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暮らしの森|家計の鬼教官|マダム・ザマス

    新年の森は、いつもより少し静かだった。

    それでも、いつも通り優しくて
    どこか騒がしい住人たちの中に、
    この時期になると必ず現れる人物がいる。

    “家計の鬼教官”マダム・ザマス。

    その日、森の外れにあるマダム・ザマスの自宅兼サロンには、ぽつぽつと住人たちが集まっていた。

    理由は、ただひとつ。
    新年最初の『家計講座』が開かれるからだ。

    「今年こそ、ちゃんとやろう」
    「話だけでも、聞いておきたい」

    そんな小さな決意を胸に、
    それぞれが自分の足で、扉をくぐる。

    マダムは一人ひとりを見渡し、
    拒むことなく迎え入れた。

    「寒い中ご苦労さま。まずは中へ。
    冷えた体では話も頭に入らないざます」

    マダムはそう言って、
    湯気の立つスープを一人ひとりに手渡した。
    メイはカップを両手で包み、ほっと息をつく。

    「さて、新年ざますけど」

    その一言で、ぴしり、と場の空気が締まった。
    マダムは眼鏡越しにゆっくりと視線を巡らせる。

    「まずはメイ。
    部屋は、片付いたんざますか?」

    「えっ、あ、えっと……」

    一瞬、背中に冷たいものが走る。

    「は、はい! 最近はちゃんと綺麗にしてます!」
    ( 昨日やっといてよかった〜……!)

    マダムはしばらく無言でメイを見つめ、
    やがて小さく息をついた。

    「……まぁ、よろしいざます」

    「続けて聞くざますが。あなた、家計簿アプリをまた変えたらしいざますね?」

    「はい! 新年なので、気持ちも新たに!」

    「いい心がけざます。ちなみに、いくつ目?」

    「えっと……10個目です!」

    一瞬の沈黙のあと。

    「多すぎザマス!!!
    それ、恋人を変えるより早いザマス!!」 

    マダムの声が部屋に高らかに響き渡った。
    室内に、くすりとした笑いが起こる。

    メイは肩をすくめながら言う。

    「いやその……アイコンが可愛くて……」

    「アイコンの可愛さで選んでどうするザマス!
    浪費は未来の涙ザマス!!!」

    その余韻が消えきらないうちに、
    マダムは声のトーンをふっと落とした。

    「でも……、今年も無事に迎えられたざますね。みんな元気でいてくれたこと、それが一番の収穫ざます」

    森の空気が少しだけ、温かくなった。

    「メイ、アプリが悪いわけではないざます。
    でも、変え続けていたら“癖”は育たない」

    「家計簿はゴミ出しに近いざます。
    毎日ではない。でも、溜まり方には必ず癖が出るざます」

    「油断すると増える、忙しいと放置する。
    変え続けていたら、それも見えないままざます」

    メイはスープを飲み干しながら、こくりとうなずいた。数字の話なのに、なぜか“生活”の話をされている気がする。

    マダムは最後に、静かに言った。

    「ここは、数字を叱る場所ではなく、
    暮らしを立て直す場所ざます」

    新年の森に響いたのは、説教のような暮らしの話。

    こうして──
    マダム・ザマスの初講義は、一年を動かし始めた。


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    ザマスの話をもう1話読む

    ▶︎森の実用回
    家計簿が続かない人のための7日間講座👇

    マダムの教えでメイがちょっと得した日⬇︎





     
     
    「暮らしの森」を見守る管理人🌳 1話2〜3分の小さな連作。森の住人たちの日常に、家事・暮らしのヒントや小さな発見を混ぜて綴っています。 人とのつながりが物語になり、歩いた足跡が森の地図になっていく。 読む場所ではなく、帰ってこられる場所を目指して🕯️

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