
空き地には夢と希望とパンが詰まっている
空き地があった。
正確には、潰れた飲食店がそのまま空き店舗になっていた。これが街から外れた場所にポツンとあるなら、整体院やコンビニにでもなって終わりだったと思う。
でもそこは、飲食店が集まる区画の角地。
しかも和食屋が並ぶエリアの角地。
そんなの、期待するなっていう方が無茶じゃん。
無難に和食屋でもいいけど、エスニック系やカレー系なんかもいい。
あぁ、でも土地が広いからイートイン付きのパン屋なんかが最高。
前を通るたびにあれこれと勝手に妄想していたが、空き店舗のまま2年が過ぎた。立地はいいはずなのに、曰くでもあるのかと不安になるくらいには無風の日々だった。そうして期待することすら忘れたある日、そこで蠢く4つの影を見た。スーツ姿の男性4人が店舗の中や外を見て回っている。
パン屋!パン屋こい!!
胸を高鳴らせ、スーツ集団に念を送った。
そして数ヶ月。
私の邪念は届かなかったのか、なにも起きなかった。なーんにもだ。あのスーツ集団はいったい何だったんだ、やっぱり曰くでもあるのかと思って数ヶ月。
なんか、建物が幕で覆われてた。
解体なのか改装なのか、外からはさっぱりわからない。でも、とにかく動いた。これはもう、店がオープンするってことだ!
私のテンションは一気に上がる。帰宅後、「工事始まったよ!パン屋来ないかな!ペンギンベーカリーとか!」と欲望をぶつけた。だが夫は静かに「飲食店なら何でもいいや」と言う。
なんて夢がない奴だ。想像くらい好き勝手やればいいのに。USJ2号店とか。
そうして2か月ほどして、謎のベールが外れ、現れたのは真っ白な建物。
ジムだった。
ジム。
飲食店エリアの角地に、24時間フィットネスジム。
チョコザップみたいな「空き時間にちょっと運動しましょう」じゃない。ガチのやつだ。細マッチョなトレーナーが腕組んでそうなやつ。だって外壁のポスターが、モノクロで黒光りした筋肉のアップなんだから間違いない。
今後はここでご飯を食べながら、米と油で満腹になった腹を抱えながら、「理想のボディを手に入れよう!」という看板を見ることになる。
誰だここにジムを建てようなんて考えた奴は!
いいか、私はな。
肩にメロンパンを乗せるより、腹にメロンパンを納めたい人種だぞ。