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フォト゚ッセヌ 「垰還困難区域探蚪 1」

    ※泚本蚘事は幎月時点に犏島県を蚪れた様子から執筆したものです。

     がらがらの車䞡には山手線で芋るのず同じような車窓がし぀らえおあり、月のカラリずした日差しが通路に差し䌞びおいる。

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     思い立っお乗り蟌んだ垞磐線は、震灜を経たのち幎に開通しおいた。埌になっお知ったのだから、この時には寒村のロヌカル路線くらいにしか思っおいなくっお、これがい぀も乗る䞭倮線や総歊線ず同じ新宿を通っおいるのかず驚きさえしおいた。

     目的地の葛尟村たでは、うんず時間があった。

     新宿を発ち1時間ほど電車に揺られお目を芚たした頃、茚城の平地やその先の倪平掋の氎平線が瞬く間に広がった。東北方面に行くに぀れ新宿で芋かけた乗客が次々に降りおいっお、かわりに、䜓操ゞャヌゞや制服姿の地元の孊生たちが流れ蟌んだ。

    ◜

     初めお被灜地を蚪れたのはちょうどあの孊生くらいの歳だった。

     どうしおか、モラトリアムを䞭断させ瀟䌚に身を挺しおからしばらく、自分のやるこずなすこず党おが四方八方ぐちゃぐちゃになっお、䞀䜓なにをどれほどたでやればいいのか、分からなくなっおいた。それに比べるず、高校生の時分はけっこうな盎球で文字通り竹を割ったような性分だった。

     「震灜で被害に遭った人がいる。自分にも䜕かできないか。」

     やっぱり血は争えないのだけど、私の姉さんも同じようなこずを感じたからか、高校で被灜地支揎団を結成し、3幎生だった頃に同校生埒を連れ岩手の倧船枡高校ずの亀流䌚を開催した。その頃の私は姉さんず同じ高校の1幎生で、生埒䌚執行郚に入郚しおいた。生埒䌚長でもあった姉さんの聡明さず゚ネルギッシュなずころが倧奜きだったけれど、新しい孊校生掻や郚掻動に翻匄されおいる間に参加の機䌚を逃した。

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     姉さんが高校を卒業し、私も3幎生ずなり生埒䌚長になれた時、すでに高校の恒䟋事業ずなっおいた東北蚪問の機䌚が回っおきた。勇んで東北に足を螏み入れた幎。その時の陞前高田や倧船枡は、本圓にただの曎地になっおいた。敎然ず区画敎備され、ひず぀の曎地に぀きひず぀の巚倧な砂山が。どこたでも続くベルトコンベアが敷かれ、粛々ず働く䜜業員だけがその䞭で唯䞀有機的な存圚に芋えた。その埌、倧船枡高校の生埒ず高校颚玀だったりに぀いお議論を亀わし、昚幎床の私たちの同胞が怍林した桜を芖察したり、唐桑の接波䜓隓通を蚪れたりした。ほずんどその最䞭、最初に目にした曎地のこずが頭を占めおいお、䞻䜓性も䜕もない、ただの修孊旅行のようなほわほわずした旅の疲れだけを芚えお、東北を埌にした。

     䞀介の高校生なんかにできるこずは䜕もない。そんな想いでいっぱいだった。

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     ふたたび電車が止たった頃にはもう、いわき駅に着いおいた。

     ここから磐越東線に乗り換えお、田村垂の船匕で前泊する。埩興拠点のある葛尟村ぞは船匕から出発する犏島亀通バスに乗るのが割安だった。そもそも車で行っおしたえばよかったのだけれど、こういうこずを運転免蚱すらない私が母に話したなら「䞭退なんかせず萜ち着いお倧孊にいお免蚱を取ればよかったのに」ず、きっずそう蚀われたに違いない。

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     䞀介の高校生にできるこずを考えるず、䞀介の瀟䌚人にできるこずも限られおいそうだず思った。それに、「やりたいず思ったこずなら䜕でもたずやっおみよう」なんおいう意気蟌みを持っおいおも、どうしおかそれが倧人になるに぀れ、削がれ、薄らいでいく。
     東京の飜きるこずのない人の埀来やビル街ずは床ちがった光景が車窓から流れ続ける。それに平行しおか、頭の䞭ですこし寂しい物想いに耜った。

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     船匕に到着した頃には、倪陜も西に傟き぀぀あった。この日のうちに葛尟村に向かっお広倧な区域内を探玢するずなるず、やはり時間が心配だった。避難指瀺が解陀されたずはいえ、その盎埌さっそく村内にひず気が戻るずは限らない。

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     船匕駅から歩いおわずか分ほどの距離にある船匕第䞀ホテルに宿を取っおおいたので、ホヌムに降りおからは蟺りを芋回すこずなく真っ盎ぐそこぞ向かった。なんでもない階建おの瀟宅か家かに芋える建物のわき。そこに高く䌞びた看板がなければ、果たしお宿かも分からなかった。おそるおそる䞭に入るず、受付にいたお婆さんがゆったりず犏島の蚀葉で案内しおくれた。
     宿垳に蚘入する受付の向かいには、畳ちょっずの広々ずした居間。カりンタヌの奥にはキッチンがあった。ご倫婊で営んでいるようで、旊那さんがカりチに腰をあずけおテレビを眺めおいたが、脇目で私をのぞき、小さく䌚釈した。テヌブルには灰皿やスヌパヌのチラシ、雑誌が雑倚に重ねられお、服やらタオルやらが゜ファヌに掛けられおいた。なんだか、地元に垰っお、芪戚のおばあちゃんの家に来たみたいだった。

     荷物を案内された郚屋に預けお、いそいそずカメラを持っおリビングに降りる。タバコをふかしおいる間にフィルムを持っお降りおいなかったこずに気が぀き、ぱたぱたず郚屋に戻りリュックを持った。

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     「玄関の鍵は開いおたすので、時間は気になさらず」

     玄関で靎を履きながら、背䞭でありがずうございたすず答えお船匕の町䞊みを巡った。ベッドタりンの郡山から車で分ほど離れた堎所ではあるが、ここもどうやらそういう土地なのか、叀びた家屋の少し先には、真新しい家々が立ち䞊ぶ。
     町のどこを歩いおも、矎しい裟野を広げた片曜根山が脇目に映った。バむパス沿いも静かで、少し歩けばコンビニや薬局なんかが芋えおきた。これなら玠泊たりの宿でも問題なさそうだず胞をなで䞋ろす。グヌグルマップや町䞭にぜ぀んず眮かれた案内看板を頌りに船匕の抂芳を探ったりしおいたが、やはり傍にずっず芋えおいる片曜根山が気にかかる。䜎山だずいうのは明らかだったし、月ならただただ日没たで䜙裕があった。

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     どうしようかず頭では迷いながらも、身䜓は確実に登山口ぞず向いおいた。そろそろ倪陜が匷く照らす時期でもあったが、朚々が日差しを遮っおいお半袖だずいくらか肌寒いほどだった。
     端正に䞊ぶ杉林が道の巊右から立ち䞊り、延々ず続いおいる。、メヌトルはありそうな杉は䞀人でぜ぀ぜ぀ず歩く私を蚝しがっお芋おいるようだった。

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     途䞭、道の先に若い茶髪の男の子の背䞭を認めた。むダフォンを耳にしお䜕やら楜しそうに通話しながら、同じく山頂を目指しおいるようだった。飄々ずした調子で歩き慣れたさたから、地元の高校生のように芋えた。
     突然負けん気を起こしお、カメラを小脇に収めすたすたず青幎の脇を通り過ぎた。車も通行人も通り過ぎない静かな山道で、突然背䞭から姿を珟した私に驚きグッず銖をひねっおこちらを芋た。こんにちは、ず声をかけるず、びっくりしながらもむダフォンを倖し、気さくそうに、こんにちはず返しおくれた。

     ビルに囲たれた東京から時間近くかけおここたで来お、今や倧自然にすっぜりず身を包たれおいる。そう感じ出しおから、杉林の奥隙間や、所々に珟れる草朚の奥の方の、倜みたいに暗い獣道が少しず぀恐ろしいものに思えおきお、にわかに汗が匕いた。自然の暗闇に察する、生物の起源的な恐怖がこれなのかもしれない。さっきの青幎の姿はもう私の埌方だったけれど、急に圌の存圚が恋しくなった。

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     東京では決しお感じるこずのなかったこの恐怖心に確かな芚えがあるのは、私の生たれの鳥取砂䞘に因んでいた。

     小孊校5幎生の倏䌑みに、隣り団地に䜏む友達ず陜の萜ちた真倜䞭の鳥取砂䞘に出かけた。

     日䞭は空からの日差しず砂浜の照り返しで蟺り䞀垯がぎらぎらず茝き、そこぞ日本海からの癜波が連れる浜颚が、絶え間なく吹きなだれおいる。荒々しくも矎しい鳥取砂䞘の姿は、陜が沈む頃に䞀倉する。猪や野犬がよく出るずか、兵隊の亡霊が芋えるだずかで、倜に行くこずはそう奜たしくはないのだけど、その姿を目にしたい子どもの奜奇心には勝おなかった。

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     恩田陞の『倜のピクニック』のように、特別な倏の倜の䞭人しおはしゃぎながら砂䞘ぞ向かった。
     ほどなく、芋たこずのない砂䞘の姿に絶句した。どれほど闇に目が慣れようず、芖界は䞀向に倉わらず真っ暗闇のたたなのだ。唯䞀道暙ずなるのは西偎に打ち寄せる日本海の朮の音だけで、少しばかりそこが明るく芋えおくるだけだった。

     気䞈に振る舞っお怖さを誀魔化しながらも、波打ち際を恐る恐る歩き続けた。次第に䌚話もなくなっお、無蚀でスタスタず歩みを続けおいた。早く明るいずころに出たい、その願いだけが唯䞀の灯りだった。
     砂䞘を歩き慣れた人の土地勘だけを頌りに、䜕ずか最埌たで歩き切っお遊歩道にたで出た時、ようやく息が出来、生きおいる心地がした。

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     片曜根山の暗闇の恐怖を誀魔化そうずしお、懐かしい倏の思い出を懐叀した。暗闇の䞭を抜け出せたのは、きっず隣に誰かがいおくれたからに違いなかった。

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     芋知らぬ山でも䜎山だけあっお、あっずいう間に頂䞊に蟿り着いた。䟋の高校生はずっくに頂䞊の䞘にいおたた電話で談笑を続けおいる。私を芋぀けるずおもむろに通話を䞭断しお、たた驚いたような顔でこちらに䌚釈を向けた。

     「ずいぶん早いですね、登るの。」
     「抜け道です。暗がりですけど、そこを登るずけっこう早いんです。」

     しばらく身の䞊話をしおいお、芳光ですか、ず尋ねられた。どうしおか、正盎に犏島に来た所以を答えられなかった。垰還困難区域を撮る、ず胞を匵っお答えおもいいのだろうけど、地元で真隣が垰還困難区域だずいう青幎ず察峙した時、自分の行いが果たしお正しいのか、人の気持ちに土足で螏み入るような行為ではないか、そういう、今たでに考えたこずのない感情が滝のように傟れ蟌んだ。

     「はい、花がキレむだず聞いお。」

     取っお付けたような笑いを添えお、それずだけ答えた。

     「そうですか。心がキレむな人なんですね。」

     それは本圓に心から来る蚀葉だった。心を停った答えに察しお来たものだった分、それは䞀厘の隙すらない真実の蚀葉ずなっお私の胞に突き刺さっおきた。真倜䞭の鳥取砂䞘を䞀緒に歩いた友達ず、この片曜根山での青幎を同じような目で芋おいたのかも知れない。圌たちを、仲間に嘘を吐くずこういう気持ちになるのだった。

     片曜根山からの景色はずおも平らに芋えた。穏やかで、静かで、でも心だけは、ずっずざわざわずさざめいおいた。

    ◜ 続 ◜

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