
「運がいい人」は何が違うのか
──集中の幅と幸運の科学
「あの人は、なぜいつも運がいいのか。」
偶然だろうか。
才能だろうか。
それとも、神様の気まぐれか。
この問いを本気で研究した心理学者がいる。
英ハートフォードシャー大学で研究を行っていた、
心理学者リチャード・ワイズマンだ。
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新聞の実験で明らかになったこと
彼は、
「自分は運がいい」
「自分は運が悪い」
と考えている人たちを集め、
ある課題を出した。
新聞に掲載されている写真の数を数えてください。
単純な作業だ。
ところが、
「運が悪い」と考えている人たちは、
写真を数えるのに平均約2分かかった。
一方、
「運がいい」と考えている人たちは、
わずか数秒で答えにたどり着いた。
なぜか。
新聞の2ページ目に、
大きな文字で、
「数えるのをやめてください。この新聞には43枚の写真があります」
というメッセージが書かれていたからだ。
運がいい人たちは、
それに気づいた。
運が悪い人たちは、
写真を数えることに集中するあまり、
そのメッセージを見落とした。
差は、
知能でも、
視力でもない。
“注意の幅”だった。
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運と、注意の向け方
ワイズマンの研究では、
自分を幸運だと考える人ほど、
偶然の機会に気づき、
それを活かしやすい傾向が示されている。
一方で、
不安や緊張が強くなると、
人の注意は狭くなりやすい。
集中している。
でもそれは、
「一点に縛られた集中」でもある。
視野が狭くなると、
背景が消える。
背景が消れると、
そこにあったはずの選択肢にも、
気づきにくくなる。
そう考えると、
運は単なる偶然だけではなく、
世界に対する“構え”とも関係しているのかもしれない。
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ポジティブな状態は、注意の幅を広げる
さらに興味深い研究がある。
2007年、
トロント大学の研究では、
ポジティブな感情状態にあるとき、
視覚的・概念的な注意の範囲が広がることが示されている。
つまり、
心の状態が変わることで、
普段なら選択されない周辺の情報まで、
処理されやすくなる。
気分は、
単なる気分だけの問題ではない。
私たちが世界のどこに注意を向け、
何を拾うのかにも関係している。
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幸運な人の4原則
ワイズマンは、
長年にわたる研究から、
幸運な人に見られる特徴を
大きく4つにまとめている。
1. 偶然のチャンスをつくり、それに気づく
2. 直感に耳を傾ける
3. 幸運を期待する
4. 不運な出来事の中にも、別の可能性を見いだす
彼らは、
ただ偶然を待っているわけではない。
偶然が起こりやすい状態をつくり、
起きた偶然にも気づいている。
違いは、
能力だけではない。
“構え”なのだと思う。
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運は、降ってくるだけではない
運は、
ただ天から降ってくるものではないのかもしれない。
開かれた注意。
余裕のある状態。
肯定的な期待。
そうしたものが重なったとき、
今まで見えていなかったものが、
見えるようになる。
視野が広がれば、
拾える偶然が増える。
偶然を拾えれば、
選択肢が増える。
選択肢が増えれば、
結果の可能性も変わっていく。
ここからは、
僕自身が身体を見てきて感じていることだ。
僕は、
運というものには、
身体の状態も関係しているのではないかと思っている。
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思い出してほしい。
視野が狭くなるのは、
どんなときだろう。
疲れているとき。
焦っているとき。
怖れているとき。
身体が固まっているとき。
そんなとき、
人は目の前のことに囚われやすくなる。
反対に、
呼吸が戻り、
身体の緊張がほどけると、
少し周りが見えるようになる。
選択肢が増える。
人の言葉が耳に入る。
今まで気づかなかったものに気づく。
だから僕は、
運の問題を、
思考だけの問題だとは考えていない。
あなたが世界をどう見るかだけではなく、
どんな身体で世界を見ているか。
そこにも、
ひとつのヒントがあると思っている。
運を変えたいなら、
無理に幸運を引き寄せようとするより、
まず呼吸を戻してみる。
少し力を抜いて、
視野を広げてみる。
すると、
気づくことがあるかもしれない。
チャンスは、
突然現れたのではない。
もともと、
そこにあったのだと。
注意の幅は、
身体から始まる。