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Photo bykeiko0131

僕ちゃん

    どうも。
    「ちょろすさん」と打つとき、「チュロスさん」と、打ってしまわないか毎度ドキドキしている文具です。

    先日、娘が熱を出し小児科に行って参りました。

    小児科に行くといつも思い出す「あぁ、あの時…」と、少しせつなくなる思い出があります。

    言いたくて、言えなかったものというのは、定期的に思い出すせいか、いつまでも忘れられない記憶になるものです。


    それは今から7、8年前、息子がもう高学年になっていたと思います。
    その日の待合室は、珍しく閑散としていて息子と私以外には、3歳くらいの男の子とそのお母さんがいるだけでした。

    私たちは、3列並んだ椅子の端に座り、3歳の男の子とお母さんはキッズスペースの方におられました。

    八畳ほどの待合室の端と端といった距離。

    男の子はごちゃごちゃとしたおもちゃ箱の中から、なにか気に入ったものを見つけたようで、それを手にスマホを眺めているママのもとに近づいていきました。

    「ママー、こえ(これ)なにー?」
    ママはスマホからチラッと視線をずらし、僕ちゃんの手元にある人形を見ました。そして、
    「ウルトラマン…なんとか」
    そう言って、また視線はスマホへ。
    「ママー、こえなにー?」
    なんとかとはなんだ。と、気になる様子の僕ちゃん。
    「ウルトラマンなんとか」
    もはや、見もせず「なんとか」でやり過ごそうとするママさん。
    「ママー、こえなにー?」
    めげない僕ちゃん。
    「ウルトラマンなんとか」
    ぶれないママさん。
    「ママー、こえなにー?」
    ああ、
    行きたい。
    そばに行って言いたい。
    「ママー、こえなにー?」
    僕ちゃん。
    それは、ウルトラマンコスモスルナモードです!

    僕ちゃんのもっているウルトラマンは青い色をしておりました。通常ウルトラマンは赤が主流でございます。
    しかしながら、僕ちゃんのもっているそれは青い。
    明らかにウルトラマンコスモスのルナモードの特徴でございます!!

    「ママー、こえなにー?」
    「ウルトラマンなんとか」

    私がグズグズしている間も、出口の見えない押し問答は続いております。
    ああ、言いたい。
    我慢できず、隣の息子にこう囁きます。

    「ウルトラマンコスモスルナモードだよって言ってきて」
    手持ちのゲームに夢中だった息子が、顔をあげ
    −−マジ?
    という顔をしております。
    こくこく、と頷く私。
    −−無理。
    と、首を振る息子。
    行け!
    と、あごをくいくいする私。
    −−絶対いや!
    と、首を振る息子。
    なぜだ!
    私にウルトラマンのあれこれを教え込んだのは己ではないか!!
    行けっ!!!
    −−い、や、だ!!
    と、
    いけない。こちらでも地獄の押し問答が…

    仕方がないので、別の作戦でいく。

    「あれって、ウルトラマンコスモスルナモードだよね~」
    と、小声で息子に話しかけているていで、チラチラと僕ちゃんを見る。
    「ソウダネー」と、優しい息子は応じてくれる。
    が、

    「ママー、こえなにー?」


    僕ちゃんの声の方が遥かにでかい。
    まったく、届かない。

    行く?行ってしまいましょうか?
    つかつかと僕ちゃんのそばへ近づいて、片膝ついてぐいっと顔を近づけ
    「僕ちゃん、それはウルトラマンコスモスルナモードです」
    と、言ってしまおうか。
    泣く?泣くかしら?
    知らないおばさんがいきなり目の前に現れて呪文のような名前を唱えたら泣いちゃうかしら。
    それは、困る。
    ああ、どうしましょう。

    「ママー、こえなにー?」

    それは、ウルトラマンコスモスルナ…

    「文具さーん。文具太郎さーん。」
    と、息子の名前が呼ばれる。

    診察室へと移動しなければならない。

    「ママー、こえなーにー?」

    ああ、僕ちゃん。
    ごめんなさい。もう、行かなければいけません。
    知っているのに。
    私は、そのウルトラマンの名前を知っているのに。
    知っているのにぃぃぃ。

    と、後ろ髪を引かれまくりながら診察室へと移動しました。


    その後、診察室から出てくると、入れ替わりに僕ちゃんが呼ばれ診察室へ。
    手に、ウルトラマンコスモスルナモードはもういません。
    片付けるように言われたのでしょう。

    その後、会計を済ませ、おそらくその日は予防接種かなにかだったので薬局へは行かず、そのまま帰宅しました。

    僕ちゃんとはそれっきりこれっきり。

    あの小児科もコロナを期に閉院してしまいました。


    僕ちゃん。
    今は、もう大きくなられたであろう僕ちゃん。
    私は今も時々あなたのことを思い出します。
    あの時、勇気がなく答えられなくてごめんなさい。
    私は今でも、時々あなたの声が聴こえる気がするのです。

    「ママー、こえなにー?」

    という、あなたの声が。

    そうして、私は思うのです。

    僕ちゃん。
    それは、ウルトラマンコスモスルナモードです。ウルトラマンコスモスにはルナモード、コロナモード、エクリプスモードという3つの形態がありますが、このウルトラマンコスモスルナモードはもっとも初期の通常モードでございます。心優しきウルトラマンコスモスは争いを好まず、ルナモードの時には太極拳のような動きで荒ぶる怪獣の攻撃を受け流し、決して拳は握らず平手で対峙し、ことを収めるという仏のようなウルトラマンでございます。詳しいですか?ほぼ、ウィキペディアの情報でございます。嘘偽りがあってはいけませんから今調べて参りました。へーそーなんだーやさしーもう一度見直そうかなぁーと、思っております。私が、覚えていたのは青いウルトラマンはウルトラマンコスモスルナモードということぐらいでございます。あと、ウルトラマンコスモスを演じた杉浦太陽は辻ちゃんの旦那さんです。辻ちゃんとは1990年代後半に一世を風靡したモーニング娘。のメンバーです。1990年代後半といえば、忘れられないのは1999年の夏、ノストラダムスの大予言を信じ夏休み中ビッシリと予定を入れて泣きそうになった高2のことですね。どうせ、果たされることはないとすべての誘いにYESと答え地獄をみました。あんなに早く終わってほしいと思った夏休みはありません。あら、あらら、なんの話だったかしら。あ、そうそう、僕ちゃん。僕ちゃん、その後すくすくと大きくなられているのでしょうか。私は今でも、時々あなたのことを思い出します。
    僕ちゃん。

     
     

    文具

     
     
    大したことは書きません。 読んで笑って寝て起きたら忘れてください。 家族に内緒でやってます。 日曜消えがちです。

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