メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【二十歩目】やまない雨はない。- 飄風は朝を終えず驟雨は日を終えず-

    二十歩目は老子で。

    画像

    ❝希言自然。故飄風不終朝、驟雨不終日。孰爲此者、天地。天地尚不能久、而況於人乎。❞
    ➙無言であることこそ自然である。つむじ風は一朝も続かない、土砂降りの雨も一日は続かない。このような営みをなすのは誰か、それは天地だ。天地の営みすら永遠には続かない、ましてや人間の行いなど続くはずもない。

    『老子道徳経』第二十三章

     「飄風(ひょうふう)は朝を終えず、驟雨(しゅうう)は日を終えず。」辞書では「不自然な出来事は長くは続かない」という意味だとされます。いわゆる「やまない雨はない」のハシリです。

    画像

    ❝道可道、非常道。名可名、非常名。無名天地之始、有名萬物之母。故常無欲以觀其妙、常有欲以觀其徼。此兩者同出而異名。同謂之玄。玄之又玄、衆妙之門。❞
    ➙これこそが真の道(TAO)だとすべき永遠の道などはない。これこそが完全な言葉だとすべき永遠の言葉などはない。無とは天地が始まる前のことを指し、有とは万物が母より生みだされたことを指す。ゆえに、常に無であれば万物の始まりの霊妙さを見ることができ、常に有であれば万物の働きの結果を知ることができるという。万物の始まりと、万物のはたらきの結果とは同じ根源がありながら、違う呼ばれ方をするようになる。根源たる玄、玄のまた玄、そこに衆妙の門がある。

    『老子道徳経』第一章

     老子の考えでは、中心的な概念である道(TAO)ですら永遠不変のものではありません。あらゆるものが変化し続けるという点では、仏教やヒンドゥー教の無常観と共通する部分があります。これは東洋思想に通底する観念と言っていいと思うんですが、『老子』の場合にはほんのちょっとだけ前向きというか、楽観的なところがあると感じます。

     「飄風(ひょうふう)は朝を終えず、驟雨(しゅうう)は日を終えず。」がまさにそうですが、幸せも永遠には続かないけど、今のつらい時期だって永遠ではない、きっとまた晴れるだろうという能天気なところがあるように思えます。

     ちなみに、ビートルズのジョージ・ハリスンがソロになって発表した「All Things Must Pass」は、この『老子』の第二十三章をベースに作詞されています。

    ❝Sunrise doesn't last all morning
    A cloudburst doesn't last all day
    Seems my love is up and has left you with no warning 
    It's not always gonna be this gray
    All things must pass
    All things must pass away❞

    朝焼けが昼まで続くことはない
    にわか雨が一日中降り続けることもない
    僕の愛は終わり、前触れもなくあなたから去ってしまったようだね
    だけど、このどんよりとした空が続くわけじゃない
    すべては過ぎ去っていく
    あらゆるものは移ろいながら過ぎ去っていくんだ

    George Harrison - All Things Must Pass

     というわけで二十歩目はここまで。続きは二十一歩目でお会いしましょう。Punarmilāmaḥ (पुनर्मिलामः)!

     
     
    老荘思想をこよなく愛する九州人。老子や荘子はかなりの変わり者だけど、こんなに厳しくて優しくて賢い師匠は他にはいないと思っています。東洋思想を理解するうえでも最もシンプルでわかりやすいテキストだと思います。

    あなたへのおすすめ