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財産があっても、信頼を失えば崩れていく ~貞観政要~

    意訳

    ある組織で、
    責任ある立場の人が、
    指導者に報告した。

    「私たちの組織は、
    以前と比べて設備も充実し、
    資金や物資も豊かになりました。

    組織としての力は、
    かつてないほど強くなっています。」

    すると指導者は答えた。

    「設備を整え、
    資金を蓄え、
    万一の事態に備えることは、
    確かに大切なことだ。

    しかし、
    私が本当に大切にしたいのは、
    そうした目に見える豊かさではない。

    一人ひとりが誠実に行動し、
    正しいことを大切にし、
    互いを思いやりながら、
    安心して働き、
    暮らせる環境をつくることだ。

    それこそが、
    私たちを支える本当の強さなのだ。

    どれほど豊かな資金や
    立派な設備を持っていても、
    人を大切にする心を失えば、
    周囲の信頼は次第に失われていく。

    人々の不満が積み重なり、
    誰も協力しなくなれば、
    どれほど強固に見えた組織であっても、
    やがて衰えてしまうだろう。

    だからこそ、
    目に見える豊かさや力を
    追い求めるだけでなく、
    常に誠実さと思いやりを忘れず、
    互いに正しい行動を
    促し合うことが大切なのだ。」

    現代語訳

    貞観四年、
    房玄齢が太宗に申し上げた。

    「このたび武器庫を調べましたところ、
    武器や防具の充実ぶりは、
    隋の時代をはるかに上回っております。」

    すると太宗は言った。

    「軍備を整え、
    外敵の侵入に備えることは、
    確かに重要なことである。

    しかし、
    私が何よりも望んでいるのは、
    そなたたちが常に正しい道を心に留め、
    忠義と誠実さを尽くし、
    民衆が安心して暮らせる世の中をつくることである。

    それこそが、
    私にとって何よりも頼りになる武器であり、
    防具なのだ。

    隋の煬帝は、
    武器や防具が不足していたために国を滅ぼしたのだろうか。

    そうではない。

    仁愛や正義を大切にせず、
    徳のある政治を行わなかったために、
    人々の不満や恨みが募り、
    家臣たちまでもが背き、
    ついには国が滅びたのである。

    そなたたちは、
    このことをよく理解し、
    常に徳と正義をもって私を支えてほしい。」

    原文

    貞観四年、
    房玄齢奏言、
    今閲武庫、
    甲仗勝隋日遠矣。

    太宗曰、
    飭兵備寇、
    雖是要事、
    然唯欲卿等以存心正道、
    務尽忠貞、
    使百姓安楽。

    便是朕之甲仗。

    隋煬帝豈為甲仗不足、
    以至滅亡。

    正由仁義不修而群下怨叛故也。

    宜識此心、
    常以徳義相輔。

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