
株式会社ユーザベースを解剖する|Speeda導入2,500社超×NewsPicks会員1,000万人超。M&Aを重ね「アジアNo.1の経済情報インフラ」を目指す中身
「経済情報で、世界を変える」
──2008年の創業時に掲げたこの一文を、株式会社ユーザベースは2025年12月、あらためて会社の最上位の理念に据え直しました。2021年12月に策定したパーパスをいったん取り下げ、「創業ミッションへの回帰」を選んだのです。社員が1,000名を超えた会社としては、思い切った決断と言えます。
ユーザベースと聞いて多くの方が思い浮かべるのは、経済ニュースアプリの「NewsPicks」か、コンサルや金融の現場で使われる企業・業界情報プラットフォームの「Speeda」でしょう。公式の数字では、Speedaの導入企業数は2,500社以上(2026年4月時点)、NewsPicksの会員数は1,000万人を超えると紹介されています(月刊経団連 2025年1月号)。ビジネスの意思決定を支える情報と、ビジネスパーソンが日々触れるニュース。その両方を1社で持つ会社は、国内ではほとんど見当たりません。
2022年にはカーライル・グループによるTOBが成立し、2023年2月に上場を廃止しました。外から業績を追いにくくなった一方で、2026年に入ってからはシンガポールのSealed Network、Alternatives.pe、Sansan傘下だったログミーと立て続けにグループに迎え、さらに東証スタンダード上場のグローバルインフォメーションにもTOBを実施しています。生成AIの時代に「信頼できる経済データ」を握る会社として、攻めの動きが際立っています。
「生成AIでは代替できない、最良の意思決定と最高の挑戦。」2028年に向けたビジョンに添えられたこの言葉に、いまのユーザベースの問題意識が凝縮されているように見えます。
本記事では、公式サイトと公表資料を一次ソースに、以下の3点を数字と構造から解剖します。
・ユーザベースがどんな会社で、なぜいま「創業ミッション」に立ち返ったのか
・「Speeda」と「NewsPicks」の2本柱、そしてAIエージェント・MCP連携の中身
・2026年に相次いだM&Aが示す「アジアNo.1の経済情報インフラ」への道筋
「NewsPicksの会社」という一言では収まらない、ユーザベースの全体像を丁寧に紐解いていきます。
この記事の読了目安:約15分
■ ユーザベースの全体像
株式会社ユーザベースは、2008年4月1日に設立された、経済情報に特化した会社です。公式の事業内容は「企業活動の意思決定を支えるビジネス情報インフラの提供」と定義されています。
・社名:株式会社ユーザベース(英名:Uzabase, Inc.)
・設立:2008年4月1日
・代表:代表取締役CEO 稲垣 裕介 氏
・資本金:100百万円(2025年12月31日時点)
・従業員数:1,119名(2025年12月31日時点、連結子会社含む・正社員および契約社員、アルバイト除く)
・本社:東京都千代田区丸の内2-5-2 三菱ビル
・国内拠点:西日本オフィス(大阪市北区・阪急グランドビル26階)
・海外拠点:シンガポール、上海、香港、スリランカ(コロンボ)、米国(ニューヨーク)
・ミッション:「経済情報で、世界を変える」
・ビジョン(VISION 2028):「アジアNo.1の経済情報インフラになる」
・主な事業:経済情報プラットフォーム「Speeda」、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」
・主なグループ会社:ミーミル、NewsPicks Studios、ファーストライト・キャピタル、UB Datatech、Sealed Network Pte. Ltd.、ログミー、Alternatives.pe、グローバルインフォメーション
・上場:未上場(2022年12月にカーライル・グループによるTOBが成立し、2023年2月に東証グロース市場の上場を廃止)
▷ 沿革:SPEEDAから始まった18年
公式サイトの沿革をたどると、ユーザベースの成長は「プロダクトを出し、買収で厚みを足す」の繰り返しで形づくられてきたことがわかります。
・2008年4月:創業
・2009年5月:「SPEEDA」をリリース
・2013年1月:SPEEDAがシンガポール・上海・香港に進出
・2013年10月:「NewsPicks」をリリース
・2016年1月:SPEEDAのリサーチ拠点をスリランカに開設
・2016年10月:東証マザーズに上場
・2017年1月:ジャパンベンチャーリサーチを子会社化
・2017年5月:「FORCAS」をリリース
・2020年4月:ミーミルを子会社化
・2021年1月:「SPEEDA Edge」を提供開始
・2022年12月:カーライル・グループによるTOBが成立
・2023年2月:東証グロース市場の上場を廃止
・2023年7月:ニューズピックスを吸収合併
・2024年7月:国内向けSaaSプロダクトの名称を「Speeda」に統一
報道によれば、カーライル側の公開買付者による買付価格は1株1,500円で、ユーザベースはTOBに賛同の意見を表明していました。上場廃止は、短期的な株式市場の評価にとらわれず、中長期の投資を進めるための選択だったと位置づけられます。
▷ 代表・稲垣裕介氏:CTOから経営トップへ
代表取締役CEOの稲垣裕介氏は愛知県出身。公式の役員紹介によれば、大学卒業後にアビームコンサルティングでプロジェクト責任者として全社システム戦略の立案や大規模データベースの構築に携わり、2008年に新野良介氏、梅田優祐氏とともにユーザベースを共同創業しました。
創業後はCTOとして技術基盤をつくり、その後SpeedaとNewsPicksのCEOを歴任。2021年から代表取締役CEOを務めています。「技術」と「2つの主力事業の両方」を自ら率いてきた経歴は、データとプロダクトを軸に事業を組み立てる同社らしい経営者像と言えます。
月刊経団連(2025年1月号)の新会員紹介で稲垣氏は、大企業の進化が日本経済全体の成長を大きく左右するという認識を示し、SpeedaとNewsPicksが多くの大企業のデジタルシフトを加速させてきたと語っています。
▷ なぜ「パーパス」を取り下げたのか
冒頭で触れた理念の見直しは、公式メディア「Uzabase Journal」(2026年4月)で詳しく語られています。
2021年12月に策定したパーパスは「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」。しかし、社外での発信でこの言葉が使われなくなっていったこと、「ビジネスを楽しむ」が社内の働きやすさの意味に寄って受け取られがちだったこと、そして生成AIの台頭で事業環境が急変したことが、見直しの理由に挙げられています。
見直しにあたっては、約30名の立候補制ワーキンググループを組成し、全社タウンホールで途中経過を共有しました。最終的に2025年11月末の上席執行役員合宿で、準備していた案をいったん脇に置き、創業時のミッションに立ち返ったといいます。
同記事では、ミッションを「耐久性の高い不変的な言葉」、ビジョンをミッションに近づくための「補助線」として2028年以降も定期的に更新していくものと位置づけています。稲垣氏は、VISION 2028によって事業の取捨選択が一気に加速し、優先される事業がある一方で劣後せざるを得ない事業も出てくる、その判断の拠り所がVISION 2028だったと語り、SpeedaとNewsPicksについては「絶対に負けられない」と述べています。言葉の整理が、そのまま経営の集中と選択につながっている点は注目に値します。
■ 事業の中身:Speeda × NewsPicksの2本柱
ユーザベースの事業は、法人の意思決定を支える「Speeda」と、ビジネスパーソンに経済ニュースを届ける「NewsPicks」の2本柱で構成されています。
▷ 柱その1|Speeda:「AI時代の意思決定を支える経済情報プラットフォーム」
Speedaは2009年に生まれた同社の祖業です。公式リリースでは「AI時代の意思決定を支える経済情報プラットフォーム」であり、「経済特化型のAIエージェントが、あらゆる調査・分析を深く、正しく、簡単にします」と説明されています。
2024年7月に、それまで別々の名前で展開してきたSPEEDA・INITIAL・FORCASなどの国内SaaSプロダクトを「Speeda」ブランドに統一しました。公式サイトに並ぶラインナップは次の通りです。
・スピーダ 経済情報リサーチ(旧SPEEDA):企業・業界の財務やレポートを調べる中核サービス
・スピーダ R&D分析(SPEEDA R&D)
・スピーダ スタートアップ情報リサーチ(旧INITIAL):スタートアップ・未上場企業や資金調達、投資家のデータ
・スピーダ 顧客企業分析(旧FORCAS)
・スピーダ 営業リサーチ(旧FORCAS Sales)
・スピーダ イノベーション情報リサーチ(旧SPEEDA Edge)
・Speeda AI Agent、Speeda Expert Research、グロースパートナー事業
公式サイトで公表されている主な数字(2026年4月時点)は以下の通りです。
・導入企業数:2,500社以上
・グローバル企業データ:1,270万社以上
・企業特徴データ:1,800種類以上
・業界・トレンドレポート:3,000本以上
・オリジナルのニュース記事:20,000記事以上
・エキスパート:国内28.6万人、海外23.7万人
・専門アナリスト:約100名以上
あわせて「時価総額TOP100」企業の90%がSpeedaを採用していると記載されています。データを集めるだけでなく、アナリストが業界を読み解き、専門家(エキスパート)の知見までつなぐ。この「データ×人の知見」の組み合わせが、Speedaの厚みを生んでいると見られます。
▷ エキスパートネットワークとリサーチの「人」の層
Speedaの特徴の1つが、業界の実務家や有識者に話を聞ける「エキスパートネットワーク」です。同社はこの領域を買収で積み上げてきました。公式リリースによれば、2020年に日本のミーミルを完全子会社化し、2024年には北米のEnquire AIの事業(専門家)を取得、そして2025年12月に東南アジアのSealed Networkの買収を発表しています。Sealed Networkは同社にとって3件目のエキスパートネットワーク関連のM&Aです。
サービス面では、24時間以内に5人以上の専門家から回答を集める「FLASH Opinion」も提供されています。2026年9月には、注目領域に対する専門家のコメントを集めた『EXPERT Growth Hack Report』の2027年度版の販売も始まりました。
また、スタートアップ領域に特化したリサーチとコンサルティングを担う「Speeda Startup Lab」も立ち上がっています。2026年10月21日には、全145ページの『ディープテック・スタートアップレポート』を公開。国内ディープテック・スタートアップの資金調達額が2016年の785億円から2025年の3,877億円へ約5倍に拡大したことなどを、データと有識者8名へのインタビューで分析しています。同年5月の『スタートアップM&Aレポート2026』では、スタートアップのEXITに占めるM&Aの比率が2015年の62%から2025年には85%に上がったと示しました。
データベースを売るだけでなく、レポートやコンサルティングで「調べた先の答え」まで届ける方向に事業を広げていることがわかります。
▷ 柱その2|NewsPicks:会員1,000万人超のソーシャル経済メディア
もう1つの柱が、2013年10月にリリースしたNewsPicksです。経済ニュースに、各分野の専門家やユーザーのコメントが付く「ソーシャル経済メディア」として広がり、月刊経団連(2025年1月号)では会員数が1,000万人を超えると紹介されています。
2015年10月に株式会社ニューズピックスとして法人化しましたが、2023年7月にユーザベースへ吸収合併されました。現在の経営陣には、NewsPicks CEOの文字拓郎氏、CMOの池田光史氏、COO/CHROの中里基氏が名を連ね、動画などの制作を担うNewsPicks Studios(CEO:金泉俊輔氏)もグループ会社として並んでいます。
公式のニュースリリースを見ると、NewsPicksの事業は個人向けメディアにとどまりません。
・NewsPicks法人研修:有識者やエキスパートを講師とした実践型の研修パッケージを2026年9月に提供開始
・NewsPicks for Kids:子ども新聞。2026年9月に染原睦美氏が新編集長に就任し、「考える力」を育む紙面づくりを強化
・WE CHANGE AWARDS 2027:国際女性デーに合わせ、次世代の女性リーダーとダイバーシティ推進企業を表彰する取り組み。2026年10月にエントリー受付を開始
ビジネスパーソン個人の学びから、企業の人材育成、そして次世代の子どもまで。NewsPicksは「経済を面白く伝える」力を、さまざまな接点に広げていると位置づけられます。
■ AI時代の打ち手:Speeda AI AgentとMCP連携
生成AIは、情報サービス企業にとって脅威にも追い風にもなりえます。誰でもAIに質問できる時代に、有料の経済データの価値はどこにあるのか。ユーザベースの答えは「信頼できるデータを、AIが使える形で届ける」ことだと見られます。
▷ Speeda AI Agent:経済に特化したAIエージェント
2025年6月30日、同社は経済情報に特化したAIエージェント「Speeda AI Agent」を発表し、2025年夏から順次提供を始めました。公式リリースでは、汎用の大規模言語モデルには、重要な情報収集・分析・意思決定の業務で「正確性」「具体性」「使いやすさ」に課題があると指摘しています。
Speeda AI Agentは、利用者の目的に合わせて示唆を出すエージェントと、情報源の性質に応じて情報を処理するエージェントを組み合わせ、情報の横断的な比較・分析を可能にする設計です。提供形態は次の4つが示されています。
・Webブラウザとモバイルアプリ
・NewsPicks内での提供(決算やM&Aなど重要イベントの要約)
・SalesforceなどのソフトウェアやAIシステムとのAPI連携
・Agent2Agent(A2A)による他社AIエージェントとの連携
なお、データ提供パートナーや専門家のコンテンツは、許諾なくAIエージェントに組み込まないことも明記されています。データの権利を守る姿勢が、そのまま信頼の土台になっています。
▷ MCP連携:ClaudeやChatGPTからSpeedaのデータを呼び出す
2026年には、さらに一歩踏み込んだ動きがありました。外部の生成AIツールとデータをつなぐ標準規格「MCP(Model Context Protocol)」への対応です。
・2026年9月1日:経済情報リサーチのMCP連携を提供開始
・2026年9月10日:MCP連携サービスがSlackbotに対応し、顧客の変化の把握から提案準備までをSlack上で完結できるように
・2026年10月1日:スタートアップ情報リサーチもMCP連携を提供開始
対応サービスは、Claude、ChatGPT、Microsoft Copilot Studio、Gemini Enterprise、Slack(2026年10月時点)。たとえば「直近3年にシリーズB以降の資金調達を行った国内スタートアップと主要投資家」と日本語で尋ねると、企業検索から調達ラウンド・投資家の取得までが自動で連続実行され、一覧で返ってきます。生成AIに単独で調べさせると社名の誤りや調達実績の取り違えが起きやすい、という課題への答えです。
「自社の画面の中で使ってもらう」ことにこだわらず、顧客が日常的に使うAIツールの中にSpeedaのデータを流し込む。プラットフォームから「データのインフラ」へと、提供価値の重心が移りつつあることがうかがえます。
▷ 三菱電機へ「AI利活用に向けた包括的ビジネスデータ」を提供
その象徴が、2026年9月28日に発表された三菱電機との取り組みです。Speedaは20種類以上の独自データを、三菱電機および一部グループ会社に全社規模で提供を開始しました。企業概要・財務・開示資料に加え、業界情報、企業課題、企業リリース、イノベーショントレンド、スタートアップ情報などを、AIで扱いやすい形に構造化して届けます。
経営企画を起点に、戦略企画や営業など複数部門で使われ、営業部門向けに独自開発したAIシステムにも実装されています。三菱電機の経営企画室からは、Speedaのデータをファクトとして自由度高くAIに使える環境が整ったことで、ハルシネーション(AIのもっともらしい誤り)の影響を大きく抑えられたとのコメントが寄せられています。Speeda側はこれを、プラットフォームの枠を超えて顧客の業務プロセスにデータ資産を組み込む「新たな事業領域への挑戦」と位置づけています。
同社が2026年8月に公開した『営業企画白書2026』では、国内大企業の営業企画・営業推進部門の役職者515名のうち、法人営業での生成AI利用率が84.3%に達した一方、活用上の最大の課題は「誤った情報・正確性/信頼性が確認できない」(42.6%)だったと報告されています。AIが普及するほど「正しいデータ」の価値が上がる。ユーザベースの戦略は、この構図の上に組み立てられていると見られます。
■ 2026年のM&Aと「アジアNo.1」への道筋
Uzabase Journalでは、2026年に入ってからのM&Aとして、Sealed Network、Alternatives.pe、ログミーの3社が挙げられています。さらに同年5月にはグローバルインフォメーションへのTOBも発表しました。それぞれの狙いを整理します。
▷ Sealed Network:東南アジアの専門家ネットワーク
シンガポールに本社を置き、シンガポール・インドネシア・フィリピンに拠点を持つエキスパートネットワーク企業です。顧客はコンサルティング会社、金融機関、ファミリーオフィス、大企業など。現地の言語に対応し、現地の専門家との関係を持つ点が強みで、買収によりSpeedaとSpeeda AI Agentで新規事業や海外展開のニーズに広く速く応えられるようになるとしています(2025年12月発表、2026年2月完了予定と公表)。
▷ Alternatives.pe:東南アジア最大級のプライベートマーケットデータ
2019年創業のシンガポール企業で、東南アジアを中心に35万社を超える非上場企業のデータを保有・提供する、同地域最大級のデータプロバイダーと報じられています。規制当局への提出書類をもとにした正確なデータが特徴です。
Uzabase Journal(2026年7月)によれば、きっかけは2022年、Alternatives.peのJason Edwards CEOがSpeedaにデータのライセンス提供を打診したことでした。上席執行役員(事業開発担当)の太田智之氏がデータを試し、ライセンスよりも協業や買収に関心を持ち、約3年にわたって対話を重ねたといいます。Speedaの詳細な財務データとAlternatives.peの取引データを組み合わせ、約7億人の市場を持つ東南アジアで圧倒的な存在になること、将来はインドを含むアジア各地への展開も視野に入れていることが語られています。
▷ ログミー:決算説明会の全文書き起こし「Logmi Finance」
ログミーは、Sansanの連結子会社だった会社です。2026年2月6日、ユーザベースはその全株式を取得する契約を発表しました(取得前にログミーBusiness事業はSansanへ承継)。報道によれば譲渡価額は16億5,000万円です。
公式リリースによると、ログミーは決算説明会やIRイベントの全文を質疑応答まで速報で公開する国内最大級のメディア「Logmi Finance」を運営し、月間20万人以上の投資家に使われ、東証上場企業の25%超をカバーしています。買収の狙いとして、次の点が示されています。
・Speedaの支援先(約2,600社)へのLogmi Financeの提供
・NewsPicksの広告取引先へのIR関連サービスの提供
・NewsPicksアプリへの機能統合
・両社のAIと技術を生かした、コンテンツ制作の質・速度・コストの改善
SpeedaとNewsPicksの両方に効く買収であり、2本柱を持つユーザベースならではの組み合わせと言えます。
▷ グローバルインフォメーション:海外市場調査レポートの販売
2026年5月、ユーザベースは東証スタンダード上場のグローバルインフォメーション(グローバルなマーケットリサーチやビジネス情報の提供を手がける会社)に対し、完全子会社化を目的としたTOBを発表しました。報道によれば、買付価格は1株1,680円、公開買付期間は2026年5月21日から7月1日まで。対象会社の取締役会は賛同と応募推奨を表明し、TOBは成立しています。現在、同社は公式サイトのグループ会社一覧にも掲載されています。
これらの動きを並べると、「専門家の知見」「アジアの非上場企業データ」「決算説明会の一次情報」「海外の市場調査レポート」と、Speedaのデータと知見の層を、買収で一気に厚くしていることがわかります。VISION 2028の「アジアNo.1の経済情報インフラ」は、このパズルを組み上げた先にある姿と位置づけられます。
■ 他の情報サービス・メディア企業との違い
経済情報サービス、ニュースメディア、リサーチ会社と並べたときのユーザベースの立ち位置を整理すると、以下の4点で差別化されていると見られます。
1|「法人向けデータ」と「個人向けメディア」を1社で持つ
・一般的な企業情報データベース:法人向けにデータを提供することに集中する
・一般的なニュースメディア:個人読者や広告主への情報発信が中心になる
・ユーザベース:Speedaで2,500社以上の意思決定を支えつつ、NewsPicksで1,000万人超の会員に経済ニュースを届ける
Speeda AI AgentのNewsPicks内提供や、ログミー買収の狙いのように、2本柱の掛け合わせが事業の打ち手になっている点が特徴です。
2|「データ×アナリスト×エキスパート」の三層構造
1,270万社以上の企業データに加え、約100名以上の専門アナリスト、国内外50万人規模のエキスパートを抱えています。数字だけでは見えない業界の実態を「人の知見」で補える構造は、AIで代替しにくい資産と言えます。
3|AIの「外側」にデータを流し込む発想
自社画面への囲い込みにこだわらず、MCP連携でClaudeやChatGPT、Slackから直接データを呼び出せるようにし、三菱電機には全社のAIシステム向けにデータを提供しています。「AIの燃料となる信頼できるデータ」というポジションを取りにいっている点が、従来型の情報サービスとの違いです。
4|日本発でアジアに根を張る
2013年からシンガポール・上海・香港に進出し、2016年にはスリランカにリサーチ拠点を開設しました。そこに2026年のSealed NetworkとAlternatives.peが加わり、東南アジアのデータと専門家の層が厚くなりました。「アジアNo.1」は掛け声ではなく、10年以上かけて積んできた拠点の延長線上にあります。
■ 組織・カルチャー・働き方
▷ The 7 Values:7つのバリュー
ユーザベースのカルチャーの土台が、公式サイトに掲げられた7つのバリューです。
・Be free & own it(自由主義で行こう)
・Unleash ingenuity(創造性がなければ意味がない)
・Thrill the user(ユーザーの理想から始める)
・How fast? Wow fast.(スピードで驚かす)
・Don't know? Choose brave.(迷ったら挑戦する道を選ぶ)
・In it together. No matter what.(渦中の友を助ける)
・We need what you bring(異能は才能)
自由には責任が伴う、ユーザーの期待を超えないものは世に出さない、迷ったら挑戦する道を選ぶ──。さらにこのバリューを具体的な行動指針に落とし込んだ「34の約束」もPDFで公開されています。多様な背景を持つメンバーが同じ理解を持てるよう、言葉を細かく定義している点が印象的です。
Alternatives.peの統合を担う執行役員の大沢遼平氏のチームの仕事ぶりについて、相手側のCEOが「Wow fast」というバリューを思い起こさせたと語っているように、社内外の会話でバリューが共通言語として使われている様子もうかがえます。
▷ 自由度の高い働き方と制度
採用ページでは、働き方と制度が具体的に公開されています。
・勤務形態:フルリモート・フルフレックスが原則(職種によって出社が必要な場合あり)
・スーパーフレックス制度:コアタイムなし(職責を果たすことが前提)
・ロングバケーション:有給休暇とは別に、7日間連続の休暇を年2回取得可能
・時短制度:育児・介護に限らず、約束した職責を果たすことを前提に利用可能
・育休:子どもが2歳になるまで取得可能
・子育て・介護支援:子連れ出社、病児保育料の半額補助、介護支援金(月額上限15,000円)など
・キャリア:斜め上メンター制度、社内異動を選択肢に含むCareer Challenge制度、グループ内副業制度、新規事業創出の「think beyond」制度
給与テーブル・キャリアパス・評価基準・OKRなどをまとめた「HRハンドブック」も公開され、DEIBレポートは2022年から毎年出されています。社内のコミュニケーションは全事業共通のSlackが中心で、ほぼ全チャンネルが公開されているといいます。平均年齢は34.8歳、ジェンダー比率は男性56.0%・女性43.8%(いずれも2024年12月31日時点)です。
▷ リーダーの「内面」に踏み込む育成
人への投資で特徴的なのが、2025年に始動したリーダー育成プログラム「Leaders Academy」です。Uzabase Journal(2026年10月)によれば、2ndラインのリーダー向けプログラムでは、行動の背景にある思考パターンを可視化する360度評価「LCP(Leadership Circle Profile)」と、自分の思い込みを明らかにする「メンタルモデルセッション」を軸に、リーダーが幼少期から積み上げてきた思い込みや繰り返しのパターンにまで踏み込みます。
記事では、Speeda事業の部長2名が、完璧主義から相手に正解を押しつけていたことや、人に頼ることが苦手だったことに気づき、メンバーに任せる・頼る方向へ変わっていった過程が語られています。設計を担う人材開発責任者の福島竜治氏は、目的を「異能は才能」という価値観のもとで個性を最大化し、組織として勝つことだと説明しています。
海外拠点のカルチャーも発信されています。Uzabase Journal(2026年3月)では、スリランカ拠点が「働きがいのある会社」スリランカNo.1に選ばれた背景として、HR主導ではないボトムアップの感謝カルチャーが紹介されています。
▷ どんな職種があるのか
中途採用の職種は、セールス、カスタマーサクセス/サポート、エンジニア、マーケティング、コンサルタント、リサーチ、事業開発、デザイナー、アナリスト、コンテンツ制作・編集、コーポレートと幅広く並んでいます。データプロダクト、AI、メディア、リサーチ、M&A後の統合(PMI)まで、1社の中に多様な仕事が同居している点は、キャリアの選択肢という意味でも大きな特徴です。
■ まとめ:ユーザベースはどんな人に刺さるか
長くなりましたが、要点を4つに凝縮します。
1|ユーザベースは「経済情報で、世界を変える」に立ち返った、経済情報特化の会社
2008年4月設立、従業員1,119名(2025年12月31日時点)。2023年2月に上場を廃止し、2025年12月には創業ミッションを最上位の理念に据え直した。VISION 2028は「アジアNo.1の経済情報インフラになる」。
2|事業は「Speeda × NewsPicks」の2本柱
Speedaは導入企業数2,500社以上(2026年4月時点)、1,270万社以上の企業データと国内外のエキスパートを抱える。NewsPicksは会員1,000万人超のソーシャル経済メディアとして、法人研修や子ども新聞にも広がっている。
3|AI時代の打ち手は「信頼できるデータをAIに届ける」こと
Speeda AI Agent、ClaudeやChatGPTとつながるMCP連携、三菱電機への全社データ提供と、プラットフォームから「AIの土台となるデータインフラ」へ踏み出している。
4|2026年はM&Aでアジアの厚みを一気に増した年
Sealed Network、Alternatives.pe、ログミー、グローバルインフォメーション。専門家、非上場企業データ、決算説明会の一次情報、海外市場調査をグループに加えた。
「生成AIの時代に、"正しい情報"で企業の意思決定を支える仕事がしたい」
「データプロダクトとメディアの両方に触れながら、事業をつくりたい」
「日本発の会社で、アジアに広がる事業の立ち上げや統合に関わりたい」
「自由と責任がセットのカルチャーで、自分の"異能"を生かしたい」
こうした志向を持つ方にとって、ユーザベースは強く心に響くキャリアの選択肢になるはずです。SPEEDAの1プロダクトから始まり、NewsPicksを生み、上場と非公開化を経て、いまアジアの経済情報インフラを目指して買収を重ねている会社。創業18年目にして創業時の言葉に立ち返ったのは、次の大きな挑戦に向けて足元を固めるためだと見られます。その挑戦にどの立場から加わるか、一度じっくり考えてみる価値のある会社だと思います。
参照元
・株式会社ユーザベース 会社情報(会社概要・沿革・グループ会社):https://www.uzabase.com/jp/company/
・ユーザベース 役員紹介:https://www.uzabase.com/jp/company/?section=leadership
・ユーザベース ミッション・ビジョン・バリュー:https://www.uzabase.com/jp/about/
・ユーザベース 採用情報:https://www.uzabase.com/jp/careers/
・ユーザベース お知らせ一覧:https://www.uzabase.com/jp/info/
・Uzabase Journal なぜユーザベースはパーパスを取り下げたのか:https://www.uzabase.com/jp/journal/260409-new-mission/
・Uzabase Journal ユーザベースとAlternatives.pe、統合の舞台裏:https://www.uzabase.com/jp/journal/260710-alternatives/
・Uzabase Journal Leaders Academy:https://www.uzabase.com/jp/journal/261023-leaders-academy/
・Uzabase Journal スリランカ拠点(働きがいのある会社スリランカNo.1):https://www.uzabase.com/jp/journal/260310-sri-lanka/
・Uzabase Journal 一覧:https://www.uzabase.com/jp/journal/
・Speeda 公式サイト:https://jp.ub-speeda.com/
・Speeda、三菱電機へ包括的ビジネスデータを提供開始:https://jp.ub-speeda.com/news/20260928/
・Speedaのスタートアップ情報リサーチがMCPに対応:https://jp.ub-speeda.com/news/20260930/
・Speeda『ディープテック・スタートアップレポート』を公開:https://jp.ub-speeda.com/news/20261021/
・Speeda『営業企画白書2026』を公開:https://jp.ub-speeda.com/news/20260831/
・Uzabase Speeda AI Agent発表:https://www.uzabase.com/en/info/20250630-en/
・Uzabase Sealed Network買収発表:https://www.uzabase.com/en/info/20251219-corp-en/
・Uzabase ログミー株式取得発表:https://www.uzabase.com/en/info/20260206-en/
・月刊経団連 2025年1月号 新会員紹介:https://www.keidanren.or.jp/journal/monthly/2025/01_newface7.html
・日本M&Aセンター M&Aニュース(カーライルによるユーザベースTOB):https://www.nihon-ma.co.jp/news/20221109_3966-5/
・日本M&Aセンター M&Aニュース(ログミー株式譲渡):https://www.nihon-ma.co.jp/news/20260206_4443-32/
・日本M&Aセンター M&Aニュース(Alternatives.pe買収):https://www.nihon-ma.co.jp/news/20260316_1-3444/
・日本M&Aセンター M&Aニュース(グローバルインフォメーションTOB):https://www.nihon-ma.co.jp/news/20260520_4171-3/
・日本M&Aセンター M&Aニュース(グローバルインフォメーションTOB結果):https://www.nihon-ma.co.jp/news/20260702_1-3718/
本記事は2026年10月24日時点で公表されている情報をもとに執筆しています。数値・組織体制・サービス内容等は最新の公式開示をご確認ください。
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