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Yunoa ”us”はビリー・アイリッシュであり、The Beatlesでもある歴史的名曲

    Yunoa(ユノア)というアーティストはご存じだろうか。
    「仮面ライダーゼッツ」の主題歌”VISIONS”でおなじみNAQT VANE。そのツインボーカルの一人であり、2024年にソロデビューしたばかりの新人シンガーがYunoaだ。
    (と訳知り顔に説明しつつ、恥ずかしながらゼッツの主題歌を聴いて初めて彼女たちを知った)

    NAQT VANEは本当にカッコいい。気鋭のプロデューサー澤野弘之氏によるエッジの効いたトラック、Harukaze のパッション溢れる歌声、それと対をなすYunoaのクールなボーカルとラップ。どれもが世界標準の高精度なPOPだ。


    一方でYunoaのソロは、NAQT VANEとは全く違った表情を見せている。
    デビュー曲“Sadless”はダークで憂鬱な、しかしその低めのウィスパー・ボイスが中毒性の高いダンス・ポップ。
    彼女も影響を公言している通り、まさにビリー・アイリッシュを彷彿とさせる曲。
    アンダーグラウンド感のあるビートはピンクパンサレスなどとも近似性を感じさせる。

    歌詞は人間関係の苦しさを歌いつつも、悲痛な心情吐露というよりは、器用に生きられない自分を客観視して自嘲するような倒錯したユーモアとペーソスが感じられる。そこもとてもビリー的だと思った。

    そして今回のメインテーマの”us”。大げさに聞こえてしまうかもしれないが、2024年No. 1と言ってもいいほどの名曲だと思う。

    まずイントロの穏やかなハモンドオルガン風シンセサイザーの伴奏とともにゆっくり始まる歌い出し。前曲とは打って変わってメロディアスかつ伸びやかな声で歌われるAパートだけで温かいトーンに包まれる。
    美しいメロディはビリー・アイリッシュの中でも、現在もグローバルチャートにランクインし続けている”BIRDS OF A FETHER”といった最高クラスの楽曲を連想させる。

    Liveバージョンも最高。

    英詞→日本語詞に切り替わる2番でもその印象はさらに強まり、独特な言葉の乗せ方とよりエモーショナルになる歌唱の相乗効果がさらに曲を飛躍させる。
    打ち込みの低音やリズムの取り方で現代的にアレンジしつつも、アコギのストロークやコーラスの多重録音によるハーモニーなど、根幹のソングライティングはとてもオーセンティック。
    それらはやはりビリー・アイリッシュの特徴でありながらも、ただの模倣、フォロワー的な楽曲ではないことは曲自体の放つ魅力から一目瞭然だ。

    Yunoaの音楽は、ビリーのルーツでもある50〜60年代POP、’70sソウルといった古典音楽からの影響を色濃く受けつつ、彼女自身のパーソナルな体験や心情を通して生まれた生々しい独自性、物語性を纏っている。
    歌詞は決して明るいものではなく、”It’s too hard to believe in their word full of lies”(彼らの嘘に溢れた言葉は信じられない)というサビのフレーズからは、他者を信じることが難しい世界で生きる苦しさが滲む。
    それでもたった一人でも理解し合える相手がいれば生きていける、と彼女は希望を歌う。たとえそれが永遠には続かなくとも、その記憶は消えないはずだと。

    The Beatlesの昨年発表された「新曲」”Now And Then”は、Yunoaの”us”とよく似ている。後期ビートルズ的な力強いウォール・オブ・サウンドで肉付けされていても、芯となっているのはベッドルームで独りきりで歌っているようなジョン・レノンの物憂げな弾き語りだ。


    90年代以降、主に「アンソロジー」シリーズで発表されたビートルズの「新曲」の中でも”Now And Then”はジョンのソロ作に近い、パーソナルで感傷的な雰囲気の強い曲だと思う。
    「もし僕が乗り越えられたら、それは君のおかげなんだ」と歌われる歌詞、そして「時々、君が恋しくなる」というコーラスからは、信頼できる人への感謝とその相手との別離の痛みを感じさせる。
    聴き比べると、”us”と似た雰囲気を感じないだろうか。

    つまり、Yunoaというシンガーはジョン・レノンからビリー・アイリッシュに至る、孤独なベッドルーム・ミュージックの系譜に連なるパーソナルな表現世界を持つシンガー・ソングライターなのだと思う。

    まだ3曲しか発表していない未知数の新人アーティスト。しかしその3曲がどれも確固とした個性と、世代や性別といった境界を超えて心の内側に響かせる力を持っていることは間違いない。
    ビリー・アイリッシュがそうであるように、世界の中に息苦しさを感じながら生きる孤独なリスナーの心に少しでも多く彼女の歌が届いてほしい、と願っている。



     
     

    YHZZZ

     
     
    人生に影響を受けた音楽、映画、本、カルチャーについて書く、内面からの報告書。二児の父。 Good nite, nice dream, and good luck.

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