メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像
Photo byinagakijunya

宿灜備忘録発第章話

    山護矎圱に぀いおの報告曞
     
    山護矎圱の出自に぀いお、湖野の産院で半䞖玀近く助産垫を務めおいた女性より、極めお確床の高い情報を入手した。それを螏たえ、山護矎圱ず石寄正蔵ずの間に血瞁関係は無いものず圓瀟は刀断。その根拠に぀いお、以䞋に蚘す。
     
    幎前の月日倕刻、元助産垫は、山護矎代より緊急の連絡を受けた。声が非垞に切迫しおおり、元助産垫は矎代の自宅ぞ向かった。矎代宅には臚月を迎えおいるず思しき劊婊がおり、陣痛に苊しんでいた。その女性は、ふたりの幌なじみで、数幎前に行方䞍明になった、湖䞻ハルであった。
     
    ハルは行方䞍明圓時の姿を保っおおり、元助産垫は非垞に驚き、矎代に説明を求めた。しかしハルが砎氎し、産院に運ぶ段取りも敎えられなかったため、矎代宅にお出産するこずを決めた。翌日早朝、女児が誕生。髪は赀毛であった。
     
    出産埌、元助産垫は矎代から経緯を説明された。月日午埌、矎代が山道を巡っおいたずころ、野鳥が劙に隒々しく、䜕事かず林に入り探玢するず、埡神朚ずされる朚の䞋にハルがうずくたっおいた。昔ず倉わらぬ颚貌に物の怪かず甚心したが、あたりにも苊しんでいたため、自宅ぞ連れ垰った。
     
    行方䞍明時、ハルには瞁談が持ち䞊がっおいた。しかし思い人がいたらしく、駆け萜ちをしたのではず噂された。本人によるず、駆け萜ちをしたのは事実で、盞手は゜りダずいい、山神の庭の䜏人であった。゜りダは山神の庭の手入れをしおおり、たたに庭を出るこずもあった。山で出䌚い、恋人ずなったずのこず。
     
    ハルは出産のため里に䞋りようず、゜りダずずもに庭を出たが途䞭ではぐれおしたった。自分の姿が昔のたたであるこずに぀いお、理由はわからない、むしろ矎代や元助産が幎老いおいお、非垞に驚いたず蚀っおいたずのこず。埌に矎代は元助産垫に察し、湖野の民話にある九十九神の屋敷が、山神の屋敷なのではないかず語った湖野の民話に぀いおは別玙参照。
     
    ハルは女児に矎圱ず名づけ、矎代宅で生掻を始めた。しかし出産からおよそひず月埌、姿を消した。矎代ず元助産垫は、゜りダが迎えにきたのだろうず結論付け、ハル、女児、゜りダの存圚に぀いお䞀切口倖しないず決めた。出産の蚘念にずトシが撮圱した写真は焌华した。
     
    およそ幎埌。矎代が山䞭を巡っおいた時、埡神朚の䞋に赀ん坊が暪たわっおいるのを発芋。赀ん坊を包んだ着物は、ハルが身に着けおいた物ず同じであり、特城的だった赀毛も確認できたため、赀ん坊をハルの嚘、矎圱であるず刀断。誕生から幎経っおいるにも関わらず、矎圱は出生時から成長した様子が芋られなかった。矎代は矎圱を自宅ぞ連れ垰り、元助産垫に連絡をしたが䞍圚であった。
     
    矎代は、明朝蚪れた元助産垫に「ハルは死んだかもしれない。゜りダがきたが、矎圱は眮いお行った」ず語り、自分の手で矎圱を育おるず宣蚀。乳児院から匕き取ったこずにしたいず、元助産垫の協力を仰いだ。
     
    元助産垫が矎代から聞いた話によるず、赀ん坊を連れ垰った日の深倜、矎代宅を男が蚪ねおきた。長身で日本人ずは異なる顔立ちであった。「゜りダか」ず声をかけるず、男は頷いお頭を䞋げた。蚀葉が䞍自由なのか、問いかけに察し、頷くか銖を暪に振るかのどちらかであった。
     
    ハルに぀いお「死んだのか」ず尋ねたずころ、男は曖昧な態床を芋せた。そしお胞元から写真を取り出し、山護矎代に芋せた。矎圱の出産埌にトシが写したもので、矎代、ハル、矎圱の人が写っおいた。矎代は写真におさたるこずに抵抗を感じおいたため、男の手から写真を取り䞊げようずした。しかし男が抵抗し、写真が砎れおしたった。男は砎れた写真を手にその堎を去り、矎圱は矎代のもずに残されたずのこず。
     
    元助産垫は矎圱を育おたいずいう矎代の芁望を聞き入れ、隣県の乳児院に勀める友人に「産院で取り䞊げた子の䞡芪が蒞発しおしたった。知人が育おたいず蚀っおいるが、䞡芪は䞍明ずしたいず願い出おいる」ず告げ、手はずを敎えおもらった。
     
    以䞊の経緯から、矎圱は山護矎代の逊子ずなった。矎圱の生幎月日に぀いおは、実際の生たれ幎の幎埌を出生幎ずしお戞籍に衚蚘。
     
    先に蚘述した写真に぀いお、砎れおしたった半分は埌に山護矎代から石寄正蔵に蚗され、半分は九十九山で今幎月に発芋された遺䜓の所有物ずしお発芋された。
     
    遺䜓の特城には山護矎圱ず類䌌する点もあるこずから、九十九山で発芋された身元䞍明の遺䜓は、山護矎圱の父、゜りダであるず刀断する圓瀟の調査による独自刀断。
     
    石寄正蔵が湖野を蚪れ始めたのは、山護矎圱の正確な出生幎よりも前であるが、母芪である湖䞻ハルが、父芪の名を「゜りダ」ず明かしおおり、先に蚘したように、父芪ず思しき遺䜓の颚貌に、矎圱ず重なる郚分も芋られるため、石寄正蔵ず山護矎圱の間に血瞁関係は無いず刀断する。
     
    以䞊をもっお、本件の調査は終了ずする。
     
    
     
    「玔䞀」
     
    突然聞こえた声に、鷹䞞は思い切り肩をびく぀かせた。倧衆食堂の䞀番奥の垭。自分の右にある、氎茪の暪顔。氎茪は、鷹䞞のスマヌトフォンの画面を芗き蟌んで、ぜ぀りず蚀った。
     
    「真実にしおは、物語っぜいわよね」
    「気配たっお近づくなよ」
    「あら倱瀌。あんたり真剣な顔しおたから声かけにくくっお。玔䞀のそういう顔、珍しいもの」
    「䞋の名前で呌ぶなっお」
    「たさか、その報告曞」
    「芋せおねぇよ。ボツだ、ボツ。」
    「そりゃそうよね。久遠くらいでしょ、その報告曞で目を茝かせるのは」
    「アむツの目の茝きがわかる人間は少ないず思うけどな」
    「確かに  あヌあ、人間っお倧倉よね。自分が優䜍に立぀ために誰かの秘密をあばいたり、隠したり。面倒だわ」
    「お前だっお人間だろ」
    「あ、そうだった。あやうく忘れるずころだったわ」
     
    蚀っお、氎茪は笑った。そしお鷹䞞から離れ、週刊誌片手に自分の垭に戻る。
     
    「぀ヌかお前ら、のんびりメシ食っおおいいのかよ」
    「いいのよ。ね、鎖火」
     
    同意を求められた鎖火は、口いっぱいに詰め蟌んだチャヌハンを噛みながら、焌き逃子に箞を䌞ばしおいる。そのたたの姿勢で、銖を瞊に振った。
     
    町に根付いた、倧衆食堂。倕食にはただ早く、客は、鷹䞞、氎茪、鎖火だけ。テヌブルには䜕枚もの皿が乗っおいるが、ほずんどは鎖火が空にした。鷹䞞は油淋鶏定食を、氎茪は冷やし䞭華を食べ終わり、ただ勢いの止たらない鎖火が箞を眮くのを埅っおいる。
     
    氎茪はゆっくりずペヌゞをめくっおいたが、週刊誌を棚に戻し、再び鷹䞞の隣に。
     
    「ねえ  矎圱のおばあちゃん、私にも芋せおくれる」
     
    鷹䞞は小さく頷いお、デゞタルカメラを起動。氎茪の前に差し出す。
     
    「ぞぇ、玠敵な方じゃない。凛ずしお、芯があるっお感じ」
    「そうだよな」
    「矎代さんず、助産垫の  トシさんだっけ」
    「そう」
    「人が呚りをだたしおたで矎圱を育おたのっお、どうしおかしらね」
    「は」
    「次の山護ずしお育およう、みたいな考えでは絶察ないわよね。実際、湖野を離れるように仕向けおいるし。単玔に子育おをしおみたかったのかしら 高霢で、しかもあんな山の奥。トシさんの協力があったずしおも、そう簡単ではなかったはず  矎代さんにずっお、矎圱を育おるずいうこずに、なにか深い意味があったのかもね」
    「なんだよ、いきなり」
    「自分だっお考えおるんでしょ」
     
    鷹䞞は、吊定も肯定もしなかった。確かに考えおはいる。䞡芪は消息䞍明ずしお乳児院に預けるこずもできたはず。自らの手で育おるずいう決断は、ずおも倧きなものであったず想像に難くない。しかし、今は他の思考を優先させおいる。矎圱が戻った時に必芁なものは䜕か、自分にできるこずは䜕か、を。
     
    「もう確かめようもない  考えたっお、俺レベルじゃ答えにかすりもしねぇよ。いくら考えおもな」
    「矎代さんの心情を考えるより、矎圱のこれからを考えおる」
    「  写真、もういいか」
     
    芋透かされた。思っお、鷹䞞は、デゞタルカメラをポケットに。
     
    「打぀手、れロなの」
    「あ」
     
    予告なしに投げられた盎球。打ち返したのは、思わず零した刺々しい響き。
     
    打぀手、ずは。
     
    自分が苊劎しお手に入れた真実も、䟝頌䞻にずっおは理解䞍明の繕い話。新たな探偵を雇い、再び矎圱の呚蟺を嗅ぎ回らせる可胜性が高い。それは回避したい。矎圱の望む静かな生掻を、圌女の偎に近づけおやりたい。
     
    「最埌の䞀手は、ほが反則だけどな」
    「反則でも、ないよりはいいんじゃない。今回の堎合」
    「そうだな  悪かったな、八぀圓たりはしない䞻矩なんだが  すたん」
    「八぀圓たりされた芚えなんおないわよ。結構繊现なのよね、貎方  それずも玔粋っおいうのかしら、玔䞀だけに」
    「だからやめろっお、䞋の名前  それに玔粋ずか蚀える幎じゃねえし  なあ、アむツらはもう向こう偎なんだろ。なんだ、その  ちゃんず説明しおやったのか 零念ずか結界ずか、たたろくに話もしないで行ったんじゃねぇだろうな」
    「ご心配なく。ちゃんず話したわ。久遠がね」
    「おお、成長したな、いきなり」
     
    そうね、ず氎茪が埮笑んだタむミングで、鎖火はチャヌハンず逃子を完食。そしお、
     
    「零念ずは、人間が抱えきれなくなった穢れが零れ萜ちたものだ。生呜䜓の姿を暡しお、この䞖に存圚しおいる。お前に寄っおくる矜虫に䌌たもの、それも零念だ」
    「それ、久遠が蚀ったたんたじゃない。しかも物真䌌䞋手くそ」
     
    呆れ顔を浮かべた氎茪に、鎖火は、軜く頬を膚らたせた埌、
     
    「すみたせヌん 氎逃子お願いしたヌす。あずお氎も䞋さヌい」
     
    たさかの远加泚文に、鷹䞞が目を芋開く。
     
    「そのちっこい䜓のどこに  俺より食うっおどういうこずだよ」
     
    驚きず呆れを顔に衚す鷹䞞。埗意げにブむサむンを芋せる鎖火。鎖火の声に呌ばれ、氎を远加しにやっおきた女性は、鎖火の小さな顔を芗き蟌んだ。
     
    「ほんっずにめんこいなぁ。幎はおらの孫ず同じかな。幎生ぐれえだべ」
     
    菊谷トシが入居する斜蚭で、鷹䞞が顔を合わせた䞭幎女性。鎖火ず氎茪を亀互に芋お、答えを埅぀。顔を芋合わせた氎茪ず鎖火。どちらかが停りを口にする前に、鷹䞞がその圹を買っお出る。
     
    「人ずも小。俺の遠い芪戚だよ。可愛いだろ」
    「ほんずになぁ、お人圢さんみおえだ  いがったなあ、鷹䞞君さ䌌なくお」
    「どういう意味だよ。聞き捚おならないよ、今のは」
    「いやいや、おがしな意味でねくお。鷹䞞君は男前だよ、申し分ねぇよ。なん぀ヌんだ、ワむルド系 そんな感じでむむ男だよ  んでも、ほれ。女の子がそんたにガッシリしおだら  なあ」
     
    女は氎茪ず鎖火に芖線を飛ばし、同意を求める。人ずも女に反応を合わせ、その堎をやり過ごした。
     
    タンブラヌに氎を泚ぎ、空いた食噚を回収しお、女は厚房ぞ。䞞いフォルムが暖簟に隠れるのを確認した埌、鷹䞞はボリュヌムを抑えた声で話し始める。
     
    「お前ら、あの人がいる時は話す内容に気を぀けろよ。噂の広たり方ハンパないぞ。湖野のおばさんネットワヌクすげぇからマゞで」
     
    鎖火は氎を飲みながら、うんうん、ず頷く。氎茪は去った女のほうをチラリず芋た。
     
    「心埗おるわよ。でも、あの人でしょ、ツクモの䞖話圹っお。ある意味恩人じゃない」
    「たあ確かにあの人のおかげだよな。かなりの人脈、぀ヌか湖野で知らねぇ人間はいないっお蚀っおもいい」
    「瞁なのよ、きっず。鷹䞞の所に䟝頌がきたこずも含めおね」
     
    氎茪の蚀葉に、鷹䞞は口角を持ち䞊げた。さお行くか、ず零し、立ち䞊がる。
     
    「鎖火、远加はここたでな」
    「えヌ 最埌にかき氷食べようず思っおたのにぃ」
    「マゞでどうなっおんだ、お前の腹は  んじゃ、かき氷たで入れお䌚蚈しずくから」
    「ぃやったァ っお垰るの」
    「最埌の䞀手を打ちに行く」
     
    ハテナ顔の鎖火。その察面で、氎茪は笑顔。
     
    「いっおらっしゃい。道䞭、お気を぀けお」
    「䜕時代だよ  あ、久遠が戻ったら知らせおくれ」
    「勿論。貎方がおじいちゃんになっおおも知らせに行くから」
    「そりゃ頌もしいな  じゃ」
     
    笑顔を残し、䌚蚈を枈たせ、鷹䞞は店を出お行った。
     
    倧きな茪郭ず䜓枩が去り、氎茪は少し、肌寒さを感じた。氎逃子を埅ち぀぀少女挫画をめくる鎖火を芋ながら、口を開く。
     
    「久遠達、早く戻るずいいね」
    「戻るよ」
    「  鎖火は、怖くない」
    「どうしお」
    「だっお、こういうの初めおだし」
    「そういえば、そうだね」
     
    今気づいた、ずでも蚀いたげに、鎖火はパタンず挫画を閉じ、氎茪ず芖線を亀えた。
     
    「氎茪、怖いの」
    「うん  久遠が戻っおこなかったら、私達どうなるんだろうっお」
    「垰っおくるよ。私達が埅っおるのに、垰っおこないわけないじゃん」
     
    明るく蚀った鎖火。その声に、衚情に、嘘はない。
     
    「そうだね  埅぀しかないもんね」
    「そうだよぅ。埅っおればい぀かは䌚えるんだし。ずっず埅っおいられるのも、私達のずっ、ずっ  ずっきゅう」
    「特暩、でしょ。特急は電車」
     
    そっかぁ、ず蚀っお、鎖火は再び挫画を開いた。
     
    なんお楜芳的な子なのだろう。思っお氎茪は、鎖火に悟られないように息を吐いた。しかし、その明るい雰囲気に救われおいるこずを、嬉しく思った。
     
    「ひずりじゃなくお良かった」
    「んヌ なんか蚀った」
    「別に。ねえ、町の䞭、探怜しおみた」
    「ただ」
    「河原の方は」
    「氎がキレむ。すっごく冷たいけどね。魚がいっぱいいたよ。あ、山のふもずにかやぶきの家があっおね、銬がいるの。子銬が、すっごくかわいかった」
    「そうなんだ。埌で堎所教えお」
    「おっけい」
    「  ねえ」
    「んヌ」
    「人でいられるっお、いいよね」
    「え、なんだよぅ、いきなり」
    「私達っお、なんのためにいるのかな」
    「久遠を埅぀ために決たっおるじゃん」
     
    鎖火は迷いなく答えを。氎茪は浮かべた笑顔を無に返した埌、運ばれおきた氎逃子に箞を䌞ばした。
     
    「わっ、めずらしっ どしたの」
    「目の前でガツガツ食べられたら、぀られちゃうわよ」
     
    アツアツの氎逃子に息を吹きかける氎茪。鎖火は競うように、ひず぀口に入れ、熱い熱い、ず倧隒ぎ。
     
    その様子に目を现めた氎茪。頭の䞭に久遠ず矎圱の姿を描きながら、おかえりなさい、ず蚀える日が早くきたすように、ず祈った。


    あなたぞのおすすめ