メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

    あらすじ・目次 


    第三部 六章

    リベルタドーレス ~解放者たち~

    1154.今際の際


     その後、グフトマが語って聞かせてくれた話には、レイブが馬鹿みたいにポカンと口を開けたままで聞き入るに値するだろう神秘に溢れていたのである。

     この時より遡る事十数年前、まだレイブがバストロに師事する数年前、グフトマは病によってその長き人生の幕を閉じたそうだ。
     普段から風邪一つ引かなかった頑強さが嘘だったかの様に、急激な衰えは抗う事を許さずに彼の全てを奪って行ったらしい。

     若もしかしたら、気が付かない位の希釈具合でラタトスクの糞でも盛られていたのか? そう疑いかけたグフトマの想像は、子供の様にうろたえるバストロの酷い泣き顔を見てスッカリ消え去ったと言う。

     体調が悪化の一途を辿る中、先年独り立ちした西の魔術師、フランチェスカが獣奴じゅうどザンザスと闘竜とうりゅうガイランゲルを引き連れて駆けつけてきた日、夜半に命の灯火が切れた、そう語ったグフトマの双眸そうぼうは涙を湛えていた。

     寂しさ? 悲しさ? 無念? 心残り? どこか痛むのか?
     そのどれとも違って見えた涙の訳を、あっさり聞いちゃうレイブ、無神経極まれり……

    「太師匠、何で泣くんです?」

    「ん? ああ、これか」

     同年代に見え本人が否定してはいても、やはりどこかにお爺ちゃん属性を秘めていたのか、人の心が欠落している孫弟子に丁寧な説明をしてくれる。

    「息を引き取った私の体に縋り付いて二人は嘆き続けたんだ…… 急激にやせ衰えて見る影も無く貧弱になった私の胸に顔を埋めてな…… そこまでは良かったんだ」

    「良いんですか? 老いさらばえていたのに、ですか?」

    「ああ、良かったんだ」

    「へー」

     人の心……

     グフトマの言葉は淀みなく続いた。
     一頻ひとしきり泣き続け、焦燥して顔を上げたバストロに対して、フランチェスカはいつまでも涙を止める事が出来ないでいたらしい。
     実体を失って、自身の遺骸の上をプカプカ浮いていただけのグフトマは、慰める術もなくオロオロと見つめるだけであったと言う。
     
     その内、バストロがフランチェスカの横に寄り添うように並んで彼女の肩を抱いた。
     見ていたグフトマには、自分の弟子たちの中で初めて夫婦の契りを結んだ二人が、本当の子供達のように映って見え、どこか安心した気分であったそうだ。

     グフトマ自身、妻帯はおろか、弟子以外とは距離を取り続けた人生であった事も、思いを強めさせた要因だったのだろう。
     事実、その後バストロに師事したレイブは否定されながらもグフトマをお爺ちゃんと呼び、今後会う事があるとすればラマスは彼をひい爺ちゃんと呼ぶ可能性は高いのだ。

     レイブは得心がいった、そんな顔つきで言う。

    「なるほど、じゃあその涙は感動、的なヤツですね」

    「いいや、そうではない」

     違ったらしい……

    「んん? じゃあ何です? あれですか、二度と戻る事が出来ない時間や過去に対する懐古的な? ノスタルジックな気分的で何と無く自分に酔っちまったよみたいな? あれとかですか?」

    人の心……

    「……おっぱじめたんだよ」

    「えっ……」



    お読みいただきありがとうございます。
    感謝! 感激! 感動! です('v')
    まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
    皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
    これからもよろしくお願い致します。
    拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

    Copyright(C)2019-KEY-STU

    この記事が参加している募集

    あなたへのおすすめ