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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

    あらすじ・目次 


    第三部 六章

    リベルタドーレス ~解放者たち~

    1602.隷属の口づけ


     面白いか面白くないかは兎も角、話が伝わっていないと感じたガトの雰囲気が変わった、いと剣呑な感じにである。

    「クソがっ! グェっ!」

     あっ、よりによって最悪のタイミングで持って来やがった。
     悪態をついた瞬間、ガトはドルドナの細い首を鷲掴みにして軽々と持ち上げながら凄む。

    「誰に口きいてんのよ! 生まれて来た事を後悔したいみたいねアンタ!」

     周囲にガトのオーラ、サタナキア由来の黄金色の魔力が息苦しさを伴って充満する中、ドルドナは手足をばたつかせながら必死の弁明を試みる、もう必死だ。

    「ち、違! よしこ! よしこっ!」

    「誰がよしこよっ! 魔神を虚仮コケにしたのよアンタ、地獄で己の愚かさを噛み締めるが良いわっ!」

    「が、ガンバレ、ルー、や、の……」

    「アンタに言われ無くても頑張ってるわよ! もう良いわ! くたばりなさい!」

     ボンキュッボンとは言えこちらも細身、だが実は巨人でおっさん風味のいかつさも隠し持つガトの膂力りょりょくには逆らえず、早くも諦めた感じのドルドナは胸で手を組み目を瞑っている。
     頬には一筋の涙が流れて落ち…… る瞬間左右からガトに組み付いたのはカーミラと巨大ネズミ、いやリーエの両者であった。

    「無礼な下郎めが! それ程死に急ぎたいの? 良いわ、それが望みだと言うのなら三人まとめてぐっちゃぐちゃのミンチにしてあげ…… むむむ?」

     当然仲間を助ける為に捨て身の攻撃を仕掛けてきた、そうとばかり思って、如何にも魔神様っぽいセリフ回しで返していたガトの言葉が中途で切れる。
     理由は左右から飛び掛ってきた吸血鬼達の行動が思いもしない物だったからだ。

     カーミラとリーエは、ガトの腰辺りに抱きついた後、即座に一歩下がって平伏し、更には伏せた姿勢のままで顔を前方に伸ばすと、旅路で汚れたガトのサンダル履きの足の甲に、うやうやしく口づけをしたのである。

    「え、ちょ、何」

     意味不明な行動にガトは狼狽を丸出しにし、はずみで緩んだ手から痩せっぽちの黒髪少女がスルリと地面に落下する。
     そのままストンと座り込んだドルドナは祈りよろしく胸の前で組んだ手をそのままにガトを仰ぎ見ているのだ。

    「な、何よ、アンタ達……」

    「お懐かしゅうございます、我が君」

    と、右足からカーミラ。

    「え?」

    「この日をどれ程待ち焦がれた事か、一日千チュー、いえ、千秋の思いでございました、うっうっうっ」

    と、左のリーエネズミは涙ぐんでいる。

    「は?」

     中央で祈りを捧げるドルドナも続く。

    「愚昧なるやつがれをお目こぼし頂き、その滋恩のお心、只々拝謝するばかりです、更に今生の眩くも麗しきお姿、正に傾城傾国、沈魚落雁、我が君のお戻りに加え、我等一同快哉かいさいの極みでございます」

     なんと普通に、いやそれ以上に話している、これまではキャラ付けだったのだろう、きっとそうに違いない、やるな。

     ガトはまだ事情が把握し切れていないのか、戸惑った感じ丸出しで尋ねる。

    「えっと…… アタシ?」

     信徒か眷属か、キラキラした瞳を揃えたヴァンプ娘達は声もピタリと合わせて答える。

    「「「はい、我が君! バアル様!」」」

    「あー…………」

     なんだ、どうやら人違いだったみたいである。



    お読みいただきありがとうございます。
    感謝! 感激! 感動! です('v')
    まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
    皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
    これからもよろしくお願い致します。
    拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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