
しらすチーズトーストを作ったら思い出した、自分のこと
わたしは、5年前まではパン屋だった。
里山の、ポツンと佇む一軒家の一角に場所を作り、菓子製造業の営業許可を取り、小さな小さなパン屋を週に1日。
その頃末っ子はまだ2歳だったので、営業スタイルも小さく小さく始めたパン屋。
そのうち、そのパン屋スペースが意図せずして拡大したので、飲食業の営業許可も追加で取り、小さくカフェのようなことも始めた。
自分の焼いたパンでサンドイッチやチーズトーストを作り、季節のジャムを作り、自分が好きな焼菓子を少し焼いて、お気に入りのコーヒーや紅茶やハーブティー、そして自家製のジンジャエール。
そんな、自分の「好き」を集めた小さな小さなお店だった。
それ以前からずっと、人が集まってほっと一息つける場所を作りたかった。
子どもを持つ母には、そういう場所と時間が必要だと思っていたから。
自分が持つ役割から解放されて「ただの自分」に戻れる時間。
そういう時間がないと、母は自分を見失ってしまう。
自分を見失ってしまうと、夫や子どもに優しくできない。
知識としてそれを知っていたから、身近なところで頑張っている、母である友人たちの力になりたかった。
逆に言えば、母が満たされていると、夫や子どもも安心して暮らせるだろう。
そんな家族が増えれば、世界が平和になっていくだろう。
そう、わたしはこの世を平和にしたいのだ。
そんな壮大な夢を持っている。
だがある時、ふと気づいた。
信念を持ってやっているはずなのに、なぜこんなに苦しいのか。
自分の「好き」を集めて、好きなことをやっているはずなのに、なぜ?
健康にも気を遣っていたはずなのに、病気にもなった。
なぜ?
好きだったはずの小さなパン屋を閉めて、わたしは自分とひたすらに向き合った。
そこでわかったのは、「人のために」ということに囚われて、自分のことが視えていなかった自分だ。
空っぽのコップから水を人にわけてあげることなどできないように、自分のために生きることができていない自分が、人のために尽くすことなどできるわけがなかったということに気がついたのだ。
そこから、いろんな自分を発見した。
それまでのわたしの正解は、社会が良しとしていること、周りから望まれていることだったということに。小さな違和感の積み重ねにより、自分に無理をさせていたことにも。
だから今は、自分の本音にちゃんと聞くようにしている。
「どうしたら、あなたは幸せ?」
世界平和への第一歩。
まずは自分から。