
世界文学全集のこと
ごあいさつ
こんにちは。
ここに引っ越してくる前の家に、
筑摩書房の文学全集がありました。
1960年代後半から刊行された
「世界文学全集」(全70巻+別冊)
「日本文学全集」(全60巻?)
の両方です。
リンク先を見ていただければ
おわかりいただけるように…
あの全集のラインナップは
それまでにない斬新さと
一種の独創性がありました。
いわゆる「名作」だけを
集めたのではない、
従来の価値観に挑戦するような
試みが感じられるのです。
なぜ家にあったのか
今は亡き父方の叔父が
とある出版社の書籍販売の
セールスマンをしていた時代が
ありまして。
おそらく、その頃にやった
「自爆営業」のひとつではないかと
にらんでいるのですが…
それはさておき。
これらの全集は
「図書館に行かなくても
手軽に文学作品を読める」
という非常にゴージャスな体験を
プレゼントしてくれるもので
ありました…
が。
ですが、なのです。
「いつでも読める」となると
なかなか読もうという気が
起きるものではありません。
いきおい、読むのはいつも
「お気に入り」のいくつかの巻に
限られることになります。
なんども読んだお気に入り
いちばん読んだのは、
「世界文学全集」第9巻です。
抄訳でしたが、丸1冊を割いて
『西遊記』が収録されていました。
この本が好きすぎて、
引っ越しで本を処分する際に
この1冊だけ手元に残して
持ってきたくらいです。
ちなみに、当時はもう
古本屋でも「文学全集」など
まともに買い取ってくれる店はなく…
スーパーの古紙回収コーナー
(重さでスタンプが貯まるヤツ)に
ちょっとずつ捨てに行ったのでした。
いま思い返しても胸が痛みますが、
タイムリミットが迫っていたので
そうするより他にありませんでした。
ほかにも数冊、
手元に残したいと思うような
お気に入りの本があったのですが…
「これを残すならあれも」
と、どんどん冊数が増えそうなので
泣く泣くあきらめた次第です。
ほかのお気に入り
「世界文学全集」第7巻所収の
『千一夜物語』
(アラビアン・ナイト)
もよく読みました。
ほんとうに抄訳だったのですが、
収録されている話がどれも面白く、
夢中になって読んだものです。
「日本文学全集」では
晩年の正岡子規の日記と…
それと同時期の物事を記録した
高浜虚子の手記もよく覚えています。
子規に振り回される
周囲の人々の様子が、
別々の視点から描かれているのが
非常に面白かったのです。
役に立ったのか
上に挙げたのは、いずれも
4回以上は読み返した
「お気に入り中のお気に入り」
でして。
一度きりしか読まなかった作品なら
まだたくさんあります。
徳富蘆花の「不如帰」を読めたのも
この文学全集が
家にあったからですね。
インターネットのない時代、
これら筑摩書房から刊行された
「日本」と「世界」の文学全集には…
文庫で手に入りにくいどころか、
そもそも古書店を巡らなければ
読むことのできない作品が、
多く収録されていたのです。
こうした入手困難な名作を
多感な時期に読むことができたのは、
私にとって大きな財産になったと
感じています。
「役に立ったのか?」
…愚問ですね。
そもそも教養というものは
「役に立てるために」
身につけるものではない、
…と思っています。
つまりは
「役には立たなかった」。
言ってしまえば
そういうことです。
しかし、「役に立つ」以上に
「面白い体験ができた」ことに
違いはありません。
そんなわけで
思いつくままに書いていたら
あちこちに飛んで
まとまりのない話になりました。
次回は、その「お気に入り」の
『西遊記』について
語れれば、と思います。