
学校では問題ないのに、家で泣く・怒る子に起きていること
はじめに
学校では、先生から「特に問題ありません」と言われている。
友達とも普通に過ごしているように見える。
授業中も座っているし、学校では大きなトラブルはない。
ところが、家に帰ってくると、
•ちょっとしたことで怒る
•何を聞いても「嫌」「知らない」「忘れた」と言う
•気に入らないことがあると物を投げる、泣く、叫ぶ
•きょうだいに強く当たる、きょうだい喧嘩が絶えない
•着替えやお風呂を嫌がる
•夕食や寝る時間になってもダラダラしているようで動かない
ということがあります。
その様子を見て、保護者の方は、
「学校ではできているのに、どうして家ではできないの?」
「外で頑張れるなら、家でも頑張れるのでは?」
「わがままになっているのかな?」
と思うかもしれません。
しかし、子どもの中には学校で頑張れているからこそ、家で気持ちが崩れている場合があります。
家で荒れるのは、保護者に甘えているからでも、育て方が悪いからでもありません。
一日中がんばってきた子どもが、安心できる場所で緊張をゆるめている姿なのかもしれません。
今回は、学校では頑張っているのに、家で荒れてしまう子どもの背景と、家庭でできる関わり方について考えます。
家で荒れるのは「家族を困らせたいから」ではない
子どもは、学校でずっと自由に過ごしているわけではありません。
授業を受ける。
先生の話を聞く。
周囲の音や人の動きを気にする。
友達との距離を考える。
やるべきことに取り組む。
失敗しないように気をつける。
その一つひとつに、子どもなりの努力が必要なことがあります。
特に発達特性のある子どもは、周囲に合わせるために、より多くのエネルギーを使っている場合があります。
学校では、
「座っていなければ」
「話を聞かなければ」
「友達とトラブルにならないようにしなければ」
と、自分を抑えながら過ごしている子も珍しくありません。
そして、家に帰ると、その緊張を保つ力がほとんど残ってなくなっている。
その結果、泣く、怒る、動けなくなる、何もしたくなくなるといった形で表れることがあります。
これは、子どもが家族を困らせたいからではなく、一日の疲れが、緊張を緩めることができる家で表に出ている可能性があります。
「外でできる」と「余裕がある」は同じではない
学校でできている姿を見ると、周囲は、
「できる力はあるのだから、家でもできるはず」
と考えやすくなります。
もちろん、できる力があることは大切です。
しかし、行動できていることと、余裕を持って行動できていることは同じではありません。
例えば、学校で一日中座って指示に従っていた子が、帰宅後にソファから動けなくなることがあります。
学校で友達に合わせていた子が、家ではきょうだいに強い言葉を使うことがあります。
学校で失敗しないように頑張っていた子が、家では宿題や着替えを拒否することがあります。
これは、学校で頑張っていないのではありません。
むしろ、学校で頑張りすぎた分、家で回復する時間が必要になっているのかもしれません。
まずは帰宅直後に「質問しすぎない」
子どもが帰ってくると、保護者の方は、
「今日どうだった?」
「宿題は?」
「先生に何か言われた?」
「忘れ物はない?」
と聞きたくなると思います。
学校で何があったのか知りたいですし、帰宅後の予定も進めなければなりません。
ただ、帰宅直後の子どもは、まだ学校で使った力を回復できていないことがあります。
質問に答えることや、次の行動に切り替えることが負担になっている可能性もあります。
そんなときは、まず、
「おかえり。今日は疲れたね」
「荷物は置いて、少し休もうか」
「話したいことは、後で聞かせてね」
と、答えを求めない声かけをしてみてください。
帰宅してすぐに一日の報告を求めるより、安心して切り替えられる時間をつくることを優先すると良いでしょう。
帰宅後の「回復ルーティン」をつくる
家に帰ってから、すぐに次の予定へ移ることが難しい子もいます。
そこで、帰宅後に毎日同じ流れをつくります。(ルーティン化)
例えば、
1.帰宅する
2.荷物を部屋に置く
3.手を洗う
4.水分をとる
5.15分休憩する
6.おやつを食べる
7.次の予定を確認する
というような流れです。
大切なのは、帰ってきたらすぐに行動させることではありません。
学校モードから家庭モードへ切り替えるための時間を、予定の中に入れておくことです。
もちろん、休憩時間で何をするかは、子どもによって違うでしょう。
静かな場所で一人で過ごす子もいれば、体を動かすことで落ち着く子もいます。
•一人でおもちゃで遊ぶ
•短時間ゲームをする
•好きな音楽を聴く
•布団やソファで横になる
•好きな本を読む、見る
•少し歩いたりして体を動かす
•トランポリンやクッションで体を動かす
など、その子に合った回復方法を探してみましょう。
荒れている最中に、理由を聞き出そうとしない
子どもが泣いたり怒ったりしているとき、保護者の方は、
「泣いてるだけじゃわからない」
「どうして怒っているの?」
「何が嫌なの?ちゃんと話して」
「そんなに怒ることではないでしょう」
と言いたくなるかもしれません。
しかし、強い感情が出ている最中は、自分の気持ちを整理して言葉にすることが難しい場合があります。
これは大人でも同様で、感情が高ぶっているときに、冷静に理由を説明するのは簡単ではありません。
そのため、まずは話し合いよりも安全の確保と落ち着くことを優先しましょう。
「今は話さなくて大丈夫だよ」
「少し離れて待っているね」
「落ち着いたら、どうしたかったか一緒に考えよう」
「危ないものだけ、こちらで預かるね」
短く、必要なことだけ伝えます。
長い説教や質問を重ねても、さらに刺激してしまいやすく、余計に落ち着くことができなくなってしまいます。
落ち着いた後に「反省会」をしすぎない
子どもが落ち着くと、保護者の方は、今後同じことが起きないように話し合いたくなります。
もちろん、振り返りは大切です。
ただし、長い反省会になると、子どもは「怒られる時間がまた始まる」と感じることがあります。
振り返るときは、短く、次の方法を一緒に決めることを意識します。
「帰ってすぐは疲れていたんだよね」
「次に同じくらい疲れたときは、どうしたら楽になりそうかな?」
「帰ったら先に15分休む方法を試してみようか」
「怒りそうなときの合図を決めておこうか」
「どうしてあんなことをしたの?」と過去を追及するより、
「次に困ったとき、どうすればよいか」を一緒に考えましょう。
家での行動だけでなく、学校での頑張りにも目を向ける
家で荒れている姿を見ると、荒れている家庭での行動だけが気になります。
しかし、見えないところで、子どもがどれだけ頑張っているかを知ることも大切です。
先生に、次のようなことを確認してみてください。
•学校で一人で過ごす時間はあるか
•休み時間に気を張っていないか
•音や人の多さに疲れていないか
•授業中に困っていても我慢していないか
•友達との関わりで無理をしていないか
•給食や着替え、移動に負担がないか
•帰宅後に荒れやすい日の共通点はあるか
学校では「問題ない」と見えていても、子どもが疲れていないとは限りません。
「困った行動があるか」だけではなく、
「一日をどのくらいの力で過ごしているか」という視点で見ていくことが重要です。
もちろん学校の先生に負担にならない範囲で聞いてみましょう。
「家で安心できている」と「家で何をしてもよい」は違う
家で荒れることを理解することは、何でも許すことではありません。
物を投げる、人を叩く、危険な場所へ行くなど、身の安全に関わる行動については、はっきりと止める必要があります。
ただし、止めることと責めることは別です。
「怒っていることは分かった。でも、人を叩くのは止めるよ」
「嫌だったんだね。物を投げる代わりに、クッションを叩いて」
「大きな声は出してもいいけれど、耳の近くでは出さないよ」
と、子どもの気持ちは認めながら、行動の境界線を伝えます。
子どもの感情を否定せず、安全のためのルールは守る。
この両方が非常に大切なのです。
保護者の方が「受け止めきれない」と感じるとき
毎日のように家で荒れる子どもを受け止め続けることは、保護者の方にとっても大きな負担です。
「家が安心できる場所なら、親が全部受け止めなければいけない」と考えると、保護者の方が先に疲れ切ってしまいます。
保護者の方にも限界があります。
•できるだけ一人で対応しない
•きょうだいを物理的に別の場所へ移す
•交代できる大人を決めておく
•学校や支援機関に状況を共有しアドバイスをもらう
•荒れやすい時間帯の予定を前もって減らす
•保護者自身が休むことができる時間、日をきちんと確保する
こうした対応も、子どもを支えるために必要な工夫です。
「家で荒れるのだから、家庭だけで対応しなければならない」ということはありません。
学校、放課後等デイサービス、相談支援、医療機関などと連携しながら、子どもと家庭の負担を減らしていきましょう。
家で荒れにくくするためのチェックポイント
帰宅後に荒れやすい場合は、次のことを記録してみると、きっかけが見つかりやすくなります。
•何時ごろに帰宅したか
•学校で行事や係活動があったか
•睡眠時間は足りていたか
•帰宅後すぐに何を求めたか
•荒れる前にどんな様子があったか
•何をすると落ち着いたか
•その日の疲れ具合はどうだったか
「毎日荒れている」と感じていても、記録してみると、
•月曜日に多い
•行事の後に多い
•帰宅後すぐに予定がある日に多い
•空腹のときに多い
•きょうだいとの接触後に多い
など、パターンが見えてくることがあります。
原因を一つに決めつけるのではなく、環境を調整する手がかりとして使ってください。
おわりに
学校では頑張っているのに、家で荒れる。
その様子を見ていると、保護者の方は、
「外ではできるのに、家では甘えている」
「家族にだけわがままを言っている」
と思ってしまうことがあるかもしれません。
しかし、家で荒れるのは、家族を困らせたいからではなく、学校で一日頑張った分の疲れが表れている可能性があります。
まずは、
•帰宅直後に質問を重ねない
•回復する時間を予定に入れる
•荒れている最中は理由を追及しない
•落ち着いた後に次の方法を一つだけ考える
•学校での頑張りも含めて子どもを見る
ことから始めてみてください。
子どもにとって、家は「いつでも完璧に振る舞わなければならない場所」ではなく、疲れたときに回復できる場所であってほしいと思います。
そして、保護者の方も、すべてを一人で受け止めなくて大丈夫です。
子どもを支えるためには、子どもだけでなく、家庭全体が少し楽になる方法を探すことが大切です。
ご案内
私は、小児療育の専門家として、小児の学習支援や発達特性に合わせた関わり方について発信しています。
学校では頑張っているのに家庭で荒れてしまうお子さんへの対応について、「家庭でどうすればよいか分からない」と感じたときは、一人で抱え込まず、学校や支援機関、専門家に相談してください。
日々の支援のヒントは、X、Instagram、YouTubeでも発信しています。
•個別相談:[https://commuken.thebase.in]
•X:[https://x.com/iNFXgGv0VF60589]
•YouTube:[https://www.youtube.com/channel/UChgQDOamfQU0bMOMYN1KE-g]
•Instagram:[https://www.instagram.com/tsumori_shinji/]
•ホームページ:[https://rainbowrenew-am83gbrx.manus.space]
この記事が、学校で頑張った分、家で気持ちが崩れてしまうお子さんと、その対応に悩む保護者の方の参考になればうれしいです。