
志ん生❸
前回までの志ん生(事実列挙スタイル)
・志ん生は女として産まれた。
・両親は物心つく頃には死んでいて、主に祖母に育てられた。
・いとこの双子の女も同居していたが、二人とも見た目は男だった。
・東京湾が汚かったため、川の水をきれいにしようと家のスポンジでフィルターを作った。
・小6で側溝を歩く癖が治った。
・中学時代、いとこの双子と卓球をした。
・中3の9月24日にXデーを迎えた。
私(志ん生)は、高二ときに結婚した。
そういえば私は高校に通っていた。それで、毎日真面目に通っていた。制服もちゃんと着て、時間通りに登校した。ホームルームと一時間目の間に来る人が結構多くて、私もそうしようかな、と思ったけれどそうしなかった。それはホームルームで点呼をとるからだった。返事がない人のポイントは引かれていった。ポイントは一体何なのか当時分からなかったけれど、何やら気味が悪かったので私は時間を守った。
私のいとこにあたるおとこおんなの双子は私よりも先に結婚した。
Xデー以降、結婚はどういう形でも良くなった。たくさん人が死んだから、国はとにかく早く結婚するように仕向けた。ちなみにクラスメイトは飼っていたトカゲと結婚した。だから、おとこおんなの双子同士の結婚なんて全然普通だった。
そのとき彼女らは戸籍謄本を取ったんだけど、名前が「あまら/かまら」じゃなくて、「あまね/かなえ」になってた。
そんなことってあるのかと私は疑問だった。だっておかしいじゃない。親も「あまら/かまら」って呼んでたし、学校でもそう呼ばれてた。
だから要するに戸籍だけ「あまね/かなえ」で、それ以外は全部「あまら/かまら」で登録されてた、ということだ。
ところで、私も他のみんなと同じで生活が大変だったから、結婚して補助金をもらうことにした。
ポイントが使えることをそのときに教えてもらった。私のポイントでは意識があるのかないのかわからないようなクラスメイトしか選べなかったけれど、その中から男をひとり選んで結婚した。
そのときに戸籍を取ったら名前が「志ん生」じゃなくて「志生ん」になってた。
「しおん」って読ませたいらしかった。だからこの話の始めに「志ん生は本名」って言ったけれどそれは嘘だ。それはあんたに私が志ん生として生きてきた気持ちを追体験してもらいたくてついた嘘だ。
私は今、24歳で、え? 若く見えるね、とかいちいち言わなくていいよ。それで、あの日からずっと空は薄緑色だったけれど、この前久し振りに見たら空は青く見えた。もう国は空をシートで覆うのやめたのかもしれないし、私の目の方がおかしくなったのかはわからないけれど。
確かに今私は公園のベンチに座っているけれど、イヌを連れた人をちらほら見かけるし、家に帰ればパソコン通信もできるようになった。
(Xデーの影響で日本全体を薄緑色のドーム状の遮蔽シートで囲んだことに対して)私はそういうどうしようもないことにまで抵抗するのは暗渠の件以来やめたから、今更どっちでもいいんだけど。
この前、彼、というか夫のちんぽが私のまんこに入って、子供が産まれた。
産まれた子供には一応ちんぽが付いてたけれど、それはまだどっちかわからなくて、私はどんな名前を付けて良いのかわからなくなった。すごくめまいがした。しばらく空が青くなかったから。ていうかずっと熱ある。病院行けてないからわからないけれどなんかの病気だよ。ウチらでさえこんなにバカ頑張ってるのに、大人って毎日16時間とか普通に働いて、そんなの正気の沙汰じゃないよ。もう風車なんか止めていいよ。
(終わり)