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ノーラン映画は難しい。でも、難しいだけなら好きにならなかった

    ※この記事は、5作品すべての結末に触れます。まだ観ていない作品がある方は、その章だけ飛ばすか、観てから読んでください。

    「ノーラン映画は難しい」とよく言われます。自分もそう思います。初見で全部わかった作品は、たぶん一本もありません。話が終わりから始まったり、夢の中の夢に入ったり、人が時間を逆行したり。

    観ている最中は、話を追うだけで手いっぱいになります。

    ただ、難しいだけの映画だったら、ここまで好きにはなっていなかったと思います。

    『メメント』『ダークナイト』『インセプション』『インターステラー』『TENET テネット』の5本で、自分の中に何が残ったかを書いてみます。

    『メメント』 仕掛けから入って、切なさが残った

    5本の中で個人的に一番好きなのは『メメント』です。

    主人公のレナードは新しい記憶を保てず、ポラロイド写真とメモと刺青を頼りに、妻を殺した犯人を探しています。映画は物語の大部分を、時間をさかのぼるように見せていきます。

    初めて観たとき、この構造にやられました。観客もレナードと同じで、「その前に何があったか」を知らないまま場面に放り込まれる。場面が進むたびに、その少し前に何があったのかが分かっていく。

    仕掛けとして、とにかく面白かったです。

    ただ、観終わって残ったのは、仕掛けのすごさだけではありませんでした。しばらく引きずったのは切なさです。

    レナードは、自分で自分を騙しています。記憶が残らないことを知っていて、未来の自分が信じるようにメモを残す。そこが切なかったんですよ。

    構造の面白さから入ったのに、最後に残ったのは主人公そのものへの感情でした。

    『ダークナイト』 正しくあろうとするほど苦しくなる

    『ダークナイト』というと、ジョーカーの話になることが多いと思います。実際、あのジョーカーは強烈です。

    でも自分に一番残っているのは、バットマンの心の難しさのほうでした。

    正義を貫こうとすればするほど、自分自身が苦しくなっていく。最後、バットマンはハービーが殺した人たちの罪まで自分のものにして、警察に追われる側へ回ります。「正しいことをすれば報われる」という単純なヒーロー映画ではないところに惹かれました。

    『インセプション』 観終わってからが長い

    『インセプション』で一番好きなのは、ラストについて考えられるところです。

    夢と現実を見分けるために、コブはコマを回します。倒れれば現実、回り続ければ夢。

    ラストでコブは子どもたちのもとへ戻り、コマを回して、確かめずにその場を離れます。コマは、答えを見せる前に画面が切れます。

    自分は今も、「倒れない=まだ夢の中」だと思っています。

    映画を観たあと、まず自分の中で考えました。自分なりの答えを出してから、考察サイトや他の人の感想を読みに行きました。

    そこで楽しかったのは、自分と同じ意見を見つけることより、自分では思いつかなかった見方に出会うことでした。そういう見方が、いくつもありました。同じ意見を見つけて安心するより、そっちのほうがずっと楽しかったです。

    読んだあとも、「倒れない」という考え自体は変わっていません。ただ、別の解釈を知ったことで、作品の見え方は広がりました。

    ノーラン作品は観終わってからも楽しめる、と自分が言うとき、頭に浮かべているのはこの一本です。

    『インターステラー』 一番好きと一番すごいは別

    自分の中では、一番好きな映画と、一番すごいと思う映画は違います。

    一番好きなのは『メメント』です。でも、5本の中で作品として一番完成度が高いと思っているのは『インターステラー』です。

    中でも一番印象に残っているのはブラックホールでした。光の輪をまとった巨大な黒い球体が、画面の真ん中に浮かんでいる。

    5本の中から一枚だけ画を挙げるなら、あれです。

    あとから、あの画のために物理学者キップ・ソーンの方程式を使い、光の曲がり方を計算する専用ソフトまで作ったと知りました。

    制作の話を知っても、自分の中では、あの一枚が先に浮かびます。映像に圧倒されたことも、「完成度が高い」と思う理由の一つです。

    『TENET テネット』 分からないから、また考える

    『TENET』は、難解さそのものが好きです。

    「難しい映画だからすごい」という意味ではありません。

    特に残っているのは、オスロの格闘を、あとから逆行側でもう一度見る場面です。最初は正体の分からない相手との格闘だったのに、同じ場面へ戻ると、相手が誰なのかも、妙な動きの理由もつながります。

    順行する人と逆行する人が同じ場面の中にいるので、一度観ただけでは何が起きているのか追い切れませんでした。観終わってから頭の中で場面を並べ直しても、分からないところが残る。

    それでも、分からないから、もう一度考えたくなります。

    全部理解できなくてもいい、というのとも少し違います。理解しようと考えている時間まで含めて面白い、という感覚です。分からないまま終わる映画と、分からないから戻ってくる映画は違って、『TENET』は自分にとって後者です。

    観終わったあとにすること

    自分のノーラン映画の楽しみ方は、だいたい決まっています。観る。観終わったあと、まず自分の中で整理する。それから考察サイトや他の人の感想を読む。自分では思いつかなかった見方に出会う。そして、また映画について考える。

    この繰り返しで、一本の映画がなかなか終わりません。

    表紙写真: ChristopherNolan-byPhilipRomano.jpg by Philip Romano, via Wikimedia Commons (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:ChristopherNolan-byPhilipRomano.jpg), CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/)(表紙用にトリミング)

     
     
    映画を観て考えたこと、AIを仕事で試したこと、3歳の息子との日々。情シスの会社員が、日常で引っかかったことを文章にしています。SF・サスペンス・ミステリー多め🎬

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