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寓話、馬鹿正直二、疑うもの

    ※連絡事項、寓話馬鹿正直の第二弾です。第四弾まであります。このシリーズは成長物語として、また社会風刺として書いています。読んでみてください。

    ※追記、フォロー整理してたらXが凍結されてしまいました😆


    年月が過ぎ、
    その者は、少しずつ問いを口にするようになった。

    それは、
    誰かを責めるためのものではなかった。

    声を荒らげることもなく、
    正しさを示すこともない。

    ただ、

    「なぜ、こうなっているのだろう」
    「ほかのやり方はないのだろうか」

    そうした言葉が、
    自然とこぼれるようになった。

    ⸻

    はじめのうち、
    村の者たちは耳を傾けた。

    「なるほど」
    「そういう見方もあるか」

    そう言って、うなずいた。

    だが、それだけであった。

    何かが決まることもなく、
    何かが変わることもなかった。

    言葉は、その場に留まり、
    やがて消えていった。

    ⸻

    その者がさらに言葉を重ねると、
    村の中には、こう言う者もおった。

    「そこまで考えんでもよい」
    「昔からこうしてきたのだ」
    「面倒なことは、誰かがやるだろう」

    隣の家の幼馴染は、笑いながら言った。

    「考えすぎだろう」
    「昔からそうだな」
    「誰かが決めるさ」
    「おぬしは、考えるのが好きだな」

    その言葉は、軽く聞こえた。

    だが、その奥にあるものを、
    その者は感じてしまった。

    期待と、
    手放しと。

    気がつけば、
    考える役目は、ひとところに集まっていた。

    村の者たちは言った。

    「皆で考えよう」

    だが実際には、
    「誰かが考えるだろう」と思っていた。

    その「誰か」は、
    いつの間にか、その者であった。

    ⸻

    仕事は、少しずつ増えていった。

    引き受ける者は定まらず、
    境目は曖昧なまま、
    物事は進められていった。

    うまくいっても、
    誰のものでもなかった。

    うまくいかなくても、
    誰のものでもなかった。

    ただ、
    決める者だけが、いなかった。

    ⸻

    その者は、ふと立ち止まった。

    そして、はじめて気づいた。

    信じることと、
    任せることは、同じではない。

    皆が信じているようでいて、
    ただ、決めることを置いているだけではないかと。

    「疑う」という言葉は、
    その者の中で、少しずつ姿を変えた。

    それは、
    誰かを疑うことではなかった。

    善意を否むことでもなかった。

    「このまま、決めずにいることは…」
    「本当に、よいことなのだろうか」

    そう、自らに問うことだった。

    問いを持つたびに、
    胸はわずかに重くなった。

    かつてのような軽さは、なかった。

    だが、
    目をそらすことも、できなくなっていた。

    ⸻

    村の者たちは、変わらず穏やかであった。

    「そのうち何とかなる」
    「考えるのが得意な者に任せよう」

    その言葉を聞きながら、
    その者は、静かに思った。

    …考えるだけでは、足りぬ。
    …いずれ、誰かが決めねばならぬ。

    その思いは、まだ形を持たなかった。

    だが確かに、そこにあった。

    それは、
    信じるだけであった頃には、
    知らなかった重さであった。


    ※連絡事項2、マガジンにてご紹介ありがとうございます😊

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