
月を見る 【 シロクマ文芸部 】
月を見ると、ママを思い出す。
会ったこともないのに。
今年、二十歳になった。
毎日ご飯を食べて寝る。
……働かず、やることもなく。
ただ……流れるように生きている。
そんな私のお腹には、今、赤ちゃんがいる。
一夜だけ、一緒にいた男との子ども。
一人で産むつもり。
寂しくなんかない。
だって、ずっと一人だったから。
ただ、ひとつだけ決めている。
私が生まれた場所で、この子を産もう。
月がよく見える場所。
もしかしたら、ママに会えるかもしれない。
そんなことを考えて、泣けてきた。
会えるわけないのに。
「私も、ママになるんだ」
そう呟いた瞬間、お腹が強く痛んだ。
「うっ……」
痛みを堪え、砂浜に穴を掘る。
卵を産む。
何十個も。
そして、海へ戻り、砂浜を、卵を見守る。
「ああ……かわいい」
砂の中から、小さな頭がひとつ出てきた。
続いて、もうひとつ。
また、ひとつ。
私の子どもたちが、月明かりの下を、海へ向かって進んでいく。
私はもう一度、月を見上げた。
月を見ると、ママを思い出す
こうやって、見守っていたんだね。
ママも同じだったんだね。
私は安心して、暗い海に流された。
こちらの企画に参加させていただきました✨️
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