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Photo bytoco_33_hiyo

浮上する月

    兆しめく 赤き月あり 海の果て
    スマホを向けて「きもー」とLINEす


    たゆたゆと 波間に黒いかたちあり
    「漁師あるある」俺にもきたか


    海面の 死体と漁船並びいて
    保安庁待つ先に赤い月


    うつ伏せの死体に「男か?」と思う
    マーク・トウェインのうそっぱちの夜


    人間は 沈んで浮いてまた沈む
    死体なのにな 死体だからな


    *


    ヤカラ(漁師)から、海面に浮かぶ、夕陽のような真っ赤な月の写真が送られてきました。
    「大地震の前兆じゃない!? 怖ない!?」
    とヤカラ。
    「えー! 生で見てみよ!」
    と、スマホだけ持って外に出たけれど、
    「低すぎてそっちからは見えないだろうし、見える頃にはもう、ただの白い月だよ」
    と言われました。
    “レイリー散乱”といって、夕日が赤く見えるのと同じ原理なんだそうです。

    それから、彼は沖で死体を見つけました。

    「フェリーから飛び降りたんだよ。フェリーって、出港したときと入港したときで人の数が違うんだって」

    などとでたらめなことを言っていましたが、海で死体を発見すること自体は、彼いわく“漁師あるある”なのだそうです。

    「人間は、沈んで、腐敗してガスが溜まって、また浮く。それからガスが抜けて、また沈む。そうなったらおしまい」

    とも言っていました。
    (※必ずそうなるわけではありませんよ![AIによる概要])

    死体なのに、沈んで、浮いて、沈む。

    死体だから、沈んで、浮いて、沈む。

    彼はそのあと、あの、人なのか人じゃないのか判別できない「かたち」が頭から離れず、ご飯が食べられなくなったそうです。

    それでも生きていれば、お腹は空く。

    三日ぶりにがっつり食べたご飯は、とてもおいしかったんだって。

    腹が減れば、メシはうまい。
    生きているから。



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