。

    人間の記憶というのは、

    本当に不思議だ。

    ちなみに、

    僕はチョン・ガンギさん本人のことを、

    何一つ知らない。

    でも、

    名前だけは、

    たぶん一生忘れない。

    もし今、

    どこかで元気に暮らしているのなら、

    伝えたい。

    7年前のグアムで、

    あなたをものすごい大声で探していた人がいました。

    そして、

    なぜかその声を聞いていた日本人が、

    今でもあなたのことを覚えています。

    人生とは、

    たまにこういう、

    何の意味もないのに忘れられない出来事があるから、

    面白い。

    チョン・ガンギさん。

    あの日、

    ちゃんとバスに乗れたのでしょうか。


    最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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    Dubai🇦🇪在住 コンサル歴10年。 コーチ、カウンセラー、講師のプロデュース。 歴史・芸術・心理から、人生を前に進める視点を発信しています。

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