
掌編小説|大仏、市役所に行く。
大仏が本殿から出てきて、マシンガンをぶっ放していた。
血だらけだ。辺りにはもう生きている人はいなくて、大仏は市役所の方へと歩を進めた。
その間もマシンガンを間断なくぶっ放すものだから、新たに人が出てきてもすぐ死んだ。大仏が通った後には血生臭いにおいが充満した。大仏が角を曲がると、少し行ったところに市役所があった。すぐにマシンガンは火を吹いた。市役所の窓ガラスや自動ドアは割れて粉々になった。ガラスが割れたら中身が丸見えになって、中の人が更に撃たれて死んだ。正面入り口から大仏は入ろうと思ったが高さが全然足りず入れなかった。実際入れないことはないんだけど、匍匐前進とかしたら入れるんだけど、そこまではしなそうだった。
市役所職員や来所者たちはその様子を見て二階の階段を登った。大仏は東玄関の方に回り込み、マシンガンを突っ込み、二階へ逃げる人たちをできる範囲で殺した。できる範囲で良いって、バイト先の店長に言われたからだ。でも大仏個人としてはもっと満遍なく全部殺したくて、上腕まで玄関の中に突っ込んだ。その割には何人かしか殺せなかった。一度腕を抜いてから正面入り口に戻ろうとしたけれど、玄関の金具が偶然、返しが付いてる釣り針みたいな役目を果たして、大仏は抜く動きをするとめちゃくちゃ痛かった。念仏を唱えることにより痛みを超越し無理矢理抜こうとした。でも効き目は全然なくて、とんでもなく痛かった。でも、もう抜くしかないから続けた。皮膚がびりびりと裂けた。痛いものだから、マシンガンをその分余計に乱射した。もう犬やオウムくらいしか倒せなかった。あと『⑤番 健康保険』と書かれた、吊り下げ看板が外れて落ちた。あとパキラの植え込みが弾けたくらいでした。
現役世代から税金を取りすぎだ! と、現役世代が立ち上がった。たくさん年金を貰い過ぎている人を上から順番に並べ替えして、ランキング一位から順番に訪問していこうということになった。
『⑦年金保険』の窓口まで彼らは赴き、担当者を脅し、エクセルファイルを立ち上げさせ、「データ」→「並べ替えとフィルター」→「昇順」の順に操作させようとしたら、もうとっくに並べ替え済みだった。しかもそのデータはプリントアウトされていて、何なら担当者の目は積年の恨みでぎらぎらしていた。その目を見た現役世代の士気は爆上がりした。ランキング一位の家に凸しに行くぞ! えい、えい、お〜 と勝鬨を上げた。東玄関に何か大仏的なものが詰まっていて出づらかったけれど、みんな隙間から一人ずつ出たりして、結局みんな出た。みんなは「大仏みたいなやついたけど、何やってたんだろうね?」と、とても不思議そうだった。
市役所から出た現役世代は、年金受給ランキング第一位のカワマタ家の住所を共有した。現役世代だから、みんなLINEグループなんかはすぐに作って、情報共有は正確で本当に早かった。普段から老人の相手をしている市役所職員や町内会役員の人たちなどはみんなこんな人たちばかりなら、なんでも話が早いし、やっぱりSNSとかできない老害は死んだ方が良いと思った。第二駐車場にずらりと停められた公用車に彼らはそれぞれ分乗して、カワマタ家に向かった。
なお大仏は、あまりにも痛過ぎて腕を抜くのを途中で諦めた。
その頃、丘の上のカワマタ家では、市内の老害たちが集結を完了し、装備を固めていた。一か月前に回覧板は既に回っており、そう言った襲撃があることは彼らは周知済みだった。市役所に潜り込んだスパイからカワマタ家の代表電話に直電が逐一入り、最新情報は常に把握されていた。彼らは電子データで遣り取りする文化はほとんどなかったものの、その代わりにすぐ電話を掛けるため、実は意外と上手いことやれていた。だから現役世代の行動は筒抜けで、挟み撃ちの陣形に各部隊が配置されていた。
つまり後期高齢者の方が実力も上なのだ。そう言うわけで年金もそれなりに貰って当然だったのだ。実力社会なのだ。戦う前から勝負はついていたのだ。要するに黙って税金だけ払っとけと言うことだった。民主主義なんだから、人数が多い方が強いのだ。まだまだだったな。青二歳。
(終わり)