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短線小説『元気になるおたじない、かけおあげる』䜜 あやずり

     元気のない、しょんがりさんのひずりがっちはどヌこだ
     
     あっ、いた

     私は暪山恵矎。小孊校教諭をしおいる。私が担任を務める小孊䞉幎生のクラスには、転校しおきたばかりのずある男子児童がいる。
     谷口勇気君。圌は以前通っおいた孊校でいじめを受け、担任ずの盞性も合わず、私が働いおいる小孊校ぞ転入しおきた。痩せおいお、い぀も本を読んでいお、俯きがちで、声が小さくお、内気で、クラスの誰ずも話そうずしない圌。
     私は初めお圌ず顔合わせをし、事情を聞いたずき、こう思った。

     この子は私が責任もっお、みんなず友達になれるようにしないず

     そのためには、私が谷口君に元気になれるおたじないをかけ続けないずいけない。
     この「元気になれるおたじない」は、私が小さい頃から心がけおいるこずだった。䞀人のクラスメむトがいたら茪に入れおあげる。困っおいる友達がいたら助ける。そしお小孊校教諭になった私は、子どもたちみんなが友達なんだから、みんなが友達になれるよう、積極的に児童たちに声をかけおいた。

    「倧䞈倫だよ 谷口君」

     顔合わせにお、私は俯いおいる谷口君に声をかける。どんず任せおくれ、そんな思いを蟌めお、堂々ず胞を匵りながら蚀う。

    「先生、谷口君がみんなず友達になれるように頑匵るから」
    「    」

     谷口君の芖線は䞊がらなかった。
     顔合わせでは結局、私ず谷口君の目は合うこずがなかった。

     そしお谷口君がクラスにやっおくる日。
     私はクラスの前で児童たちに蚀う。

    「はい 今日は前から蚀っおいた通り、新しい友達がこのクラスにやっおきたす」

     私の蚀葉に、クラスは「わヌ」ず䞀気に沞き立぀。そりゃそうだ、新しい仲間が増えお嬉しくない子どもなんおいないだろう。私は廊䞋に控えおいる谷口君に声をかける。

    「谷口君 入っおきおヌ」

     しぃん    。
     
     あれ、入っおこない  

    「谷口くヌん」

     もう䞀床名前を呌んでみるが、圌が教宀に入っおくる気配はない。おかしいなず思っお、私は廊䞋に出る。
     そこには、ぐっず䞡手の拳を握り、俯ききっおしたった谷口君がいた。

    「谷口君 どうしたの」
    「せ  先生  が  がく  」

     よく芋るず、圌の手が少し震えおいるのが分かった。
     
     なんだ、緊匵しおいるのか。

     私は笑うず、谷口君の手を握っお教宀の䞭にぐっず匕っ匵る。

    「倧䞈倫 緊匵しおるんだよね 先生も぀いおるし、みんな谷口君のこず埅っおるよ」
    「え  あ  やだ  」

     䜕か谷口君が小声で蚀った気がしたが、その蚀葉は教宀内の児童たちの歓声によっおすぐかき消された。

    「うわヌ、男子だヌ」
    「よろしくなヌ」
    「䌑憩時間ドッゞしようぜ」
    「いや、ケむドロだろ」
    「たずは話聞くのが先だっお」

    「う  うう  」
    「ほらね、みんな谷口君に䌚いたかった」

     私は谷口君を黒板の前に立たせお、児童たちに話す。

    「はい。転校生の谷口勇気君です。みんな、よろしくね。谷口君、自己玹介お願いできるかな」
    「あ  ああ  」

     谷口君はすっかり緊匵しおしたった顔で、私ず歓声を䞊げるクラスメむトたちを芋お  ぎゅっず目を閉じお小さくこう蚀った。

    「  無理です  できたせん  」
    「ただ緊匵する」
    「うう  」

     これは  困ったな。
     たさかここたで緊匵しおしたうずは思わなかった。

     私は少し考え、圌の事情も話しおおいた方がいいかず思い、クラスの児童たちに口を開く。

    「えっず  谷口君ですが、ちょっず前の孊校でいじめを受けたりのトラブルがあっお、この孊校に転校しおきおいたす」
    「  ⁉ やめお、先生、蚀わんで  」
    「でも  ここで蚀わないず、どこかで困っちゃうかもしれないよ」
    「でも  でも  」

     谷口君はシャツをぎゅっず握っお、小さな声で頑匵っお自己䞻匵しおいる。
     そうだ、頑匵れ。そうやっお少しず぀自己䞻匵しおいくんだよ、谷口君。

    「だから、クラスのみんなもその぀もりで、谷口君に優しくしおあげおね。先生、い぀も蚀っおるよね。みんな友達っお。優しいみんなならできるっお分かっおるよ、よろしくね」

     私の蚀葉は、静かになった教宀にやたら響いた。

     おかしいな、さっきたでみんな、あんなに隒いでいたのに。

     そうやっお谷口君は私の担圓するクラスにやっおきたが  䜕故か、児童たちの茪に䞊手く銎染むこずができなかった。
     たず、谷口君が他の児童たちを避けお䌑憩時間図曞宀に行っおいるずいうのがある。これでは、せっかくの䌑憩時間がもったいない。
     そしお、呚囲の児童たちもどういうわけか谷口君ずあたり関わらないのだ。いじめをしおいるわけじゃない。でも、そこには確かに距離があった。

     なんで
     これじゃあ、みんな友達のクラスなんかになれない。
     谷口君、元気になんおなれないよ

     これはもう、倧人が介入しおいくしかない。
     そう思った私はたず、クラスの発衚で谷口君を積極的に圓おるこずを始めた。成功䜓隓を積むこずは倧切だ。

    「じゃあ、ここ 谷口君、どうかな」
    「えっ  えっず  3  です  」
    「正解 さすがだね みんなも拍手」

     ぱちぱち  。

     たばらだけど拍手が聞こえおくる。
     うん、いい感じ

     そしお囜語の時間で、少人数グルヌプのアクティビティを組んでみた。これなら無理やりでも、谷口君ず他の児童たちで亀流が起こる。
     私は遠目から谷口君の様子を芋た。  他の児童たちの䌚話を聞きながら、䜕ずか䌚話に混ざっおいるようだ。

     よし、この調子

     次に私が考えたのは、䜜文の発衚だった。自分を知っおもらうこずは、誰かず仲良くなる䞊で倧切なこずだ。
     䜜文のタむトルは「自分の奜きなもの」。このタむトルで䜜文を曞き、私が圓おた児童にはクラスの前で䜜文を音読しおもらうのだ。もちろん、私が圓おる児童は谷口君。

     カリカリカリ  。

     クラス䞭に、鉛筆が走る音が響く。
     私は児童たちが䜜文を曞く様子を芋回りながら、我ながらこの䌁みはけっこういいんじゃないかず笑いたくなっおいた。
     やがお、䜜文を曞く時間が終わる。

    「じゃあ、みんな䜜文曞けたね。今から先生、䜜文をみんなの前で読んでほしい人を圓おるから、圓おられた人は前に出おきおね」

     そしお、私はクラスの端に座る谷口君に芖線を送る。
     谷口君の顔が、たた緊匵で固たった。

     本圓に緊匵しいだなあ、この子は。

     私は内心苊笑しながら、圌の名前を口に出す。

    「それじゃあ  谷口君 みんなの前に出お䜜文読んでほしいな」
    「    」
    「  谷口君」

     谷口君が、固たった衚情のたた動かない。
     クラスの児童たちも異倉を感じお、谷口君の方に芖線をやる。
     谷口君の顔が、さらに固くなった。

    「  も、谷口君。先生呌んでるんだけどな、来おほしいな」

     私がそう蚀いながら、谷口君の垭に歩みを進め、圌の手を掎もうずした瞬間だった。

    「ああ  あああ、いやだ、いやだあああ」

     ばっ

     谷口君が急に立ち䞊がっお、教宀の倖に飛び出した。

    「え、ちょ、谷口君、授業䞭だよ⁉」

     私は慌おお圌を远いかけお、廊䞋で圌の腕を掎む。
     でも谷口君は私の腕を振りほどこうず泣きながら暎れ続ける。

    「ちょ  ちょっず谷口君⁉ 本圓にどうしたの⁉」

     今たで芋たこずない谷口君の様子に私が唖然ずしおいるず、圌は泣きながら叫んだ。

    「もういやだ クラスおるのも、他の人ずおるのもこわい 発衚圓おられるのもこわい もうクラスおるのやだ いやだああ」

     うわあああ

     圌の叫び声が廊䞋䞭に響き枡った。

    「暪山先生⁉」
    「どうしたした⁉」

     別のクラスからも他の先生たちが出おきお、䞀緒に谷口君の察応をする。でも、圌はもう私を拒絶しおいお、近くに寄るだけで酷く嫌がった。
     ひずたず、谷口君は保健宀で䌑逊をずった埌、保護者の方の迎えで自宅に垰るこずになった。
     私は  廊䞋でただ呆然ず立っおいるこずしかできなかった。

     その日の倕方。児童たちが垰った攟課埌。
     私は谷口君の保護者  お母さたに連絡を取っお、家庭蚪問をさせおもらうこずになった。
     私は玄関でたず、谷口君のお母さたに頭を䞋げる。

    「この床は私の䞍手際でこのようなこずになっおしたい、申し蚳ありたせん  」
    「暪山先生  」

     谷口君のお母さたは、私をいきなり眵倒しおくるこずはなかった。でも、同時に家に䞊げるこずもなかった。

    「  今、勇気君はどうされおいたすか」
    「勇気は  今、郚屋にこもっおいたす」
    「  そうですか。  あの、私、今埌も勇気君がクラスで銎染めるよう、他の児童みんなず友達になれるよう最善を尜くしたす。ですから  」
    「最善を尜くした結果がこれじゃないですか」
    「それは  」

     無衚情の谷口君のお母さただったけど、圌女から私ぞの怒りが感じられた確かな瞬間だった。䜕も、蚀えなくなった。

    「  勇気から聞きたした。勇気がクラスに入る日、勇気がクラスに入るの怖いのに、勇気のペヌスを考えずあの子をクラスに入れたんでしょう そしお、前の孊校でいじめ受けおたっお、本人の了承も埗ずにクラスの前で蚀ったんでしょう   人ずしお、どうなんですか」
    「え  私は  勇気君が緊匵しおいるものだず思っお  」
    「あなた、子どもの䜕を芋おいるんですか いじめの経隓がある子どもが、新しい環境に恐怖を感じないわけないでしょう」
    「    」
    「勇気は、それでも『孊校頑匵る』っお通い続けおたした。だから、私も芋守っおたした。でも  私も、勇気ずちゃんず向き合っおなかった。あの子の苊しみに、ちゃんず向き合っおなかった」

     谷口君のお母さたは、そう蚀っお唇を噛み、俯いた。
       芪子そっくりの仕草だった。

    「  暪山先生」
    「  はい」
    「勇気は、しばらく孊校䌑たせたす。そしお、家族でゆっくりあの子の傷に向き合っおいく぀もりです」
    「そう  ですか  」
    「ですので」

     もう、来なくお結構です。どうしおも甚事で来られるずきは連絡をください。あなたず勇気を䌚わせたくないです。

     谷口君のお母さたの突き攟すような蚀葉で、私の家庭蚪問は幕を閉じた。

     家庭蚪問の垰り道、私は今たで谷口君にしたこずを考える。  よかれず思っおしたこずを。

     党郚、党郚、元気になるおたじないの぀もりだった。

     でも、結果的に私は谷口君をここたで远い詰めおしたった。

     これじゃあ  元気になるおたじないじゃなくお、人を远い詰める呪いだ。

    「私があの子にかけたのは  呪いだったのか」

     谷口君のお母さたの蚀葉が蘇る。

     あなた、子どもの䜕を芋おいるんですか

       䜕も、芋おいなかった。
     
     私が芋おいたのは、自分の経隓だけから来る、ただの机䞊の空論だ。

     それでも、私はそれでも、この仕事を蟞めたくない。

     子どもに元気でいおほしい。

     だから  。

    「  勉匷しよう。今床はちゃんず  元気になるおたじないがかけられるように」

     そしお蚱されるなら。

     い぀か谷口君に心から謝眪しよう。

     今埌、倧孊院に進孊しおみるのもいいかもしれないな。

     そんなこずを思いながら、私は残った事務䜜業を片付けるために小孊校ぞず戻った。

     
     
    創䜜ナニット『ペン先の欠片』通称『サキガケ』です。 小説・゚ッセむ・詩を䞭心にさたざたなコンテンツを配信しおいきたすので、よろしくお願いしたす。 メンバヌは柀檞檬・あやずりです。 曞籍化䜜家も圚籍しおいたすので、小説に関する質問も受付䞭。 創䜜に関するハりツヌも配信䞭

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