
ちょび 41 おばあちゃんとオジサンの妖精のお話
梅雨明けが待ち遠しい日々。
今日もジメジメ。
おばあちゃんは縁側に腰を掛け、
汗をぬぐいながら
池の錦鯉にエサをあげていた。
すると、ふとした拍子に
履いていたサンダルがコロコロと転がる。
「あぃー」
呟きながら、転がったサンダルを拾おうと膝をついた。
軒下に入り込んだサンダルを取ろうとした、その時。
「……なんだべ?」
奥に何かあるのを見つけ、手を伸ばして引っ張り出す。
カピカピになった蕗(ふき)の葉っぱで覆われた、
手のひらほどの小さなザルだった。
「……んん⤵?」
蕗の葉っぱをそうっと寄せると、中から出てきたのは……
カピカピのパンくず。
干からびたこごみと、わらび。
薄紫や青のアジサイの花びら。
まるで、小さな宝石みたいに転がっている。
そしてその真ん中に、
でーんと鎮座するカタツムリの殻。
「……ちょびだなぁ~」
おばあちゃんは、思わず目元を緩めた。
「このザル、ねぐなった(無くなった)と思ったっけ」
しげしげとカタツムリの殻を手にとり、
「ははなぁ~」と微笑む。
そして割烹着のポケットからスマホを取り出し、
カシャ!
すかさず写真を撮った。
すると、
「あ!! ちょすなって!(いじるなよっ!)」
聞き覚えのある叫び声!
「ハイハイ、戻しておぐな」
おばあちゃんは、蕗の葉っぱで元通りに蓋をする。
見られた恥ずかしさからか、
ちょびは顔を真っ赤にして叫んだ。
「おめ、プライバシーってわがるがっ!」
「あぃーごめんごめん! ワリィがったな~」
おばあちゃんは軒下の奥にザルをそっと戻し、立ち上がった。
……と、その時。
怒っているちょびの後ろから、ぞろぞろと誰かがやってくる。
おばあちゃんが最近新しく買った、
小さなザルを運んでくる「他のちょび」たちだ。
ひまわりの大きな葉っぱを担ぐちょびが二人。
立派な蝉の抜け殻を大事そうに持つちょび。
その後ろを、鼻をほじりながらついてくるちょび。
「あぃ!」
おばあちゃんの目が思わず見開く。
「や! さぃ!(しまった!)」
搬入現場を見られたちょびたちが、一斉に気まずい顔をした。
おばあちゃんはスッと目をそらし、
「さ、晩げ(晩御飯)の支度するがな」
何事もなかったかのように、シラ~とその場を去っていった。
残された真っ赤な顔のちょび達は、
コソコソと軒下へ
夏の宝物を運び込んでいくのだった。
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