
エアコンとAI
その昔、我々は「住める場所」が気候に決められていた。
面白いのは、エアコンが人間のためには発明されてなかった。1902年、ウィリス・キャリアが作ったのは印刷工場の印刷紙が湿気で伸縮して色がズレるのを防ぐため湿度を安定させる機械だった。
エアコンが壊したのは「その土地の気候が、人間の活動量の上限を決める」という前提。戦後アメリカのサンベルト(フェニックス、ラスベガス、ヒューストン、フロリダ)の人口爆発は、エアコンの普及とほぼ重なる。リー・クアンユーが、熱帯で生産性を成り立たせた最重要の発明としてエアコンを挙げたのも有名な話なのだ。
もはやエアコンがあれば人間は地球上のどこにでも住めるというわけだ。
かくして地図の上の「人がいられる場所」が地球上に広がった。
建築のあり方も大きく変わった。
以前の建物は、建物自身が空調装置になる設計で成り立っていた。深い軒、高い天井、中庭、縁側、通り抜ける風の経路。日本家屋が「夏をむねとすべし」で作られた。
しかしエアコン以後、その必要がなくなったため、建築そのものの考え方が変わった。
密閉したガラスのパネル工法建築が建てられるようになり、エアコンは暖冷房や空気清浄装置として広く簡単に建てられる住居であり、奥行きの深いオフィスフロアも登場、高層ビルも軒並み立ち上がった。
しかし副作用は二つある。
ひとつ、室外機は熱を外に出すので都市全体が暑くなり、もっとエアコンが必要になる。このままでは個々に最適な選択が全体として問題を再生産するループになっていくことになる。
ふたつ、エアコンが止まったら一瞬にして人間のいられる空間は無くなる。
エアコンの普及をAIに置き換えると「環境を快適にコントロールしてくれる」こと
AIは知的労働者にとって必要不可欠なものとして世界中に広がる。
やがて地球上どこでもあらゆる物をAIがコントロールする。
人間が活動できない領域でもAIが代わりに作業するようになる。
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