メインコンテンツへスキップ
見出し画像

真意_10【シロクマ文芸部】【lpz.89】

    ( 前 話 / 登場人物と目次 )


    シャボン玉のような綿雪が舞うように降っていた。凌太は車窓から見えるベルリン郊外の田園風景を眺めながら、これまでのことを思い出していた。

    恋人の希実が、凌太の勤務先で起きたサイバー攻撃の実行犯としてスケープゴートにされて、『lpz.89』という謎のメモを残して失踪してしまった。

    学生時代からの親友であるエリカを頼ってベルリンを訪れ、『lpz.89』がライプツィヒにある極秘研究施設を示すことを突き止めたのだった。

    前回まで


    凌太とエリカは、ベルリン中央駅からICE(都市間特急列車)に乗り込み、ライプツィヒへと向かっていた。 車窓を流れる旧東ドイツの平坦な風景とは裏腹に、凌太の胸は熱い決意に満ちていた。

    エリカが調査した結果、1989年当時、ライプツィヒには『国家科学アカデミー』の研究施設が複数あることがわかった。その中の一つに、軍事的な暗号技術を秘密裏に開発していたと噂される施設があり、一枚の古びた航空写真が残っていた。それは、ライプツィヒの郊外、広大な森に囲まれた場所にポツンと立つ、無機質な建物群だった。

    「これが『 lpz.89 』つまり、1989年に閉鎖されたライプツィヒの研究施設。旧東ドイツの技術者が超高速暗号解読技術『レプロ』を開発していた場所で、ギド・エンゲルスが最後に姿を消した場所だと推測するわ」

    エリカは、その施設が地元では『コールド・コード・ラボ(Kalt Code Labor)』と呼ばれていたという資料も見つけていた。

    「エリカ。ここへ行けば、きっとギド・エンゲルスの手がかりとマスターキーコードのありかを示す何かが見つかるはずだよ。でも、ペトロフ・コネクションが、僕たちの行動に気づくかもしれないね…」
    「その通りよ。だからこそ、私たちを脅した。でも、彼らは私たちがライプツィヒに向かっていることを知っていても、正確な場所まではわからないはずよ。急がないと」

    列車はライプツィヒ中央駅に到着した。巨大で歴史を感じさせる駅舎は、かつての東ドイツの威厳を今に伝えていた。凌太はエリカが借りてきたレンタカーに乗り込んだ。

    目的地は、森の奥に隠された、旧東ドイツの闇そのもの。凌太は、希実がこの場所で、一人でどれほどの恐怖と戦っているのかを思い、決意を新たにした。

    「希実、必ず見つけだしてやる」

    エリカが運転するレンタカーは、ライプツィヒの歴史的な街並みを抜け、郊外へと加速していった。

    ライプツィヒ中央駅の人混みの中では、黒いコートを着た男が、一人静かにスマートフォンを操作していた。

    (つづく)



    (ひとつ前の話はこちらをクリック)

    ショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。

    (【登場人物と目次】はこちらをクリック)

    小牧幸助さんの企画に参加しています。
    毎週ありがとうございます。

    #シロクマ文芸部
    #連載
    #lpz89

     
     
    ショートストーリー(というよりは端的に物事を伝える練習)を主に投稿してます。ドイツを一人旅しました。阪神タイガース、埼玉ワイルドナイツ、越谷アルファーズ、浦和レッズのファンです。ラジオを聴きながら、あちこち食べ歩き回ってます。たまに演劇を鑑賞します。21~24時頃に現れます。

    あなたへのおすすめ