メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

    あらすじ・目次 


    第三部 六章

    リベルタドーレス ~解放者たち~

    1223.情緒


     瞬時に展開した回復の光がレイブの体を包み込み、虚脱していた全身に生気が漲みなぎり、青黒かった顔色にも赤みが差す。
     本能的とでも表現すれば良いのか、幼少期からの鍛錬の賜物だろう、力を取り戻した直後だと言うのに、レイブは跳ね起きると同時に巨大なタロースに向かって構えを取り、そして口を開く。

    「ロコロラレララリララリラ、ランロルロリラ」

     呂律が回っていない、だけでなく、その表情も普段とは違いエヘラエヘラとした軽薄で下卑た物と変じ、足元も覚束ないのかふらふらとさせたままである。
     口元から滴った涎よだれが地面に垂れ落ちると同時にレイブは声を上げて笑う。

    「けけけけ、エヒャラエヒャラ♪ けけけけー!」

     これはアレだ。
     ここまでの流れから類推するに、酸欠に因る酩酊めいてい状態、所謂いわゆるラリっているのだと思われる。
     ペトラが施した『回復』の効果で肉体的な治療は済んでいる筈だが、既に脳内に生じた全能感には抗えない、そう言う事だろう。

     相変わらずへらへらしながらのレイブは、ギレスラの手を借りてペトラの背に跨ると、二、三度意味不明の雄叫びを上げた後、背にもたれる様に突っ伏して、一転しくしくと涙を流し始めるのであった。
     傍目には大変楽しそうに見える状態だが、酸欠を伴うガスや揮発性の液体を吸引する事は非常に危険な行為だ。
     時には社会生活に致命的な後遺症状を引き起こす事もあるのだ。

     本観察をご覧になっている諸兄には肝に銘じて細心の注意をお願いしたい。
     特にDIY的に塗装なんかを楽しむ場合には、こまめな換気と適度な休憩を取る事を声を大にしてお願いしたい。

    『おい…… 本当にこの若者がコイン所持者、なのか?』

    『ギギギギ』

     呆然と発せられたタロースの声に、答えるテューポーンは何故かいつも以上に胸を張り反らしている。

    『そ、そうか…… まあ、誰が相手であってもこちらのする事は変わらんが…… 生き返ったのならば石化するまでも無いしな…… ゴホンッ、えー、いずれ、我が姫かその若者か、はたまたルキフェル若もしくはバアルの後裔こうえいか、誰かが勝ち残り魔界への扉を潜くぐるのだろう…… その時再び会い見える事になる! その折は古き契約通り、このタロース自らが修行をつける事を約束しよう! 今は去れ『百頭の魔』テューポーンよ! えと、お大事に、な?』

    『ギギギ』

    『お! 出て行って良いんだな? 良し、ペトラ行くぞ』

    『あ、えっと、お邪魔しました』

    「おあーっ! あっあっあっあっ、エヒャラエヒャラー♪」

    『ほらレイブ、良いから少し眠ってろよ』

    『うん、うるさいから寝ててね』

    『ギ? ギギギ?』

     ペトラの背に揺られながら泣き笑いを繰り返しているレイブの背を擦り続けるギレスラと、その頭上で後ろ向きになりながらこちらに手を振っているテューポーン。
     東に向けてしずしずと遠ざかる一行を見送る赤い金属の巨人、タロースの無表情な顔には、どこか憐れみに似た色が浮かんでいる様に見えたのである。



    お読みいただきありがとうございます。
    感謝! 感激! 感動! です('v')
    まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
    皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
    これからもよろしくお願い致します。
    拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

    Copyright(C)2019-KEY-STU


    この記事が参加している募集

    あなたへのおすすめ