
60歳還暦女子、僧侶を目指す! 第5話― はじめての読経練習! ―
10月初旬からオンライン授業が始まりました。
これまでは座学が中心だったのですが、いよいよ昨日から、読経(お経を読むこと)の練習が始まりました!
実は、この日のために、私は2週間ほど前から準備をしていたのです。
Amazonでお経のCDを購入しました。
CDが届いてからは、毎朝、通勤途中の車の中で15分ほどお経を聴いています。
澄んだ鐘の音から始まるお経。
朝の通勤時間に聴いていると、なんだか心が洗われるような気持ちになります。
なかなかいいものです。
……ただし、聴くのと、自分で唱えるのとでは、話がまったく違うのですが。
というのも、来年5月には京都の本校で、筆記試験と実技試験を受ける予定になっています。
筆記試験はともかく、問題は実技試験。
なんと、お経を読む試験があるのです。
しかも、暗誦しなければならないらしい・・・。
それを聞いた途端、
「ヒエーッ!」
と思ってしまいました。
60歳からの暗記。
しかも、お経。
これは、なかなか手ごわそうです。
さて、昨日の読経練習の前には、地域の別院の本堂を見学させていただきました。
普段は一般の参拝者が入ることのできない場所にも、特別に入れていただきました。
本堂には、ご本尊をはじめ、さまざまな仏具が備えられています。
そして、その一つひとつに名前があり、置く場所にも決まりがあるのです。
これも、しっかり覚えなければなりません。
お経だけでも大変なのに、仏具の名前や配置まで!
僧侶になるって、本当に大変なことなんだなあ……。
しみじみ、そう思ってしまいました。
そして、いよいよ読経練習です。
参加者は、先生、すでに得度された先輩、1年生の同級生、そして私の4名。
先生は70代後半の男性の僧侶の方です。
穏やかな笑顔が印象的で、優しさと人徳がお顔ににじみ出ているような先生です。
私たちが来年の試験で困らないようにと、今年度の試験情報も丁寧に教えてくださいました。
さて、肝心の読経ですが……。
全く、ちんぷんかんぷん!
おまけに、息が最後まで続かない!
自分ではそれなりに声を出しているつもりなのですが、途中で息切れしてしまいます。
先生は、そんな私にニッコリ笑って、
「腹式呼吸の練習をするといいですよ」
と教えてくださいました。
なるほど、腹式呼吸か。
お経を読むにも、体力と呼吸法が必要なのですね。
しかも、お経はただ文字を棒読みすればいいわけではありません。
ちゃんと節回しがあるのです。
先生からは、
「ここはハ長調のレの音で始まります」
などという説明まで!
「音楽の練習ですか!」
と思わず心の中でツッコミを入れてしまいました。
音程、節回し、呼吸。
そして暗誦。
お経を読むというのは、想像していた以上に奥が深い世界なのでした。
練習の最後に、私は先生に質問してみました。
「先生は、このお経をどうやって暗誦されたのですか?」
すると先生は、穏やかな笑顔で、
「1日1行ずつ暗誦して覚えました。300日間かけました」
とおっしゃいました。
「300日……。」
思わず、心の中でつぶやきました。
1日1行。
それを300日。
気が遠くなりそうです。
でも、考えてみれば、先生も最初からお経を暗誦できたわけではないのですね。
毎日少しずつ、積み重ねてこられたのです。
そう思うと、私もまずは1行から始めてみようかな。
……いや、その1行が覚えられるかどうかも怪しいのですが(笑)。
来年5月の試験まで、あと約半年。
果たして、私のお経は「もにょもにょ」から卒業できるのでしょうか。
僧侶への道は、まだまだ、はるか遠く。
そんなことを実感した、60歳還暦女子なのでした。