
「あの朝、渡せなかったもの」
前に書いた朝の話の続きです。読んでいない方はこちらから。
→ 『毎朝、同じ人を見ていた』
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見覚えのある仕草、と自分で書いておきながら、本当はもう気づいていた。
コートの色じゃない。歩き方でもない。
鞄を持ち替えるときの、右手から左手への一瞬の間。あれだ。
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二年前まで、毎朝同じホームに立っていた人がいた。
名前を呼ぶとき、いつも半歩遅れて振り返る癖があって、その半歩の間だけ、私は勝手に期待していたんだと思う。
最後の朝も、同じ半歩だった。ただ、振り返った先に私はいなかった。
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あの日、私が改札の前で何を言おうとして、結局何も言わなかったのか。
半歩遅れて振り返ったあの人が、最後に何を鞄から取り出したのか。
そして今、なぜ私はまだ、見覚えのない誰かの仕草に、あの半歩を探してしまうのか。
ここから先は、まだ誰にも話していない朝のことを書いています。
【先着10名様 ¥100】この先だけ、まだ誰にも話していない気がする。