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【架空の指輪】

      空は恋をしている。

     空はずっとひとりぼっちだった。
     それはあたりまえのことだったから、自分がひとりきりだということにも気づかなかった。

     そんな空が、近ごろなにかを忘れているような気がして落ち着かなかった。
     だれかと、なにか大切な約束をして、約束をしたということもまとめて忘れてしまったような。その約束のぶんだけ、自分にぽっかり穴があいてしまったような気がした。

    「それは『さみしい』ということだね」

    と、ものしりの灯台がおしえてくれた。
     灯台はずっと空を見ていたから、空の気持ちに気づいたのだ。空はずっとひとりだったけれど、空を見ているものはたくさんいた。

    「きみが『さみしい』を憶えたのは、恋をしたからだな」

     それで空は、自分が恋をしているのだと知った。

    「そんなのは恋じゃないと思うな」

     鴎がくちばしをとがらせていった。灯台が空ばかり気に掛けるのが気にいらない。

    「恋に恋してるだけだよ。この先どうしたいとか、そんな『将来の展望』はないんでしょ?」

     そういわれると空はなにもいえない。自分の気持ちに手も足も出ない。

    「なにかしてあげたいとは思わないの?」

     それは思う、とっても思う。
     勢いこんでうなずく空を見て、鴎がいった。

    「恋をしたら、人は約束を贈るんだよ。給料三ヶ月分の指輪、をね」

     それだけいうと、鴎はぷいっと飛んでいってしまった。

     いろいろ考えて、結局、空は鴎のことばにしたがうことにした。
     給料三ヶ月というのはよくわからなかったけれど、長い時間をかけて金の指輪を準備した。

     でも、いざとなると気おくれしてしまう。
     空はぐずぐすと最後まで迷っていたが、夜明けとともに思いきって指輪を差し出した。

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    金環蝕 2012年5月21日大阪にて撮影

     雲が切れた。
     それから、あかるくなってきた。
     今日が始まった。

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    架空ストア「架空の指輪展」応募作品

     
     

    永子

     
     
    gooブログが終了するということでお引っ越ししてきました。noteに引っ越した記事は全部下書き状態。 公開にすると「見出し画像を設定してみませんか?」と示唆されるので(基本的に)自分で撮った写真をつけて少しづつ上げています。 それとは別に古い舞台評もこそっと公開にしています。

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