
完成しないゲームを、完成させた——『FACTORIZE: 1』制作記 #4 完
これまでのあらすじ
道端のタバコの吸い殻を数えていたら、素因数分解のゲームを思いついた。
会社を辞め、トランプを並べ、友人に遊んでもらいながら形にしていった。
ただの宿題になったり、説明で迷子になったりしながら、物語までできた。
あとは完成させるだけだった。
私は、この「あとは」をかなり軽く考えていた。
「ここを直したら完成」を何度もやった
ここを直したら完成。
そう思って直すと、隣が気になる。
カードをもう少し増やせる。
演出も良くできる。
バランスも、まだ詰められる。
人に遊んでもらうと、自分では気づけなかったことが見つかった。
分かりにくいところ。
強すぎる組み合わせ。
なかなか使いたくならない効果。
作った私は、もうこのゲームの初心者には戻れない。
何度も遊んで、感想をくれた人たちには、本当に助けられた。
ただ、直せば直すほど、次に直したいところが見つかった。
私はずっと、完成とは、
「直すところがなくなった状態」
だと思っていた。
でも、そんな日は来なかった。
最大の競合は、アンパンマンだった
そんなゲームを、ずっと見ていた人たちがいる。
自分の子どもたちだ。
「ゲーム作ってるんだ」
と見せる。
少し触る。
すぐ飽きる。
アンパンマンを見る。
また何か作る。
見せる。
少し触る。
アンパンマンを見る。
強い。
アンパンマンが強い。
私が会社を辞めて作っているゲームより、アンパンマンの方が明らかに強かった。
まあ、当然である。
こちらは個人開発の素因数分解ゲームである。
相手が悪い。
それでも、ときどき子どもたちに見せていた。
そして、ある日。
いつものように遊んでもらったら、すぐにやめなかった。
アンパンマンに戻らなかった。
数字を作る。
結果を見る。
また考える。
楽しそうだった。
私は横からそれを見ていた。
大絶賛されたわけではない。
「パパ、このゲームは歴史に残るよ」
とも言われていない。
ただ、
すぐにやめなかった。
それだけだった。
でも、なんだか、
ああ、ここでいいんだ。
と思った。
完成とは、手を離すことだった
その日、ゲームが完璧になったわけではない。
直したいところは、まだある。
でも、目の前で楽しんでくれている人がいた。
もっと良くできる。
それでも、今のこれを遊んでもらいたい。
その二つは、同時に思っていてもいいのだと分かった。
私にとっての完成は、
「今のこれは、人に渡していい」と決めることだった。
作っているうちに生まれた、別のアイデアもある。
それは『FACTORIZE 2』に持っていこうと思う。
まだ1も出していない。
ずいぶん気が早い。
でも、次に作りたいものがあるからといって、一本目をずっと手元に置いておくこともない。
道端のタバコから、一本のゲームになった
1年ほど前。
私は、道に落ちているタバコの吸い殻を数えていた。
今日は12本。
12 = 2 × 2 × 3。
23本の日は、少しうれしかった。
素数だからである。
そこから、ずいぶん遠くまで来た気がする。
でも、やりたかったことは、最初からあまり変わっていない。
数学を、一度ちょっと触ってみてもらいたい。
今でも、素因数分解が人生でめちゃくちゃ役に立つとは思っていない。
でも、
人生を少し面白くするくらいの力は、あるのかもしれない。
道端のタバコを数えていただけだったものが、本当に一本のゲームになった。
ここまで来られたのは、何度も遊んで、感想を伝えてくれた人たちのおかげです。
作った私には見えなくなっていた分かりにくさも、思いがけない面白さも、見つけてもらいました。
一緒にこのゲームを完成させてくれて、本当にありがとうございました。
『FACTORIZE 1』。
ようやく、
人に渡すことにします。
全4回、読んでいただきありがとうございました。
『FACTORIZE 1』はSteamで本日リリースしました。
カードで数字を作り、素因数分解して戦うゲームです。
自分の作った数字から、思いがけない組み合わせが出てくる。その面白さに、少しでも触れてもらえたらうれしいです。
追記:
ソイ様に体験版のレビュー記事を書いていただきました。
有難うございました。