
いつかの日記
〇月✕日 くもり
お母さんに、おつかいをたのまれた。
500円玉と買い物メモをわたされた。
めんどくさかったけど、ジャンバーと長ぐつをはいてげんかんを出たらふかふかの雪がつもっていた。
一歩ふみ出したらズボッとなった。
にぎっていた500円玉をおとした。
500円玉がおちた穴はすぐに雪でふさがって、どこかわからなくなった。
お母さんに言ったら、「探しなさい」とスコップをわたされた。
しょうがないので、おちたあたりをほった。
なかった。
まっすぐおちたはずなのに、おちたところを見てたのに、ほっても出てこなかった。
やけくそであっちもこっちもほった。
なかった。
ないなぁと空を見た。
はいいろのくらい空だった。
どこにもないとお母さんに言ったら、新しい500円玉を渡された。
さっきよりギュッとにぎって買い物に行った。
〇月✕日 くもり
となりの空き地の雪捨て場の坂で、そりすべりをしようと思ってのぼっていたら、雪のかべに小さいトンネルがあった。
入ってみたら、足もとが階段になっていた。
降りていってみると、広場みたいにひらけたところに出た。周りは雪のかべでぐるっと囲まれてる。
そこになぜか小さいソファがあった。
よく見ると雪のかべにくぼみがあって、船の模型が飾られていた。
兄ちゃんのだった。
兄ちゃんが、雪捨て場の坂とゴミ捨て場の間に秘密基地を作っていた。
天才だと思った。
わたしも使おうと思った。
兄ちゃんがわたしの兄ちゃんでよかったと思った。
〇月✕日 晴れ
にちようび、ラーメンの出前がとどいた。
頼んでなかった。
一本むこうの通りにオジさんが住んでいる。
お父さんのアニキだ。
たぶん、そこで頼んだラーメンがうちに届いた。
「食っちまえ」
と、お父さんは言った。
数分後、オジさんがラーメンを取りに来た。
〇月✕日 夕やけ
お母さんにおつかいをたのまれた。
メモと千円もたされた。
いつもの歩いて5分のどんぐりストアに行く。
メモには、「とうふ、みそ、ほうれん草」と書いてある。みっつもあるな、と思う。
お店に入って、とうふとみそとほうれん草を探していたら、お店の電話がリンリンなった。
「はい、どんぐりストア」とおばさんが出て、「あぁ、いるよ。うん、うん、うん、はい、わかりましたー」と電話を切った。
「文具ちゃん、お母さんから!トイレットペーパーもだって!」と、おばさんが言った。
電話でいいなら、メモはいらないんじゃないかと思った。