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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

    あらすじ・目次 


    第三部 六章

    リベルタドーレス ~解放者たち~

    1312.旅立ちの豚猪


     一匹だけになった私は急激な成長を果たす事ができた。
     住処の周辺である我々の縄張り内にある、食べ物と言う食べ物は、私、独りの物になったからである。

     産まれてから大体百年位過ぎた頃、私は旅立つ事を決めた。
     目的は勿論、豚猪として立派な魔術師の相棒、獣奴じゅうどになる為である。

     このタイミングで決意したのには別の理由もあった。
     住処の周りに食べ物が無くなった、枯渇してしまったからだ。
     私に根の奥まで掘り返された植生はいつしか死に絶え、荒野と化した縄張りにはモンスター所か虫一匹近付かなくなったのだ。

     このままでは大きく育った巨体を維持できない!
     そんな止むに止まれぬ理由もあったのである。

     私は別れを告げる為に戻った洞穴を見て驚いたものだ。
     数十年帰っていない間に洞窟はスッカリ小さくなっていた、いや、私がそれだけ大きくなっていたのだ。
     身を屈める様に入った巣穴の中で、私は再び驚愕する事となった。
     そこには痩せ衰えた母と数匹の乳母が息も絶え絶えになって横たわる姿があったからである。

     私は心の動揺を押さえ込みながら努めて冷静な口調で告げた。

    『母上、私は王族の務めを果たすために旅立ちます、一猪前いっちょまえの獣奴になるまで帰らぬ覚悟です』

    老いた母は気弱になっていたのか、思いもしなかった言葉を口にした。

    『おぉ、お前はテトラ? 四番目の子だったね…… お願いだよ、どうか行かないでおくれ』

     確かに私は兄弟で四番目、母や兄弟からはそのまんまテトラ四と呼ばれていたがそんなことはどうでも良い。
     元気な頃にはあれ程に凛として気高かった母が私を止めたのだ。
     王族の誇りや、ニンゲンと共にある事の意義も、何も放り投げて一緒にいる事を望んでいる。

     私はそんな母の姿を見たくは無かった。
     だからこそ、母の言葉を無視して旅立つ事に決めたのである。
     多少、小児病的な行動だったかもしれないが、留めようとする母に対して背中を向けてしまったのだ。

    『子供の頃から母上が言って聞かせた事ではないですか! 何と言われようと私はもう、決めたのですっ!』

     母はまだ何か言って止めようとしていた様だが私は最後まで聞かなかった。

    『どうしても行くと言うのなら、せめて何か食べる物を――――』

    『さらばですっ!』

    『あぁっ、何かぁ、たべ―― あれえぇーっ!』

    『『『ブヒィッ!』』』

     ガラガラガラガラ―――― グシャーンッ! ズズズウゥンッ!

     それ以来、母とは会っていない。

     立ち去る時に少し焦ってしまい、体を岩壁にしこたま打ち付けてしまったが、幸い大きな怪我は無かった。
     後ろから母や乳母達の声が聞こえていたが、丁度その時にどこかで崖崩れでも起きたのだろう、大きな崩落音に遮られてしまったようだった。
     これも運命だと思った。

     こうして後ろ髪、いいや尻尾を引かれる事も無くなった私は独り、まだ見ぬ世界へと旅立ったのである。



    お読みいただきありがとうございます。
    感謝! 感激! 感動! です('v')
    まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
    皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
    これからもよろしくお願い致します。
    拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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