
Wait 10 minutes #シロクマ文芸部
待つ時間をいかに過ごすか、それが重要だ。
ショッピングモールの中にある噴水は、吹き抜けで見通しがよいからか、待ち合わせで利用する人が多い。
噴水を見ていた玲央は、ジーンズのポケットに振動を感じ、スマホを取り出した。
「ごめん、10分ほど遅れちゃう」
彩からのメッセージは簡潔だ。
電車が遅れてるのか、支度に時間かかったのか、理由はよくわからない。
でも……。
この10分は貴重な時間だ。
玲央は前から気になっていた、同じフロアにある洋菓子店に向かった。
◇
待つ時間をいかに過ごしているのか、それが重要だ。
ショッピングモールの3階から、彩は噴水を見下ろしていた。
玲央にメッセージを送り、様子を探る。
スマホの画面を見た玲央は、すぐに歩き出した。
同じフロアにある洋菓子店に、玲央は入っていく。
もしかして、何かスイーツを買ってくれるのだろうか?
彩の口元が思わず緩んだ。
相手が待っているときに、どのような行動をとるか、彩は観察をする。
スマホに目を落とし、ただじっと待つ人。
暇つぶしに、コンビニに向かう人。
でも、待ち時間を利用して、スイーツを買ってくれる人は初めてかもしれない。
この人は当たりかも……彩はそう思った。
◇
「ごめん、待たせちゃって」
彩は急いで駆けつけた素振りをしながら、玲央に声をかけた。
「全然大丈夫だよ」
玲央は笑いながら手を振った。もう片方の手には、洋菓子店の紙袋を持っている。
「暇しちゃったよね、ホントごめん」
手を合わせる彩に、玲央は、
「買い物してたから…ほら」
と言って紙袋を持ち上げた。
「あ、そのお店知ってる。美味しいって、すごく評判だよ」
彩は目を丸くして、驚いたふりをした。
「そうなの? 前から気になってたんだけど……時間あったから、入ってみた。……後で一緒に食べない?」
「えぇ!? 嬉しい……遅れてきてよかったかも」
「毎回遅れちゃうのも、困るんだけど…」
二人は笑い合いながら、歩き始めた。
◇
洋菓子店の中では、店員がこんな会話をしていた。
「どうしたの、険しい顔しちゃって」
「いやちょっと、さっきのお客さんに頭きてて」
「どういうこと?」
「おすすめは? って聞かれて選んであげたんだけど……」
「うん…それで?」
「お店終わったら、一緒に食べませんかって…」
「えぇ!? ナンパされたってこと」
「うん。前から気になってたとか言っちゃって……」
小牧幸助さんの企画に参加させていただきました。