メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

    第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
    488.かがやく夜空の 星の光よ

    はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

     その後、ラーメン屋や見物客と小一時間に渡って言葉を交わし合ったコユキが表に出ると、既に日はとっぷりと暮れていた。

     何気なく見上げると一条の流れ星が空を横切って行く。

     コユキは一瞬顔に驚きを浮かべた後、表情を神妙な物に変えて呟くのであった。

    「身罷みまかったのね…… アンタの事は決して忘れないわ、満腹ソルジャー、あれ腹ペコウォーリアー? 何だっけ? ま、いっか」

     既に覚えていなかった様だ、くぅ残念至極! ※満腹ウォーリアーは死んではいません。

     さっさと気分を切り替えたコユキは電車で金谷に戻ると、贅肉を揺らした『回避の舞アヴォイダンス』を使って高速移動で善悪和尚が待つ幸福寺へと帰り着いたのであった。

    「ただいまぁ~」

     シュバッ!

     迎えに出た善悪も残像を残す程の速度であった。

    「おかえりでござる! んで、どうだったでござるか?」

     コユキはピースサイン、いいやヴィクトリーサインと言った方がこの場合しっくりくるな、人差し指と中指を立てて答える。

    「勿論勝ったわよん! 九十八杯で念願の百杯には届かなくて残念だったけどね、人間相手には楽勝だったわん! 誰の挑戦でも受けるっ!」

     顎を突き出して宣言するコユキに善悪が多少イラつきながら質問を重ねた。

    「んな事どうでも良いのでござるよ! お見合い相手と一緒だったのでござろっ! 断られてきた? 気持ち悪いんだよデブ、とか言って貰えた? どうなの? それともウッカリ殺した? ねえ、ねえ、殺してくれた?」

     相変わらず物騒な発言だな…… これでも僧侶なんだけどな……

     コユキも同感だった様で、極道坊主に答えている。

    「殺す訳無いでしょ、馬鹿ね~、んでも善悪の想像通り、別離わかれて来ちゃった…… ってとこね」

     何故だろうか、有りもしない肩口の髪を翻す様にしながら科しなを作るコユキ、いい女ぶっているのだろうが中々に気持ち悪い。

     だというのに善悪と言えば、パアッと表情を明るい物に変えて言うのであった。

    「おお、それは良かったでござるな! この経験を活かして今後はお見合いとか受けない方が良いのでござるよ? わかったぁ? コユキ殿ぉ!」

     コユキは首を傾げながら答える。

    「まあねー、んでもお見合いも結構いろんな勉強になったりするのよね…… 今回も善悪の良い所って言うか、アタシとの相性の良さだったり頼もしい人なんだなって改めて考えちゃったりしたしねー」

    「えっ? ぼ、僕チンとの相性、なの?」

     善悪の顔が真っ赤に染め上げられてしまっていたが、コユキは気が付かないで続けた。

    「うん、そうね! やっぱり、アタシの相方は善悪しかいないわねん、これからも頼んだわよ、善悪!」

    「あ、ああ、相方でござるか…… なんだ……」

     染め上げられた顔色が、漂白した様に元に戻って行った。

     コユキは善悪に大食い大会の賞金が入った封筒を渡しながら、悪そうな笑顔を浮かべて言う。

    「はいこれ賞金だってさ、二十七万入っているわよ、ところでこっちは今日どうだったのよ? 儲かったんでしょうね?」

     善悪は封筒を受け取ると法衣の袂たもとにしまいながら答えた。

    「ふふふふ、当然でござろ? 今日もいつもに負けず大盛況、ガッポガッポだったのでござるよ、ふふふふ」

    「良かったじゃないのぉ! これで安心して腹いっぱい食べられるって物ねん、なははは」

     ラーメン九十八杯は? まあ、コユキだし仕方ないか……

     しかし妙である。

     前回の観察、一年前にはコロナ禍のあおりを受けた幸福寺は経済破綻寸前だった筈だが、なにやら景気が良さそうである。

     これは観察対象を善悪に移して日中の様子を覗ってみるしかないな。

     どれどれ?

    ***********************
    拙作をお読みいただきありがとうございました!

    画像


    この記事が参加している募集

    あなたへのおすすめ