
真面目に言ってる。
中学生のころ聴いていたラジオでいっとき、変な校則がリスナーから集まっていたことがあった。
どれも面白くて録音したラジオを何度も聴いていたはずなのに、今思い出せるのはこれしかない。
異性の局部を10秒以上凝視してはいけない。
異性の局部を5秒以上夢想してはいけない。
もしかしたら、もう少し違う表現だったかもしれないけれど、概ねこんな感じだった。
真面目に言ってる?
と思う。
*
太郎くんが、飲酒喫煙していた友達と一緒にいたことで学校に呼び出されたことがあった。
ただ、太郎くんは飲酒も喫煙もしておらず、その場にいた友達たちがみなそのことを証言してくれたおかげで停学などにはならずに済んだ。
ただ、学校としても建前上なにもしないというわけにもいかず、呼び出したのだろうと思うがなんとも奇妙なお説教だった。
学年主任の先生と向き合うように、太郎くんと私は座っていた。
「君は酒もタバコもやっていなかったということだが、これからもやらない気か?」
「はい」
「なんでだ?」
「長生きしたいからです」
「そうか。私も酒もタバコもやらないんだ」
「そうなんですか」
「昔はやってたこともあったが、やめたんだ。あんなものはやらない方がいい」
「はい」
「お酒はな、仕事の付き合いで少し飲むことはあるが、少しだ。少しくらないなら、まあいいが、やっぱりあんなのはやらない方がいい」
「はい。そう思います」
なに、このはなし?
私だけがついていけてない?
2人は真面目に見つめ合っている。
思わず吹き出しそうになり、視線を落とした。
酒もタバコもやらない先生のスーツのボタンは、お腹のあたりがはち切れそうになっていた。
*
まだ20代だった頃、仕事中の夫から電話がかかってきた。
「部長と場長ってどっちが偉いんだ!!?」
電話口の夫の声は荒々しかった。
「へ?」と聞き返すと、
「部長と場長ってどっちが偉いんだ!!?」
と、さっきと全く同じことを言ってきた。
聞き取れている。
端から聞き取れているのだ。
聞き取れた上で、意味がわからないのだ。
「ぬぅぁあぁ~」と、聞きようによっては考えてる風の声を出してみた。
「調べて!!」
プッ。
と、電話は切れた。
たまたま一緒にいた母に「部長と場長ってどっちが偉いと思う?」と聞いてみた。
「は?」
と、母は言った。
ですよね。
バカバカしいがGoogleで検索してみようかと思った。
「ぶちょうと」ポチポチ
「じょうちょう」ポチポチ
と、ボタンを押しながら、部長だろうなぁ、と思った。
*
真面目でプライドが高い花ちゃんは、小学校に入ると宿題にバツをつけないでくれと言った。
「✓」の代わりに「☆」をつけた。
それならいい、と花ちゃんは鼻息をフンっとした。
*
私は……私もたぶんある。
大真面目に話しているが、周りから見たら笑ってしまうようなことがきっとある。
あるはずなのに。
今、これ、というものが何ひとつ思い浮かばない。
あ。
ひとつだけ、
昔作った自由律俳句を思い出した。
こだわらないというこだわり
だから、なにと言われると困るのだけど。