
お題で書きはじめるnote企画|「月を見る」 #はじめてのnote
月を見る。それも真昼の青空にぽっかりと浮かぶ、か細い三日月を。

「ねえ、散歩くん。あそこ見て、お昼なのに月がいるよ!」
会社近くの中野もみじ山公園の木漏れ日の下、ハルカは目を丸くして彼氏の袖を引っ張った。
まだ婚約指輪が薬指でこっそり光っている。
今日は会社の昼休みを使った、わずか三十分の小さなデートだ。
散歩は持っていたコンビニのサンドイッチを呑気に一口かじり、空を見上げて首をかしげた。
「おや、ほんとだ。サボりすぎた地球が夜と間違えて置き忘れちゃったのかな?」
「もう、真面目に仕事してよ。極楽蜻蛉なんだから、この人は」
呆れつつも、ハルカの頬は緩みっぱなしだ。お茶目で可愛らしい彼女の笑い声に、散歩はふんわりと優しい目を細める。
青々としたもみじの葉が風に揺れ、まだ色づいていない緑の葉の隙間から、太陽の光と昼の月が仲良くこぼれ落ちてくる。
「ねえ、夜になったら、ちゃんともっと綺麗な月を二人で見に行こうね」
ハルカがそう言うと、散歩は「もちろん、月までお散歩しちゃう?」とおどけてみせた。
短い昼休み。でも、世界で一番贅沢な時間だった。
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