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渋谷で17時(第8話)花吹雪 👮‍♂️16:44【シロクマ文芸部】

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    花吹雪が舞う前に、昨夜、花散らしの雨が降った。今朝、雨はあがっていたがだいぶ葉桜に変わってしまった。水溜まりには花筏が浮かんでいた。

    ただ、入学式シーズンに桜が満開を迎えたのは喜ばしいことだった。娘が小学校の入学式を迎えたとき、今年のように桜が満開だったらいいなと弘樹は渋谷駅前交番の前で立番しながら思いふけっていた。

    「おまわりさん『109』はどこにありますか?」
    「またお前か、伸三」

    「どうだ、今日は17時に帰れそうかい?娘さんの誕生日なんだろ」
    「ああ。それより、教えろよ。なにかあったんだろ」

    「なにか?」
    「とぼけんな。凸デコピンがうじゃうじゃいるじゃないか」

    「さすが元刑事」
    「茶化すな」

    伸三から聞いた話では、17時にスクランブル交差点で何かが起こるらしいとのことだった。未確定情報ではあるが、ゲリラライブが行われるとか、毒物がばら撒かれるとか、SNSで噂されているようだ。

    それならスクランブル交差点を閉鎖してはどうかと伸三に伝えてみた。しかし、警視庁としては大事にはしたくないらしく、私服警察官(凸ピン)を動員して片っ端から怪しい人物に職務質問をかける、ローラー作戦を展開しているとのことだった。

    また未確定情報であったことから、不要な混乱を防ぐために交番勤務の警察官には内密の動きであった。

    「シノブンジャー!見参!」
    「あぶないっ、振り回したら人に当たっちゃうでしょう」

    男の子が振り回している風船の剣が『ユーザーミーツ』の配達員にぶつかりそうになった。母親の言うことを聞かずに男の子はまだ風船の剣を振り回している。

    今日はハチ公前広場でバルーンアートフェスが開催されていた。コスプレして参加している人もよく見かける。

    「ぼく、お母さんの言うとおりだぞ。振り回したらあぶないぞ。家に帰ってから遊びな」
    「ほら、おまわりさんに怒られた」
    「わかったよ。家に帰ってから遊ぶよ」

    「いい子だ」
    「ありがとうございます。私の言うことは聞いてくれなくて」
    「おまわりさん、じゃあね」

    男の子は手を振って去っていった。至って平和だ。とても事件なんか起きるとは思えない。

    「弘樹、いま何時だ?」
    「えっと、いまは、げっ!」

    「どうした?」
    「16時44分だ」

    「あと16分か」
    「デジタル表示でゾロ目の『 4:44 』を見ると必ず悪いことが起きるんだ」

    「不吉なこと言うなよ。杞憂だろ」
    「…だといいんだが」

    「不審者を見かけたら片っ端から職質してくれ、頼むな」
    「不審者?ハチ公前広場にいる全員に職質をかけるのか?」

    「じゃあな。不審者を見つけたら無線で連絡してくれ」

    (つづく)



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    ショートストーリー(というよりは端的に物事を伝える練習)を主に投稿してます。ドイツを一人旅しました。阪神タイガース、埼玉ワイルドナイツ、越谷アルファーズ、浦和レッズのファンです。ラジオを聴きながら、あちこち食べ歩き回ってます。たまに演劇を鑑賞します。21~24時頃に現れます。

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