
『落とし物の持ち主』 #拝啓文芸部 #ショートショート
「あのぉ、こんなの落ちてたんですけど」
若い女性が派出所を訪れた。手にはテレビのクイズ番組か何かで使われるような押しボタン装置が載っていた。
「あぁ、またこれですか。最近多いんですよね。ま、預かっておきますけど」
警官が答えた。
女性は自分の名前と住所を書いて去っていった。
「いったいこれ、なんだろうね?」
警官は同僚に問いかけた。
「押したら『ピンポ~ン』って鳴るんじゃないんですか?試しに押してみましょうか?」
同僚の警官が押してみたが、音は鳴らない。
そのころ、ある小国が一瞬で地上から消え去り、大きな穴だけがそこに残された。
「こっちだったら鳴るかな?あれ?やっぱり鳴らないな」
別の国もきのこ雲に消えた。
そこへスーツ姿で金髪の赤いネクタイを締めた恰幅のいい老人が訪ねてきた。
「Excuse me. 落とし物をしたんだが、届いておらんかね。あぁ、それだ。すまんがそれをすぐに私に渡してくれ」
「あ、これですか?これってクイズ番組のあれですよね?『ピンポ~ン』ってやつ。でも音が出ないんですよね」
と警官は押して見せた。老人は真っ蒼になって立ち尽くした。
その瞬間、この国に向けて核弾頭を搭載したミサイルが発射されたのであった。