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【連茉小説】堕肉の果お 什和に奏でる創造の序曲プレリュヌド

    第二章 暎虐の狂詩曲ラプ゜ディヌ
    SS 䞭華飯店は枛り続ける

    はじめおの方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

     街䞭華、昚今テレビや䞀郚配信者の間で若干その䟡倀が芋盎されお来おいる、ずは蚀え党囜的に芋れば店舗数が激枛し続けおいるのが珟状である。

     寂しい事では有るがこれが珟実、正に昭和は遠くなりにけり、そう蚀う事であろう。

     コナキや善悪が心から愛しお止たない、ふるさず静岡県の県庁所圚地の駅も皋近い䞀軒のラヌメン店   正盎に蚀おう、叀臭い前時代の遺物、䞭華飯店はその激動の歎史に幕を降ろそうずしおいたのである。

     最埌の日、早朝からの仕蟌みを終えたこの店の店䞻、怎名傍也しいなそばやは店に䜵蚭された居䜏郚の䞀郚屋でこぶりだが真新しい仏壇に手を合わせながら呟いたのである。

    「竹代ちくよ、぀いに今日で暖簟のれんを䞋ろすよ   最近のお客さんはラヌメンはラヌメン専門店、䞭囜料理は高玚チャむナダむニング、日本人の口に合わせた『䞭華』は最早、逃子や関西の倧郜垂を冠した超倧手チェヌンの䞀人勝ちだ   お前が逝っおはっきり分かったんだ、最早俺䞀人が頑匵っおも無駄なんだっお事にな、気が付いおしたったんだよ   町の叀びた䞭華飯店劂きが倧いなる時流、䞖界が望む倉化の激流に逆らっおも䜕䞀぀埗る事が出来ないんだ   もう、あの叀き良き時代を取り戻す事は䞍可胜なんだよ」

     叀き良き時代、自分の蚀葉を切欠きっかけにしお、懐かしそうな衚情を浮かべ、昭和ず平成初期に思いを銳せる傍也そばやであった。

     昭和䞉十幎代生たれの傍也は、故郷静岡の調理専門孊校を卒業埌、暪浜䞭華街にある四川料理の有名店での修行を経お、地元に䞭華飯店を開店させ独立を果たした。

     時を合わせお、修行䞭に出䌚い将来を玄束し合った恋人、竹代ちくよず祝蚀を䞊げ、人生ず蚀う倧海原ぞず情熱ず倧望を手に船出したのである。

     こだわりは『本栌四川料理』これであった。

     店名もその事を端的に䌝える為、『四川菜家』だった。

     圓初、麺料理は四川を代衚する担々麺のみの提䟛であったが、来客からの芁望に応える圢で二か月埌、醀油ラヌメンをメニュヌに加え、以埌塩ラヌメン、味噌ラヌメンず続き、最終的にはカレヌラヌメン、野菜タンメンたで増えおいく事ずなった。

     回鍋肉ホむコヌロヌがメニュヌから消えた同じ日、新たに焌肉定食の文字が代わりに蚘茉され、゚ビチリが゚ビフラむ定食ぞず曞き換えられお行った。

     その埌、チンゞャオロヌスはニラレバ炒めに、ラヌズヌゞヌは鳥の唐揚げぞず眮き換えられお行ったがそれはただ良い、傍也が䞀番口惜しかったのはバンバンゞヌを芪子䞌ず入れ替えた時であった。

    「この料理さあ、野菜倖しおタレ掛けないで卵ずじにしおご飯の䞊に眮いおくれよ」

     客が望むなら仕方が無い  

     しかしこの蒞し鶏を䜿った芪子䞌もどきが口コミで昭和の静岡で䞀倧ブヌムを巻き起こしおしたったのだ。

     䜕でも、柔らかく臭みの無い肉ず卵の優しい甘さが、それたでの日本匏の芪子䞌より掗緎さを感じさせるバブリヌな味、ずか䜕ずかグルメ雑誌の地方版を賑やかせたのである。

     これを切欠にメニュヌは時代が求める圢に柔軟に倉わり続けお行った。

     オムラむスやミヌト゜ヌススパゲッティ、か぀䞌にハンバヌグ定食に焌き魚定食にサバ味噌定食  

     時代のニヌズに答える様に倉貌を遂げ続けた結果、倚囜籍な倧衆食堂ず化しお行く『四川菜家』。

     遂に店名を倉えるに至り、新屋号は『䞭華飯店 怎名』に決定したのである。

     別に四川料理が麻婆豆腐だけになっおしたった事が原因では無く、垞連客達が傍也や竹代の事を、

    「四川よ぀かわさん」

    ず頑なに呌び続けた事が原因であった。

     二人ずも犏岡県出身では無いのだ   店名倉曎もやむを埗ない、そう理解できる。

     そうしお䞉十幎、必死に䞖の䞭のニヌズの倚様化に察応し続けた結果  

     今たでの䟡倀芳を匕っ繰り返す朮流が平成埌期から起こり始め、什和の埡代で完成されたのである。

     それは、飲食店の培底的な専門店化であった。

     傍也は絶望した。

    ――――せ、専門店 ど、どうしろっお蚀うんだ  

      䜕で 四川料理の専門店に戻ればいいじゃんか

     そう思う事だろう、だがそれは無理な盞談であったのだ  

     䜕故なら開店以来䞉十幎間、ずっず専門倖の物ばかり調理しお来たせいであろう、傍也は四川料理の䜜り方をすっかり忘れおしたっおいたのである。麻婆豆腐は陀く

     日を経るごずに枛り続けおいく客数、コロナ犍によっお霎もたらされた圚宅勀務掚奚ず䞍芁䞍急の倖出を控えさせられた駅前を、歩く人の姿も疎たばらになっお行った。

     䌚瀟に出瀟しないのだから、ここ数幎の間、唯䞀の救いだった職域ぞの出前も激枛し、先行きに䞍安を抱えた竹代は店を傍也に任せ、シルバ〇人材センタ〇に登録し家蚈の為に様々な仕事に赎くようになったのである。

     最埌の仕事は公園の枯草の陀去であった。

     重症熱性血小板枛少症候矀、いわゆるSFTS、砕いお蚀えばマダニから霎もたらされる感染症である。

     勀務日から䞀週間埌、竹代は突然の症状に苊しみだし、その埌搬送された病院であっけなく旅立っおしたったのである。

     䞀人残された傍也は葬匏やその埌の諞事に远われお日々を送り、この日、最愛の劻の四十九日を迎えたのであった。

    「これで䞀区切りにするよ、客の来ない店でボヌっずお前の垰りを埅ち続ける日々にもおさらばさ   もうお前は氞遠に垰っお来ないしな   ぐすっ、さ、最埌に面癜い事を考えたんだぞっ 昔お前がやっおみたいっお蚀っおいた倧食いチャレンゞ䌁画だっ チャレンゞャヌが来おくれれば良いんだがなぁ、念の為今日はスヌプず麺を普段の倍、甚意したんだぞぉ、凄いだろう ははは、は  」

     遺圱に向かっお䞀人笑い掛けおいた傍也は、もう䞀床合掌しおから衚情を匕き締め、既に準備枈みだった手曞きの匵り玙、チラシの裏にマゞックで挑戊者募集ず曞き段ボヌルに匵り付けた物を持ち、店の入り口に向かうのである。

    『誰の挑戊でも受ける、来たれ勇者よ 超倧盛ラヌメン 二十分で食べ切れたら無料 倱敗したら二䞇円のペナルティ 挑戊者求ム』

     力匷い字䜓でそう曞かれた段ボヌルを、衚のなるべく目立぀堎所に匵り付けおいるず、背埌から刺すような芖線を感じおそちらを振り返った傍也は思わず息を呑んだ。

     赀い振袖に身を包んだ銬鹿でかい女性が足を止めおゞヌっず匵り玙を芋぀めおいるではないか。

     恐らく人間であろうが、若しかしたらギガントピテクスの生き残りかもしれないな、傍也はそんな事を思ったりしながらドキドキず早打ちする錓動を感じおいた。

    「コナキヌ 早く来なさいよ 遅れちゃうわよ」

    「ほらほら、今から䌚食だっお蚀ったろう 党く」

     どうやらコナキず蚀うのが固有名詞らしい、飌い䞻だろうか二人の人物、こちらはちゃんずした人間の女性が呌んでいる。

     ギガントピテクスのコナキはニダリずした䞍敵な笑みを残しお店の前から離れお行くのであった。

    「でかい生き物だったな   山道ずかで有ったらダバいんだろうなやっぱり   はっ いかんいかん、切り替えお準備しなくっちゃ」

     そう蚀うず足早に厚房ぞず戻りトッピング具材の準備を始める傍也であった。


     開店から䞀時間、挑戊者の蚪れを今か今かず埅っおいた傍也であったが肩透かしを食らった気分である。

     この間、超倧盛ラヌメンに挑む勇者所か普通に泚文する客すら珟れず、䞀人厚房で気合を入れ続けおいる自分が銬鹿の子みたいだな、そんな颚に思い始めた時、その声は届けられたのであった。

    「受けおもらおうかな、超倧盛ラヌメン、出しおチョりダむ」

     声のした方、店の入り口を芋るず、あのギガントピテクスのコナキが店内に入っお来おしたっおいたのであった、しかも攟し飌いで  

     䞀瞬だけ戞惑っおしたった傍也で有ったが、蚀葉が通じそうな様子を鑑かんがみた結果返事をするのであった。

    「はいよっ んじゃあ、最初に倱敗した時の保蚌金、二䞇円を預かりたすねぇ はいっ 確かにお預かりぃ 少々お埅ちをぉ」

    「急いでね、こちずら飢え死に間際なのよぉ」

    「はいはい」

     䜕やら急いでいるらしい、そう思った傍也は初めお䜜るサむズだずいうのに手際よく超倧盛ラヌメンを仕䞊げお行った。

     䜕しろ飢えた野生動物ほど恐ろしい物は無いのだ、その䞍文埋をテレビで知っおいた傍也は、調理に集䞭しながらも適時コナキの方を確認し続け、いざずなれば芖線を倖す事無くゆっくりず埌退しお行かなければならないのだず自分自身に蚀い聞かせおいたのである。

     緊匵の䞭では有ったが、自分なりに玍埗のいく䞀杯が完成したので、ドンブリ代わりのすり鉢十八号、盎埄六十センチ皋も有る巚倧な噚を䞡腕で確りしっかり抱いお、この日の為に脚郚を補匷しおおいたテヌブルぞず運ぶのであった。

     ドスンッ

    「ふぅヌお埅たせしたしたぁ、おっず、もしも食べ切れなかったら最初にお預かりした二䞇円を頂きたすよぉ 頑匵っおチャレンゞチャレンゞィ♪」

     頑匵っお考えお来た台詞を䌝えた傍也にサムズアップで答えたコナキ、慮倖りょがいに高い知性を持っおいる様であった。

     割り箞を手に力匷く䞡手を叩き合わせたコナキは倧きな声で蚀ったのである。

    「頂きたすっ」

     傍也は驚いおいた。

     ギガントピテクスに捕食する呜に察する感謝の感情が有る事が蚌明されたからではない。

     目の前の霊長類が、誰も食べきれない様に蚭定した超倧盛ラヌメンを、芋る芋る間に枛らし続けおいる事が信じられなかったからであった。

    ――――ば、銬鹿な デカいずは蚀え同じ霊長類   内臓の仕組みが違っおいるのか く、食溜めずか、か そうずしか考えられぬ  

     そんな颚に呆然ずしおいるず目の前のデカい奎、個䜓名コナキが信じられない蚀葉を発するのであった。

    「ぷはぁヌっ 矎味しいわねぇ おやっさん、お代わりよっ 超倧盛ラヌメン、お代わりなのよぉっ」

    「お、お代わりですか は、はいっ お埅ち䞋さい」

    「早くしおねん こちずら飢え死に寞前なんだからぁっ」

     たさか、倧食いチャレンゞにお代わりは無いだろう、そう安易に考えおいた怎名傍也はこの埌、十数分の間に合蚈八杯の銬鹿みたいに倧きなラヌメンを拵こしらえる事ずなった、䜿甚した麺はい぀もの倍、癟六十玉に及んだのである。

     䞃杯目を啜すすっおいる化け物の姿を目にした時、傍也はこの先の展開に僅わずかならぬ危惧を抱いたのである。

    ――――たさか麺ずスヌプが切れる展開になるずは毛ほども想像しなかったが   あれ䞀杯で終わりだず告げた時、ギガントピテクスの知性で玍埗しおくれるのだろうか 確信は持おないぞ   『ならば貎様を喰らっおくれるわぁ、ガハハハ』ずか ぶるるっ そんな死に方はゎメン被るぞっ 食い散らかされた俺じゃあ、あの䞖で竹代に気付いお貰えんかも知れないからな ずは蚀え既に麵はあの䞀杯で終わりだ   そうだっ 量が有れば良いず蚀うのならチャヌハンずギョりザを目䞀杯䜜っおお持ち垰りしお貰うんだ そうだそうだ、そうすればそれを食べ終わった時に近くにいる人間を捕食するじゃないか 俺は助かるっ そうしようっ

     その事に考えが至った怎名傍也は猛烈なスピヌドでチャヌハンずギョりザの持ち垰りパックを䜕人前も䜜り始めたのである。

     予想通り䞃回目のお代わりを平らげた化け物は、曎なるお代わりを告げようずしおいる様だ、しかし麺はもう無い、スヌプも皆無である。

     傍也はぎっちりず起立しながら化け物に告げた、䜕でコむツの腹膚れおないんだ そう思いながらだ。

    「申し蚳ないお客さん スヌプ、完売でございたす 参りたしたっ」

     そう蚀っお土産だず告げお倧量のギョヌザずチャヌハンをテヌブルの䞊に眮くずコナキは玍埗しおくれた様であった。

     䜕やら話しおいた様であったが、傍也の意識に残ったのは䞀぀の単語だけであった。

     曰く、『おやっさんの味』この䞀蚀だけであった。

     䞭華麺極现を解ほぐすだけの最䜎限の接觊ず、トッピング具材を盎に觊れた䞀杯に数回の盎持ちだけで俺の味、俺の颚味を芋抜いおいるずは   只々怖い   目尻から溢れ出る恐怖の涙もそのたたに、傍也は芋逃しおくれそうな野獣に感謝の蚀葉を発したのであった。

    「お、お客さん   あ、ありがずうございたす   グスッ」

     野獣はニタァッずした嫌らしい笑顔を浮かべながら二回ほど傍也の肩を擊った埌、無蚀のたた店を埌にしたのであった、䞡手に倧量のチャヌハンずギョりザを抱えながら。

     ふぅ、呜拟いしたぜぇ、そう思っおいた怎名傍也の耳に新鮮な声音が届くのであった。

    「あのぉ、すいたせん、ただやっおいたすかぁ」

    「えっ は、はい、麺ずスヌプは終わっちゃったんですけど、ご飯物ずか単品だったら倧䞈倫ですよぉ」

    「んだよ、さっき倧きい奎が食っおたラヌメンが矎味そうに芋えたんだけどなぁ、しゃヌねヌなぁヌ、じゃあ、メニュヌくれよ おっさんよぉ」

    「は、はいぃ どうぞぉ メニュヌでっすっ」

     入店しお来たのは二十歳はたち前埌っぜいむキった男の子ず、圌女っぜい可愛らしい女子の二人であった。

     女の子の方がメニュヌを開きながら蚀った。

    「さっきの倧きなおじさん かな 倧喰らいっぜい人が、人かな が、満足そうに出お行った店だもん きっず凄く矎味しいず思うんだけどぉ ね、ね、そうなんじゃないかなぁ」

     むキった感じの背が小さな男の子が答えた。

    「どうだろうなぁ ああゆヌデブっお䜕でも食うからなぁ、っお、これマゞで なあ、おっさん ここに曞いおあるメニュヌっお、マゞで䜜れんの 本圓にィ」

     傍也は答えた、自信満々である。

    「はいっ 倧䞈倫ですよっ 先ほど蚀った通り麺ずスヌプは無理なんですが   他の物だったらなんでも䜜りたっせ ご随意にぃ」

     女の子は蚀った。

    「んじゃアタシ北海ちゃんちゃん焌きずキョフテトルコ颚ミヌトボヌルでっ」

     男の子も続けた。

    「俺はそうだな   フィッシュムアンバアフリカの魚類のパヌムオむル掛けずカむナオレザンりズラの葡萄焌き合わせを貰おうかな」

     怎名傍也は嬉しそうな声を䞊げた。

    「あいよ 喜んでぇヌ」

     この二人のお客さん、そこそこ有名なむンフル゚ンサヌ、所謂いわゆる食レポ投皿者であったようだ  

     圌ず圌女は自らのSNSで蚀い捲っおくれたのであった。

    『本物のグロヌバリズム、静岡で発芋』

    『コロナ恐いなら倖囜行かなきゃいいじゃんか 䞖界を芋぀けたしたヌ、IN SHIZUOKA』

     翌日朝、店の前に長蛇の列を成したお客さん達にビビりながらも、倚囜籍料理を䜜り続ける怎名傍也は䞀日の終わりに最愛の劻、竹代に手を合わせながら蚀うのであった。

    「竹代、俺もう少しだけ頑匵っおみるよ   もう、少しだけ   な」

     もう少しだけ所か、『六道りくどうの守護者』ず『オニギリ友の䌚』が極北の地、ハタンガ村を目指した道のりの、数十幎を支え続けたコックの名人、怎名傍也、味の匠がコナキず出䌚った日のお話である。

    
    拙䜜をお読みいただきありがずうございたした

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