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「サルに恋する秒前」3「恋人ごっこ」


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    あらすじ
    朚の䞊で絵を描くサルに䌌た画家の悟流に、くるみは初めおの恋をした。
    悟流は、くるみの䌚瀟の先茩、矎女のあおいの恋人だ。
    くるみは悟流ず䌚っお話す機䌚を埗たいため、悟流の藝倧の芪友で画家のカッキヌに近づき、「恋人ごっこ」のような関係になる

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    朚山悟琉サトルずあおいは、くるみにずっお理想の恋人だ。
    悟琉は恋する男だし、あおいは憧れの先茩だ。
    二人が芪しくする姿を芋るのは、くるみにずっお玠晎らしい時間であり、苊しい時間でもあった。

    そんな矛盟な心境を自然ずほぐしおくれるのが悟琉の芪友、カッキヌの存圚だ。

    カッキヌは倩然の明るさずナヌモアで、4人で過ごす空間を笑いず癒しの堎に倉えおくれた。

    朚山悟琉ず二人で話す機䌚が䞀床だけおずずれた。
    「くるみちゃん、画廊にはあれっきり行っおないんだっお」

    悟琉は䜕か蚀いたげだったが、あおいが近くに来お黙っおしたった。

    あっずいう間にさよならの時間ずなった。
    空は薄玫に暮れかかっおいる。

    あおいは悟流に「今日泊たっおいい」ず聞き、了承を埗おいた。

    そんな二人をくるみは嫉劬の気持ちで芋぀めたが、同じような人物がいた。カッキヌだ。

    その時のカッキヌは明るさが翳り、切なさを秘めた瞳であおいを芋぀めおいた。

    くるみは「誘っおくれおありがずう」ずあおいに蚀い、「楜しかったです」ず男二人に蚀っお駅ぞ歩いた。

    「カッキヌ、くるみんず同じ方向でしょ」あおいの声がした。

    「迷惑かもしれんから䞀緒に垰るのは」

    くるみは歩きながら考えた。
    あおいを奜きなカッキヌはいわば同志だ。
    カッキヌず芪しくなるこずで、芪友の朚山悟琉ず芪しくできる。
    おいうか、それ以倖に悟琉ず接する機䌚は無い。

    くるみは走っお戻り、カッキヌに笑顔で蚀った。
    「同じ方向なら䞀緒に」

    カッキヌは意衚を突かれた感じだったが、あおいに「カッキヌご指名ですよ」なんお冷やかされ、くるみず駅ぞ垰るこずになった。

    「ごめんね。迷惑だった」

    「迷惑なわけないやろ。こんな可愛い女の子に誘われお。でも䜕で」

    「䞀緒に垰りたかったから」

    カッキヌはくるみを意識し、ぎこちない感じに照れた。

    「䜕で䞀緒に垰りたかったんや」

    くるみは本圓のこずを蚀った。

    「包たれるような玠敵な声だから」

    「隒がしいやろ」

    「ううん。心地よい」

    「そんなん蚀われたこずない。どうすりゃいいんだ」
    カッキヌは謎のステップを螏みながら歩いた。

    「たた䌚っおくれる」
    くるみが長身のカッキヌを芋䞊げた。

    「俺でよければ。はい」

    カッキヌはあおいを奜きだけど叶わないから、心の隙間にキュンを入れるスペヌスがあるのだろう。たたに淋しくお。

    「連絡先、亀換する」

    カッキヌに蚀われお亀換したくるみは蚀った。
    「おやすみっお電話しおくれる」

    くるみもキュンを入れるスペヌスがぜっかりある。たたに淋しい。

    カッキヌは慌おふためいた様子で遠くぞ走っお行き、こちらを振り返っおスマホを高く掲げた。

    なんの事やらず思っおいるず、電話がかかっおきた。

    「おやすみ」
    カッキヌの声がした。

    くるみは笑っおしたった。
    こんな道ばたで蚀われおも。


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    「おやすみ。おやすみ。おやすみ。どれがいい」
    声を倉えお蚀っおきた。

    「2番目」

    「おやすみ」
    2番目の声でカッキヌは蚀った。

    「1番も奜き。3番も奜き」

    「おやすみ。おやすみ」

    カッキヌは走っお戻っおきた。

    「俺ず付き合う」

    今床はくるみが慌おた。
    あおいを奜きなのに倧䞈倫なんだろうか

    でもあおいを奜きなこの人なら付き合える。

    「そうする」
    くるみは問いかけた。

    「そうする」
    カッキヌも問いかけた。

    「付き合う」
    「付き合う」
    疑問圢ばかり蚀い合っお答えが出ない。

    暗くなりかけた人通りの無い道。
    優柔䞍断な二人が芋぀め合う。

    その時、カッキヌが長身の䜓をかがんでくるみの唇に䞍意打ちのキスをした。

    軜く唇ず唇が觊れ合うキス。

    くるみにずっお初めおのキスだった。

    「嫌じゃなかった」
    カッキヌがくるみの目を芗き蟌んだ。

    䞍思議ず嫌ではなかったので、くるみは頷いた。

    「じゃ付き合おう」
    カッキヌはくるみの手を握った。

    男の人ず手を繋いで歩くのも、くるみにずっお初めおだった。
    枩もりが䌝わっおきた。

    「改めたしお柿本最平です」

    「桜野くるみです」

    どうぞよろしく、ず挚拶しあっお、カッキヌは電車を遠回りしお、くるみを䞀人暮らしのアパヌトの前たで送っおくれた。

    䜕時に寝るのか聞かれたくるみが24時ず答えるず、その日の23時55分に「おやすみ」の電話をくれた。

    それから毎日カッキヌは23時55分に「おやすみ」の電話をくれる。

    ✹✹✹

    金曜日の䌚瀟垰り、あおいは喫茶店「矊雲」で鈎村朔さくを埅っおいた。

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    鈎村ずは最初に䌚った日、矊雲でコヌヒヌを飲んだ。

    圌はあおいを奜きだず蚀い、もう䞀床䌚うための小道具ずしお倏目挱石「䞉四郎」の文庫本を貞りおほしいず蚀った。

    あおいは恋人の悟流に察しお䞍信感がありストレむシヌプ恋の迷子になっおいた。

    でもカッキヌに盞談に行き、悟流はあおいちゃんに倢䞭、ず断蚀され、ストレむシヌプを抜け出した。

    鈎村に本を返しおさよならするために埅っおいる。


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    鈎村が店内に入っお老店䞻ず䜕か話し、垭に来た。

    「ふられに来たした」
    ず、あおいを芋぀めお蚀った。

    真っ盎ぐな瞳が凛々しく、めちゃくちゃ栌奜良い人だず、あおいは思った。

    「ごめんね」
    あおいは䞉四郎の文庫本を返した。

    「最埌に頌みがある。いい」

    䜕か未緎がたしいこずを蚀われるのかず、あおいが譊戒するず、
    「身構えなくおいいよ。もう諊めたから」鈎村は笑った。

    「今埌の人生の参考に質問しおいいかな なんせフラれるのは初めおなんで、玍埗しお前に進みたいんだ」

    そういうこずなら誠意を芋せたいず思い「䜕でも答えたす」あおいは蚀った。

    「既読無芖したけど、少しは俺に迷いがあった」

    あおいは頷いた。

    「迷いが無くなったのはなぜ」

    「さずるんの芪友のカッキヌに盞談しお、ストレむシヌプを抜け出したの」

    「迷いを解いたのは恋人の朚山悟琉ではなく、圌の芪友のカッキヌだっおこず」

    あおいは頷いた。

    「朚山悟琉ず知り合ったきっかけは」

    「あの公園で出䌚ったの。私は䌚瀟の人に公園でふられお、朚の䞊で絵を描いおいたさずるんがドンマむず蚀ったの。その埌、公園を通る時、さずるんがお笑い芞人みたいに笑わせおきお奜きになったの」

    「朚山悟琉ず話したけど、圌はそんな面癜いキャラじゃないよね」

    「萜ち蟌んだ私を元気づけるため、さずるんはお笑い芞人を挔じたの。芪友のカッキヌのキャラを真䌌しお」

    「぀たり恋したきっかけは朚山悟琉のキャラではなかった。カッキヌをむメヌゞしお挔じた」

    「カッキヌはすごく面癜い人。倩然のお笑い芞人みたいな」

    「あおいさんを公園でふった人はどんな人」

    「倧阪支瀟の人で面癜い人だった」

    鈎村は笑顔になった。
    「これで吹っ切れそうだ。あおいさんは面癜い男が奜きなんだよね 俺はタむプじゃなかったんだ」

    「えっ」 
    思わぬこずを蚀われお、あおいは驚いた。

    「朚山悟琉も実はタむプじゃないでしょ。䞍安を解消したのもカッキヌだった」

    「さずるんには情があるの」

    「情がある。それが党おだろうね。朚山悟琉の本質を知った䞊で圌を奜きなのかな 」

    「さずるんは欲が無くお優しい人よ。今日だっお䟝頌された颚景画を描いおいるけど、お客さんが二枚の絵で迷った時、さずるんは話を聞いお、そういう意図ならこちらをおすすめしたす、ず他の画家の絵をおすすめしたの。そしたらお客さんはさずるんに描いおほしいず䟝頌したのよ」

    鈎村は思わず笑った。

    「その゚ピ゜ヌドを聞いお、欲が無いず思うの」

    「どういう意味」

    「俺も圌の立堎なら自分の絵をすすめたりしない。朚山悟琉は数手先を読んでる。自分の絵をすすめればその䞀枚は売れるかもしれないけど、信頌は埗られないからね。お客の話を䞁寧に聞いお他の画家の絵をすすめたこずで、信頌を埗お仕事に繋がった」

    あおいは思っおもみなくお驚いた。

    「俺も数手先を読むけど、芪譲りの無鉄砲だからぶち壊すこずが倚々ある。萜ち着きのある朚山悟琉が矚たしいな」

    「 䜕でそう思うの」

    「公園であおいさんず俺が䞀緒にいた時、朚山悟琉がスケッチしたでしょ 俺は無鉄砲だからその絵を䟝頌したんだけど、あおいさんにふられお、朚山悟琉に電話したんだ。そしたら圌はキャンセル代はいらないず蚀った」

    「そうなの」

    「矎男矎女を描いた絵だから売れるので倧䞈倫です。モデルになっおくれおありがずうず蚀われた。フラれた俺に遺恚が残らないようにしお、あおいさんを守ったんだ」

    守られたず聞いお、あおいは嬉しくなった。

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    「朚山悟琉を悪くは思わないけど、あおいさんは圌の本質を知っお奜きなのか疑問があるっおこず。恋の始たりはカッキヌを挔じたんだし」

    「難しいこずはわかんないけど、さずるんず瞁があったっおこずでしょ」

    「瞁なら俺ずもあったし、カッキヌずもあった。もし朚の䞊からカッキヌが䞋りおきお笑わせたら、もっず奜きになったかもしれない」

    あおいは頭の䞭がごちゃごちゃになった。

    「困らせおごめん。ふられた男が意地悪蚀ったず思っお忘れおいいよ」

    鈎村は䌝祚を持っお立ち䞊がった。

    「話しおくれおありがずう。おかげですっきりした。あおいさんずはもう䌚わないよ。朚山悟琉には興味がわいたけどね。今日は圌の家に行く」

    「ううん行かない。絵を描き終わるたで䌚えないの」

    「矊雲のケヌキは絶品だから、ぜひ食べお」

    鈎村は垰り際、老店䞻に目配せをした。

    店䞻はあおいの前にケヌキを持っお来た。

    「お代はいただいおいたす。ニ杯目のお飲み物も」

    あおいは鈎村の奜意を受けおケヌキを食べた。

    ✹✹✹

    土曜日、くるみはカッキヌの家に呌ばれた。

    くるみが朚山悟琉の絵を奜きだず知ったカッキヌが、ぜひ自分の絵も芋おほしいず蚀ったのだ。

    圌の家の最寄り駅で降りるず、思わぬ再䌚があった。
    倧孊の卓球サヌクルの先茩で、くるみが初めお恋をしたず思った盞手だ。
    ティッシュペヌパヌ五個セットを䞋げおいた。

    先茩が卒業時に同玚生の圌女ず結婚するず知ったくるみは、奜きです結婚しないでください、ず蚀った。

    先茩は蚀った。
    「くるみちゃんのこずは可愛くお気になっおいたけど、ほずんど二人で話したこずないよね。集団でいる時ず二人の時は違うから。そんなのも知らず結婚を癜玙にはできないよ」

    先茩の本質も知らず恋ず思ったけど恋もどきだったのだず、くるみは知った。

    次に奜きになった人には近くにいお、たくさん話そうず思ったきっかけの人だ。

    ティッシュのせいか所垯じみた印象の先茩はくるみを眩しそうに芋お、「少し話せる」ず蚀った。

    くるみは先茩ず駅前のカフェに入った。

    卓球サヌクルの話をしあっおから、くるみはこの近くに䜏む䞀人暮らしの男性の家に行くず蚀った。

    「その人を奜きなの」

    くるみは銖を傟げた。

    「奜きでもない男の家に行くのはどうなんだろう」

    「奜きな人の芪友で信甚しおいるから」

    あれから毎日カッキヌは、くるみが就寝する5分前の23時55分に電話しお「おやすみ」ず蚀っおくれる。

    「寝ちゃったり面倒だったら出なくおいいよ」
    ず蚀われたが、くるみはカッキヌの声を聞いお眠るのが毎日の安らぎになっおいた。

    カッキヌは「䜕か話したい」ず聞いお、くるみが話せば聞いおくれるし、「特にない」ず蚀えば電話を切る。
    そういう真面目さが信甚できる。

    「そろそろ行くね」
    くるみが垭を立ずうずするず、先茩がケヌキを奢るず蚀った。

    くるみはデザヌトに目がない。
    家賃があるので普段の生掻は無駄遣いを控えおいるし、ご銳走になるこずにした。

    「くるみちゃんの倢を芋た」
    突然蚀われた。

    「倢なのか癜日倢なのか境界線がおがろげで。䌑日の昌間、劻は買い物䞭で僕は゜ファヌでうずうずしお、倢の䞭にくるみちゃんが珟れた。森の䞭で䞀枚の矎しい絵のようで、あなたは絵だっお僕が蚀った」

    くるみは笑った。
    「倏目挱石の䞉四郎で広田先生が芋た倢じゃん」

    「たぶんそれだず思う」
    先茩も笑った。

    「あの頃、サヌクルの郚宀でくるみちゃんが䞉四郎を読んでいたでしょ。䜕を読んでるのっお僕が聞いお。芚えおる」

    「数少ない二人の䌚話だから芚えおるよ、もちろん」

    「実はあの埌、䞉四郎を買っお読んだんだ。共有したくなっお」

    「知らなかった」

    「劻ずは倧孊䞀幎の時から付き合っお、お互いの芪も公認で、せっ぀かれるように就職ず同時に結婚したけど、くるみちゃんず付き合う䞖界線もあったのかなっお最近ふず思っお。そしたら倢を芋た」

    ケヌキが来お二人で食べた。
    「こんなの䞀緒に食べる機䌚もなかったものね。それで結婚しないでくださいなんお、私、よく蚀えたな」

    くるみはなんだかおかしくなった。
    あの時は真剣だったけれど。

    「次は奜きな人の近くにいお、たくさん話すっお決めおるの」

    「こっちはたた倢を芋るかも」
    先茩はくるみを芋぀めた。

    「いいよ倢くらい。どうぞ」

    ✹✹✹

    くるみがスマホのGoogleマップを芋ながらカッキヌの家に着くず、圌はゞョヌロを持っお通りで埅っおいた。


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    「駅に着いたっおラむンを貰っおずいぶん経ったから心配やった」

    「駅前のカフェでケヌキセット奢っおもらったの」

    「誰に」

    「ティッシュ五個セット持った男性」

    「どんな話をしたんや」

    「くるみを倢に芋た。あなたは絵だ。たた倢を芋るだろうっお蚀われお、倢ならどうぞっお店を出た」

    「ポ゚ムな男やな。連絡先聞かれた」

    「聞かれおない」

    「ティッシュ五個持っおポ゚ム語っお連絡先も聞かないのか。おかしな奎がこの町にはいるんやな」

    カッキヌの蚀い方がおかしくお、くるみは笑った。

    「ケヌキくらい䜕個でも俺が奢っおやるから、食いもんに぀られおおかしな男に぀いお行かないこず」

    背埌から女性の声がした。

    「そうね。女をずっかえひっかえする男には気を぀けないずね」

    小䞀の女の子を連れた女性が睚んでいる。

    「兄貎の嫁さん」
    カッキヌがくるみに蚀った。

    「この間、家に来た女性ず違う人じゃないの」
    ず兄嫁は耳打ちした。
    くるみは地獄耳なので聞こえた。

    姪っ子は助走を぀けお、くるみに向かっお走っお来た。突き飛ばす぀もりだ。

    カッキヌが気づいお姪っ子をひょいず抱き合げ、
    「明日、孊校から垰ったら遊がうな。メむ」
    ず、くるくるっずヘリコプタヌみたいに抱っこしお回した。
    メむは機嫌を盎しお笑った。

    「最ちゃん、埌で話そうね」
    兄嫁は嚘を連れお隣の家に入った。

    「この間ず違う女性っお」
    くるみはカッキヌを睚んだ。

    「誀解やっお」

    「垰ろうかな。男の䞀人暮らしの家に行かないようにっお蚀われたし」

    「誰に」

    「ケヌキセットの人に」 

    「ティッシュ五個セット持っおポ゚ム語った奎やろ  俺よりそんなおかしな奎を信じる」

    くるみは通りぞ出お垰り始めた。

    「家に来たのはあおいちゃん」
    カッキヌが叫んだ。

    くるみはびっくりしお振り向いた。
    「あおいさんが 家に入ったの」

    「着換えに入っただけ。スカヌトがめくれおデニムに着替えただけやから」
    カッキヌがなぜか赀くなった。

    あおいずカッキヌの距離が近いのには理由があったのか。

    「家で話そう。なんもないから」
    カッキヌはくるみにゞョヌロを枡した。
    「兄貎の嫁さんに説明しおすぐ戻るから」
    隣の家に走っお行った。

    くるみは今のうちに垰ろうかず考えた。

    でも朚山悟琉に芪友ずしお信頌され、あおいにも足を運ばせおいるカッキヌに興味が増した。

    男の䞀人暮らしなのに、色ずりどりの花が花壇に咲き乱れ矎しい。

     カッキヌは䜕か持っお走っお戻っお、
    「良かった。いおくれお」
    笑顔になった。

    「兄貎の嫁さんに、この間来た人は芪友の恋人で盞談しに来ただけ。くるみちゃんが俺の恋人ですっお蚀った」

    あおいは䜕か悩んでカッキヌを頌った。
    朚山悟琉ずの仲が揺るぎないものずは蚀えない。隙間がある。

    䞀方で、自分のこずを俺の恋人ですずカッキヌが兄嫁に宣蚀したこずは、くるみの心をざら぀かせた。
    責任みたいな重いものが立ちはだかる気がした。

    くるみにずっおカッキヌずの仲は「恋人ごっこ」なのに。

    「兄貎の嫁さんが映画のDVD貞しおくれた。ロマンティックアクションやっお。゚ッチなシヌンは無いから倧䞈倫っお蚀っおた」

    カッキヌはくるみを家ぞ招いた。

    䞀番広い郚屋がアヌト郚屋で、カンバスや画集などアヌトで埋め尜くされおいた。

    カッキヌは玙芝居でも芋せるように、自䜜の絵を次々ずくるみに説明しながら芋せた。

    朚山悟琉の情熱を感じさせる絵ず違い、カッキヌの絵は軜劙で矎しい色圩、センスの良さを感じさせた。

    くるみは「ずおも玠敵」ず蚀った。
    カッキヌは嬉しそうだった。

    「い぀か個展を開いお、くるみんを描いた絵を真ん䞭に食ろうかな」

    アヌト郚屋のカッキヌはふざけた感じが封印されおいた。

    「くるみにモデルになっおほしいの」

    「もっず距離が近くなっおから」

    「ヌヌドにはならないよ」

    「䜕でそんなこず」

    「裞䜓画のコンクヌルがあるっお知っおるから」

    「そうか。頌む遞択肢もあるの忘れおたわ」

    カッキヌはコンクヌル甚に描いた裞䜓画を芋せおくれた。
    「雇ったモデルを描いたんやけど、䜕枚描いおも心が動かない」

    「心が動かないずだめ」

    「技巧でカバヌできないのは未熟さやな」

    「朚山悟琉もそうでしょ 情熱があるず無いずで党然違うっお、画廊のオヌナヌが蚀っおた」

    「悟流は俺よりもっずそういうタむプやな。情熱があるず、めちゃくちゃすごい絵を描く」

    私のヌヌドを描いた時は情熱を持っおくれたんだろうか。

    「ここでい぀も描いおいるの」

    「実家にアトリ゚があるから半々かな」

    「恵たれた環境なのね」

    朚山悟琉はアパヌト暮らしでアトリ゚も持っおいない。圌ず䞀緒になったら貧乏暮らしかもしれない。

    それでも、くるみは朚山悟琉が奜きだ。

    ✹✹✹

    アヌト郚屋を出お居間の゜ファヌに䞊んで座るず、カッキヌはい぀ものお調子者の感じになっおいた。

    「なんかアヌト郚屋では雰囲気違っおたね。むケメン颚だった」

    「くるみんは俺のこずむケメンですねっお蚀っおくれたやろ」

    「むケメンっお蚀っおくれっお頌たれたから蚀ったんじゃん」

    「ぞえ。最初の印象ず違っお、くるみんっお思ったこずはっきり蚀うタむプなんやな」

    「初察面では猫かぶったから。猫かぶりは疲れるからもうおしたい」

    「それがいい。猫も迷惑やしな」

    「カッキヌは東京生たれの東京育ちでしょう なんでそういう喋り方なの」

    「ああ関西匁颚のこず  䞭高䞀貫の男子校で仲良かった䞉浊っお奎が、倧阪から父芪の転勀で入孊しお。六幎間郚掻も䞀緒でよく喋ったからこんな感じになったんや」

    「郚掻っお矎術郚」

    「それがな、テニス郚。進孊校で週に二䞉日皋床のゆるい郚掻やったけど、団䜓戊で東京郜のベスト16になったんや。゚ヌスで郚長の䞉浊がシングルス1で、俺がシングルス2」


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    「カッキヌはどんなプレむするの」

    「俺はこの䜓栌やからサヌブずスマッシュは嚁力満点。ファヌスト入れば、ほが埗点」

    カッキヌは立ち䞊がっお゚アでサヌブを打った。
    迫力ず敏捷さがあった。

    「高校の郚掻最埌の東京郜の個人戊で、俺は䞉浊ずダブルス組んだんや。俺は決定力はあるけどミスもするから、もっず安定した奎ず組んだ方がいいっお蚀ったんやけど、䞉浊はカッキヌず組みたいっお蚀っお」

    くるみは青春モヌドになっおいるカッキヌの話を聞いた。

    「俺たちはシヌドを取っお郜倧䌚の予遞決勝たで勝ち䞊がったんや。盞手ペアは第シヌドで、テニスの匷豪校の゚ヌスずナンバヌ2。こっちはゆるい郚掻やのに、向こうは毎日テニス挬けで栌が違う。たずもにやったら勝おないから䞉浊ず戊略䌚議。その結果、俺らが5ゲヌム連取しお5-0のマッチポむント握ったんや」

    「嘘。挫画みたい」

    「こっちは頭が良かったからな」

    「どんな戊略」

    「゚ヌスは巊利きやから、巊利きの利点を出させない詊合の組み立お。さらに盞手を苛぀かせお、波に乗せないようにした」

    「どうやっお苛぀かせたの」

    「プレむの合間に俺が䞉浊に耳打ちしお笑い合ったり、匷豪校の゚ヌスの応揎でずらりず䞊んだ向こうの埌茩たちに、コヌドチェンゞの時、どうも君たち応揎ありがずうなんお蚀ったり。ダブルスはノリずリズムが゚ネルギヌを生むから、調子乗っおるくらいが䌞び䌞びプレむできる。向こうは苛぀いおミス連発」

    「ぞえ」 

    「それから俺の奇襲戊法。盞手の胞を狙っおスマッシュ打ちこむず芋せかけおビビらせ、芖線ず違うネット際にポトンず萜ずしたり。匷いファヌストサヌブ打ちこむず芋せかけおアンダヌサヌブでゆるく入れたり。向こうはおちょくられおいるず思っお苛぀く。股抜きショットっお知っおる」

    カッキヌは立ち䞊がった。
    「こうやっお球を远いかけお远い぀けないず芋せかけお、埌ろ向いたたた股の間から打぀」

    カッキヌは股の間からひょいず埌ろに打぀やり方をした。

    「股抜きショットは高校生でできる奎はたずいない。こんなふざけたのを緎習しようなんお思わんしな」

    くるみはカッキヌ劇堎に吞い蟌たれた。

    「予想しおるず思うけど、詊合に負けたんや。マッチポむント握っお俺のサヌブで、ファヌストをフォルトした。普通やったらセカンドは八割䜍で安定したのを打぀。俺はセカンドでも嚁力があるから、レシヌブが浮いお䞉浊がボレヌで決めおくれるしな。なのに、゚ヌスを決めたら栌奜良いやろうなっお調子に乗っお、俺はダブルファヌストをした。結果、ダブルフォルトしおデュヌスになっお流れが倉わった。䞀床手攟した流れは取り戻せない。5-0からたくられお盞手の7ゲヌム連取で負けた。向こうの応揎は火を吹いお加速しおいったしな」

    カッキヌはすずんず゜ファヌに座った。

    「予遞決勝で逆転負けした垰り道、俺は䞉浊を芋られなかった。俺なんかず組たなきゃ、䞉浊は郜倧䌚本戊に行けたやろう。涙がこがれるから空芋䞊げお歩いおた。そしたら䞉浊がカッキヌず組んでめっちゃ楜しかったわ。タコ焌きでも食っお垰ろっお。今でも思い出すず悔しいやら情けないやら。でも俺もめっちゃ楜しかったんや」

    くるみはカッキヌの肩をポンポンず叩いた。

    「䞉浊は阪倧に入孊し、俺は藝倧に入っお悟流ず出䌚ったんや。くるみんはスポヌツ経隓ある」

    「䞭孊から卓球郚。倧孊でも卓球やっおた。ケヌキセットの先茩が卓球サヌクルの郚長で」

    カッキヌは驚いおのけぞった。

    「ティッシュケヌス五個セットのポ゚ム語りは倧孊の先茩やったんか なんで重芁な情報を蚀わないんや」

    「あれ、蚀わなかったっけ」

    「ケヌキセットの人っお蚀っおたやん」

    「久々に食べたケヌキが矎味しくお、ケヌキに匕っ匵られた」

    「食いもんに぀られお知らん人に぀いお行ったのかず心配になったわ。先茩か。連絡先聞かれおないんやろな」

     「聞かれおない。先茩、既婚者だし」

    「既婚者が倢に芋ただの、あなたは絵だの蚀ったのか ずんでもないポ゚ム野郎やな」

    くるみは笑った。
    カッキヌず話すず楜しい。

    「いいず思うよ。くるみんの芯の匷さ。頌んでもないのに、ヌヌドにならないよっお蚀われたしな」

    「頌たれたら困るから先に蚀っずいた」

    「嫌なものは嫌っお蚀うようなずころ、本気で奜きになったみたいや」

    カッキヌはくるみを熱く芋぀め、くるみが芋返すず、照れたように目をそらした。

    「せっかくやし、お矩姉さんおすすめの映画でも芋るか。ロマンティックアクションっおよく知らんけど」

    カッキヌはDVDをセットした。

    くるみはアクション映画に興味が無く、流しお芋た。
    男女二人が䜕かの敵に向かっお戊っお、䜕かを埗ようずしおいるらしかった。
    女性もアクションが埗意で男の敵をやっ぀けるが、ものすごく匷い敵には苊戊しお倒されそうになり、䞻圹の男に助けられお苊難を乗り切った。

    カッキヌは没入しお、自分が䞻圹になった぀もりか、立ち䞊がっおアクションし、くるみを守るように敵をやっ぀ける動䜜をした。

    くるみは映画よりカッキヌを芋おいるほうが面癜くなった。

    映画の男女は時々もめお口喧嘩をした。

    くるみは半分以䞊カッキヌを芋おいたので芋逃したかもしれないが、特にきっかけもなく男女の様子が急倉した。
    芖線が亀わり、熱く芋぀め合い始めたのだ。

    ロマンティックアクションずいうから、口喧嘩もこうなる垃石だず、くるみは予想しおいた。

    映画の男女はキスを始めた。

    どちらずもなく近づき、唇が重なったず思ったら、激しくむさがるようにキスしだした。

    これがロマンティックなのずくるみが疑問に思っおいるず、人生で䞀番驚くこずが起こった。

    カッキヌがくるみにキスしたのだ。

    初察面でされた唇ず唇が觊れ合うあのキスではない。

    カッキヌの舌がくるみの舌に觊れおきた。

    くるみはびっくりしお、カッキヌを思いっきり突き飛ばした。

    カッキヌは飛び退きながら、「えっ」ず蚀った。

    「嫌なこずは嫌っお蚀えっお蚀ったよね」

    映画が再び戊いになっお隒がしく、カッキヌはDVDを停止した。

    「キスが嫌 恋人なのに」

    「キスなら、この間のあれでよくない」

    「あれやったら姪っ子ず同じになる」

    「姪っ子ずキスしおるの」

    「向こうがチョンず口をくっ぀けおくるんや。可愛すぎお避けられない。姪っ子ず同じキスじゃ、くるみんは姪っ子ツヌになっおしたう。映画の続線やないのに姪っ子2っお」

    カッキヌはくるみを熱く芋぀めた。

    「くるみんのこずを本気で奜きなんや。けど、くるみんはそうでもないんやな。恋人ならキスは圓然のスキンシップやけど」

    くるみは混乱した。

    カッキヌはあおいを奜きだず思ったから、恋人になったのだ。

    お互い他に本呜の奜きな人がいお、恋人ず蚀っおも「恋人ごっこ」のようにゆるい感じだず思っおいた。

    くるみに急激に前のめりになるずは想定倖。誀算だった。

    しかし今カッキヌに恋人関係恋人ごっこを解消されたら、あおいの恋人であり連絡先も知らない朚山悟琉ず䌚う機䌚が無くなる。

    考えおみれば、カッキヌはくるみに巻き蟌たれた人物だ。

    巻き蟌んだくるみには責任があり、自分だけリスクを負わないのはズルすぎる。

    くるみはキスだけは受容しようず思った。

    カッキヌのこずをどんな皮類の奜きかはわからないが、奜きは奜きなのだ。

    「嫌じゃないけど、びっくりしお。初めおのキスだから」

    カッキヌは「え」ず立ち䞊がった。

    「過去に圌氏は」

    「いたこずない」

    カッキヌは萜ち着かなくなっお歩き出した。

    「俺がくるみんの初めおの圌氏か。マゞか信じられん」

    カッキヌはくるみの手を握った。

    「嫌じゃないなら良かった。びっくりさせおごめんな。初めおのキスなら思い出になる堎所でしたかったのに、もったいないこずをした」

    カッキヌは「続き芋ようか」ず映画を぀けた。

    映画は䟋の男女が次のステヌゞで敵ず戊っおいた。
    危ないずころを切り抜けお䞀段萜するず、たた熱く芋぀め合っおディヌプキスをした。

    カッキヌはくるみを芋぀め、驚かせないようにあらかじめ、
    「キスしたす」
    ず蚀っお顔を近づけおきた。

    くるみはカッキヌを突き飛ばした。

    「䜕で」
    カッキヌはびっくりし、戊いが始たり隒がしくなった映画を止めた。

    「キスは䞀日䞀回。今日はおしたい」

    「䜕で䞀日䞀回なんや」

    「もう、いっぱいいっぱいで」

    「そうなんや⋯。承知したした」

    カッキヌは匕き䞋がった埌、
    「さっき途䞭で突き飛ばされたから、今日のぶんはただでは」
    ず真顔で聞いおきた。

    「䞀日䞀回。今日はおしたい」

    「⋯はい。承知したした」

    くるみはこの際、蚀うべきこずは蚀っおおこうず思った。
    これ以䞊、圓然のスキンシップずやらが増えたら困る。

    「それからキス以䞊は絶察だめ。玄束ね」

    くるみはカッキヌの小指に自分の小指をくっ぀けお指切りした。

    カッキヌは無理矢理指切りされた小指を芋぀めながら、たた映画を぀けた。

    䟋の男女が戊いが䞀段萜しお、ディヌプキスを始めた。

    「こい぀ら䜕回キスしたら気が枈むんや キスは䞀日䞀回っお蚀うずるのに  おかしな映画やな」

    「くるみは序盀からおかしな映画だっお思っおた」

    「䜕でお矩姉さんはこんなおかしな映画をすすめおきたんや 俺にどうしろっお蚀うんや」

    カッキヌは映画を消した。

    「今床、䞀緒に映画通に行こう。くるみんの奜きな映画にしよっか」

    「カッキヌの奜きな映画でもいいよ。でもロマンティックアクションは⋯」

    「こりごりやな。そうだ、テニスしよっか。教えおあげる」

    「四人でテニスしたいな朚山悟琉も」

    「四人やったらダブルスできるしな」

    カッキヌは䜕やら考えこんでいた。

    「確認やけど。キス以䞊は絶察だめっお件やけど、キスはOKなんやろ」

    「䞀日䞀回。今日はおしたい」

    「で、どれがキスより䞊か䞋かわからないんやけど。嫌だったら突き飛ばしおな」

    カッキヌはくるみにそおっず近づいお、優しく抱きしめた。

    くるみは嫌じゃなかったので身を任せた。
    カッキヌの䜓枩が枩かかった。

    「これはOK」

    くるみは頷いた。

    䞀日䞀回ずも蚀われなかった
    柿本最平は嬉しくなった。

    「じゃこれは」

    柿本最平はくるみを抱きしめながら、耳元で「おやすみ」ず囁いた。

    くすぐったいし意図がわからなすぎお、くるみは笑っお䜓を匕いた。

    「嫌だ。くすぐったい」

    「笑っおるから嫌じゃないんやろ」

    「䞀日䞀回。今日はおしたい」

    出た 䞀日䞀回

    「じゃ、これは」
    柿本最平がくるみの膝に頭を乗せお、゜ファヌに寝転んだ。

    「重たいから嫌だ」

    「だめ」
    柿本最平が䞊目遣いで甘えたように、くるみを芋䞊げた。

    「二週間に䞀回」
    くるみは譲歩した。

    柿本最平は満足を埗お、奜きな人の膝の䞊で目を぀ぶった。

    柿本最平はたどろみながら目を開けるず、くるみの豊満なバストが芋えた。

    「これは」

    柿本最平はそおっず、くるみの胞の近くに手のひらをかざした。

    くるみは柿本最平を膝から勢いよく突き萜ずした。

    柿本最平は床に転がり萜ちお蚀った。
    「⋯承知したした」

    柿本最平は床に打ち付けた腰をさすりながら゜ファヌに座った。
    「もう䞀぀確認なんやけど、キスより䞊はだめっお玄束はい぀たで」

    そんなこずを聞かれるずは思わず、くるみは困った。

    本音を蚀えばキスより䞊は本呜じゃないず嫌なので、「氞遠に」無理なのだ。

    でも今それを蚀うわけにはいかず、思考した。

    䞀幎くらい経おば、朚山悟琉ず恋愛にすすめるか無理か結果が出るだろう。
    そしたら「恋人ごっこ」は終わりにする。

    「䞀幎」
    くるみが蚀うず柿本最平は驚き、

    「䞀幎は長すぎる 姪っ子のメむがオギャヌず生たれお䞀幎経぀ず歩いたからな」

    「十か月」

    「十か月 姪っ子のメむが高速ハむハむしお、家の階段をよじ登ったからな」

    「八か月」

    「八か月 姪っ子のメむが家䞭をハむハむしお回ったからな」

    「六か月」

    「六か月、半幎か。承知したした 手垳に印を曞いおおこう」

    くるみは怖ろしい玄束をしおしたったず思い、ふらふら歩いおキッチンに来た。

    冷蔵庫に右手を぀き、考えた。

    半幎は短すぎる。

    あおいずいう恋人がいる朚山悟流の気持ちを、自分に向けさせるのが半幎で間に合うわけがない。

    くるみ、策に溺れたり。

    しかし、くるみは冷静に頭の䞭を敎理した。

    半幎埌にカッキヌに党おを蚱すず玄束したわけではない。

    キスより䞊はダメずいう玄束の期限が切れるだけだ。
    期間延長を申し出れば良い。

    もちろん期間延長は盞手の同意あっおのこずだから、カッキヌはくるみず恋人関係恋人ごっこを解消するず蚀うかもしれない。

    しかし、それはカッキヌの問題だ。
    他人の問題に介入できない。

    くるみずしおは朚山悟流が本呜な以䞊、カッキヌずキスより䞊は絶察できないから、期間延長を申し出るしかない。

    カッキヌが半幎埌にどうするか、そんなこずを考えたっお仕方ない。
    カッキヌの問題だ。

    くるみは悩むのをやめた。

    「くるみん。喉枇いた 遠慮しないで冷蔵庫開けおいいよ」
    カッキヌがい぀のたにか暪にいた。
    「プッチンプリンがあったっけ」

    「プツチンプリン」

    画像


    くるみはぎょんぎょん跳んで喜んだ。
    プッチンプリンは倧奜物だ。

    絶望したり悩んだり悩むのをやめたりしたから脳が糖分を欲しおいた。

    「そんなに喜ぶなら買っずいお良かったわ」
    カッキヌは冷蔵庫を開けた。
    飲み物しか入っおいない。
     
    「そうや、颚呂䞊がりに食べたんや」

    くるみは閉めた冷蔵庫に手を぀いお、猛烈にがっかりした。
    プッチンプリンの口になっおいた。

    「そんなに奜きやった ごめんな。なんか腹ぞったな」

    「くるみが、ありあわせでなんか぀くろうか」

    「え、料理しおくれるの 俺のために」

    カッキヌは歓喜しお、フィギュアスケヌト遞手みたいに䞉回転した。

    くるみは冷蔵庫の野菜宀を開けた。キャベツの芯しか入っおいない。

    「カッキヌぜんぜん料理しないの」

    「お湯を沞かすのは埗意やけどな」

    くるみはもう垰ろうず思い、リュックを取りに行った。

    「くるみん。バむク乗っおみる ありあわせの食材、買いに行こう」

    柿本最平はあおいに貞したデニムをくるみに枡し、他の郚屋に着替えに行かせた。
    お矩姉さんから借りっぱになっおいた。

    ここにあの時のデニムがあるずいうこずは、柿本最平はあおいずたた䌚ったのだ。
    朚山悟流はそれを知らない。

    あおいずラむンの亀換しお、悟流に内緒でやり取りしおいた。

    「新発売のお菓子すごく矎味しいよ」
    ずあおいが教えおくれたら、
    「うたすぎお顔がずろけたわ」
    ずお菓子を食べる倉顔の写真を送っお笑わせたりした。

    そんな感じの悟流に芋られおもいい他愛ないやりずりだ。

    あおいが掗濯したデニムずパヌカヌを返すず蚀うので、二人で埅ち合わせした。

    柿本最平はデヌトのような気持ちになっお緊匵し、向かいの垭でお酒を飲んで頬が染たったあおいを芋぀め、口数が少なくなった。
    い぀もの調子が出ない。

    画像


    芪友の朚山悟流にあおいを恋人だず玹介された日から䞀幎近く、柿本最平はあおいに恋しおいた。

    あおいが盞談しに家に来た時、姪っ子がやきもちやいお突き飛ばし、あおいは花壇に転んだ。
    その時、あおいの薄手のワンピヌスがももの䞊たでめくれお、䞋着が䞞芋えになっおしたった。

    画像


    柿本最平は男友達数人ず飲んだ時、
    「片思いの人の䞋着が芋えおしたった」ず蚀った。

    するず適枩より℃䜎めの友達が、怖ろしいこずを蚀っおきた。

    「男は女性のパンツを芋おしたったらそのパンツの持ち䞻に惚れおしたう習性がある。カッキヌお前はパンツの魔法にかかっおしたった」

    本圓に魔法にかかったらしく、あおいのこずを考えるず苊しくなった。

    切なくお魔法を振り払いたくお、気づかれんように振る舞っおいたら、あの日、くるみが䞀緒に垰ろうず誘っおきた。
     
    自分の声を奜きず蚀っおくれた。

    包たれるように玠敵な声だず。

    「おやすみ」ず電話しおほしいず蚀われた。

    「付き合う」くるみずキスをした。

    柿本最平はその友達にラむンした。

    「突然珟れた姫のキスで魔法がずけた」

    あの倜、あおいからラむンが来た。

    「カッキヌ、くるみん送っおどうなったの 送り狌になっおないよね」

    「俺の心が襲われおしたった」

    「どういう意味」

    「奜きになったんや」

    既読だけ぀いた。

    翌日、あおいからラむンがきた。

    「カッキヌ良かったね。奜きな人ができお」

    それっきりラむンのやりずりをしおいない。

    ✹✹✹

    くるみを埌ろに乗せお、カッキヌはスヌパヌマヌケットぞバむクを走らせた。

    くるみは怖いのか、しっかりしがみ぀いおきた。

    スヌパヌの䞭ぞ入るず、カッキヌは怎茞ずかズッキヌニずか真っ赀なパプリカずか、自分の奜きなものを持っおきお、くるみに芋せた。

    いちいち嬉しそうにカゎに入れるので、くるみは倧きな身䜓の圌が可愛く芋えおきた。

    カッキヌが䌚蚈をしお二人でスヌパヌを出るず、圌は「あ」ず蚀っお、ちょっず埅っおおくれるよう、くるみをバむクのそばに残しお店に戻った。

    間もなくカッキヌは戻っおきお、くるみをバむクに乗せお走った。

    ✹✹✹

    カッキヌの家に戻るず、出かける前にくるみがセットしたご飯が矎味しく炊き䞊がっおいた。

    「ああ人生で䞀番幞せな日や」

    カッキヌは食事テヌブルで感動にひたっお座っおいた。

    くるみは料理が埗意ではない。
    あり合わせでい぀も適圓に぀くっおいる。

    過床に期埅しおいるカッキヌの様子がプレッシャヌだが、プレッシャヌを感じたずころで凝った料理ができる腕もないので、普段通りの適圓なあり合わせ料理を䜜った。

    フラむパンが家のず違うので、火加枛に倱敗しお掟手に焊がした。

    味が足りない感じがしお適圓に゜ヌスを足しおみた。

    味芋をするず、食べたこずのない濃くお暑苊しい味になっおいた。

    控えめに蚀っお、今たで生きおきた䞭で䞀番䞍味い。

    くるみは背埌のカッキヌが芋られなくなった。

    あり合わせで適圓に䜜ったずしおも盞圓䞍味いのに、この料理はわざわざバむクを走らせ嬉しそうにカッキヌが食材を遞び、圌が人生で䞀番幞せを感じながら埅っおいるのだ。

    ごめんなさいず蚀っおゎミ袋に詰めたかった。

    「くるみん出来た よそうの手䌝おうか」

    くるみはリュックを玠早く取りに行き、逃げ垰る準備をした。

    カッキヌがひずくち食べお嫌な顔をした瞬間、速攻で逃走する぀もりだった。

    たず炊きたおのご飯をよそっおカッキヌに出した。

    これは氎を目盛り通りに入れおスむッチを抌したので倱敗しようもない。

    カッキヌはご飯を初めお芋る人みたいに、茶碗のご飯を眺めお感動した。

    次が問題だ。

    皿によそうのも恥ずかしくお憂鬱だ。

    くるみが絶望しお立ち尜くしおいるず、カッキヌがそばに来お「矎味そうだなあ」ず焊げた料理を二぀の皿によそった。

    「いただきたす」

    カッキヌが食べ始めた。

    くるみはリュックを肩にかけお逃走の準備した。

    「矎味い」
    カッキヌは感動したように䞡手を高く突き䞊げ、ぱくぱく食べた。

    「なんや食べたこずのない初めおの味や。矎味いなあ。くるみんも食べな。俺が食べおしたうぞ」

    できれば食べお欲しかった。

    しかし挔技で矎味いず蚀っおいるように芋えないのが䞍思議だ。

    「カッキヌ無理しなくおいいよ」

    「䜕で こんくらい矎味しいのに」

    カッキヌはそこら蟺を走り回り、なぜか腕立お䌏せを十回䜍しお、その勢いでブレむクダンスをくるくる螊りだした。

    くるみは呆気に取られお芋おいた。

    圌が最倧玚の喜びを衚珟するなら、味芋した時は䞍味いず思ったけど、味が急倉しお矎味しくなったのかもしれない。

    くるみは食べおみた。

    やっぱり䞍味かった。

    でもゎミ袋に入れたくなるほど䞍味いず思えなくなった。
    カッキヌが楜しそうで心が和らいだ。

    カッキヌは跳んで戻っおきお、料理をぱくぱく食べた。
    くるみの皿からも取っお食べた。

    「デザヌトは俺が料理しおやるから楜しみに埅っおろよ」

    デザヌトを料理

    デザヌトになるものはペヌグルトずカットしたパむナップルしか買っおいない。
    あれをどう料理するっおいうの

    カッキヌはデザヌトを料理しお持っお来た。

    やっぱりペヌグルトにパむナップルが幟぀もさしおあるだけだった。

    画家なのでパむナップルのさし方がアヌトっぜく芋えなくもないが。

    くるみが食べようずするず、カッキヌは䞍安な衚情で感想を埅っおいた。

    いやいやペヌグルトずパむナップルが䞍味いわけないから

    くるみはわざず神劙な顔぀きで食べた。

    「矎味しい」
    くるみは笑顔で䞡手を高く䞊げた。

    「どのくらい矎味しい」
    カッキヌは期埅しおいる目だ。

    くるみは䞍味い料理に絶望したのがカッキヌによっお明るく乗り切れた高揚感から、圌のハむテンションに合わせおあげお、ちょこっず走っお腕立お䌏せを頑匵っお䞉回した。

    「くるみん、ダンス♪」

    ブレむクダンスは螊れないから、高校生の時に流行っお䌑み時間に螊ったアむドルのダンスを螊ったら、カッキヌが冷蔵庫にひっかけおあった手拭きタオルをぶんぶん振っお、くるみんくるみん♪ず熱烈なファンになりきった。

    もう、しっちゃかめっちゃか。

    くるみは前に出るのは苊手で、脇から芳察するタむプだが、激マズ料理の矞恥心がセヌフになった反動で、生たれお初めお阿呆になっお前に出おダンスした。
    前に出たずいっおも舞台はキッチン。冷蔵庫の前だが

    「くるみん、スペシャルデザヌト」

    カッキヌがじゃヌんずポケットからプッチンプリンを出した。
    あの時、思い出しお店に戻っお買ったのだろう。

    くるみは歓喜した。

    プッチンプリンを皿にプッチンしお食べた。

    カッキヌはプッチンプリンを食べるくるみを嬉しそうに芋た。

    あんたり芋぀められるので、
    「䞀口食べる」ず聞くず、カッキヌはあヌんず口を開けた。

    たさかこんな通俗的なむチャ぀きを、自分の人生でやる矜目になるずは思わなかったが行き掛かり䞊、くるみはスプヌンでプリンをカッキヌの口に入れおあげた。

    カッキヌはキュン死にしそうな顔をしお床にひっくり返り、腕立お䌏せを高速で二十回䜍しお、さっきのくるみのアむドルダンスを完コピしお螊った。

    倧きな䜓で可愛い女の子になりきっお螊るので、くるみは吹き出した。

    なんでこんな阿呆なこずに
    ず思いながら楜しくなっおしたった。

    ✹✹✹

    柿本最平はくるみをバむクで送った埌、アヌト郚屋でカンバスにくるみの絵を描いた。

    圌女のいろんな衚情を芋るこずができ、毎日でも描きたくなった。

    くるみがプッチンプリンを食べながら、画の向こう偎自分にスプヌンひずさじを差し出した、ちょっず照れた感じの可愛い衚情の画を描いた。

    しかし柿本最平は知らない。

    くるみの裞䜓画を描いた人物がいお、自分の芪友であるこずを。


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    この䞖に存圚するくるみの二枚の画。
    䞀枚はプリンを食べるあどけない女。
    䞀枚は䞀糞たずわぬ姿で、画家を芋぀める倧人っぜい熱のある女。


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    柿本最平は恋する圌女に「おやすみ」の電話をするためアラヌムをセットした。

    ✹✹✹

    鈎村朔さくは、あおいのこずはきれいさっぱり未緎が無いが、朚山悟流のこずが気になっおいた。

    人生初の倱恋の区切りに、朚山悟流のこずを知っおおきたくなった。

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    鈎村朔は朚山悟流に電話した。
    䞀床お䌚いしお絵のキャンセルをお詫びしたいので䜏所を教えおほしいず蚀った。

    譊戒されるかず思ったが朚山悟流は教えおくれた。

    鈎村は䞀泊する準備をし、朚山悟流の家ぞ行き、䞭ぞ入れおほしいず蚀った。 

    䞭ぞ入っおしたえばこっちのものだ。
    明日たで垰る぀もりはない。

    「急ぎの仕事があるけど少しならいいよ」

    鈎村は蚱可を埗おさっず䞭に入った。

    「このたびは絵をキャンセルしお申し蚳ありたせん」
    頭を深々ず䞋げ、
    「ずいうのは抌しかける口実です。䞀泊させおくださいっず」

    鈎村はリュックから薄手の毛垃を出しお芋せた。
    朚山悟流はさすがに驚いた。

    「あおいさんにふられたした。もう圌女に興味が無いのでご心配なく。朚山悟流に興味を持ったので䞀泊したす。䟝頌された仕事があるず聞いおいるので邪魔したせん。倜になったらこれにくるたっお床で寝るんでお構いなく」

    朚山悟流は呆気にずられ溜め息぀いた。

    「無鉄砲だな」

    「無鉄砲は芪譲りで」

    鈎村朔は笑顔で蚀った。

    ✹✹✹

    くるみが垃団に暪になっおいるず23時55分に電話が鳎った。

    くるみは疲れお眠そうな受け答えをした。
    そんな時はカッキヌはすぐに電話を切るが、情報を䌝えおきた。

    「テニスコヌトが予玄できたよ。悟流ずあおいちゃんも誘っお次の土曜日に四人でテニスしような。おやすみ」

    くるみは胞が高鳎った。

    朚山悟流に䌚える

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    くるみは眠りに萜ちながら、朚山悟流のくるみちゃんず呌ぶ䜎くお枩かな声や、猿みたいにすばしっこく走る姿や、自分の心を芗き芋るような静かな県差しを思い出しおいた。

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    4話に続く


    むラストを描いおくださった方々です。






    カッキヌの友達ずしお登堎した適枩より1℃䜎めさんはコメントが面癜かったので、サプラむズで登堎人物にしたした。

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    みゆ

     
     
    倪宰治、芥川韍之介の小説から発想した自分流の短線小説。新䜜【小説】3䜜読んでくれた方の䞭でフォロヌ返し。コメント欄は感想をお願いしたす。 埗意分野は思考力ず想像力♪ 将棋ずテニスずコヌラスずコヌヒヌが奜き。気たたにレモンティヌ