
The Beatles(ザ・ビートルズ)「A Hard Day’s Night」と新聞奨学生時代の記憶
先日、ふとしたきっかけでビートルズの名曲「A Hard Day’s Night(ア・ハード・デイズ・ナイト)」を久しぶりに聴きました。冒頭の「ジャーン!」という和音が鳴った瞬間、心の奥にしまっていた記憶が一気によみがえってきました。それは、私が専門学校生として新聞奨学生をしていた頃の記憶です。
「A Hard Day’s Night」は直訳すると「きつい一日の夜」。ジョン・レノンの歌声が「犬のように働いたけれど、君に会えば元気になれる」と歌うその歌詞は、若者らしい恋愛の歌であると同時に、働くことの大変さと、それを支えるものの存在をテーマにしています。私はその歌詞を、当時の自分の生活と重ねずにはいられませんでした。
新聞奨学生としての生活
高校を卒業して進学した私は、経済的な理由から新聞奨学生という制度を利用して学費を賄いました。新聞奨学生とは、学業と並行して新聞配達や集金などの業務を行うことで、学費や生活費の援助を受けられる制度です。
一見すると「働きながら学べる」素晴らしい制度に思えるかもしれません。しかし、実際の生活は想像以上に厳しいものでした。
朝刊配達は未明の時間帯。まだ暗い街を自転車で走り回り、ポストに新聞を差し込む。その後は授業に出席し、疲労が溜まった体を引きずりながら勉強しました。夕方になると、今度は夕刊配達。さらに月末・月初めには集金業務が待っており、時には折り込みチラシを仕分ける作業もありました。
一般の学生が放課後にアルバイトをして遊びや趣味に時間を使えるのに対し、私は常に時間に追われていました。確かに、他の学生よりも現金を手にする機会は多かったかもしれません。しかし、自由な時間はほとんどありませんでした。
「働きづめの一日」を歌うビートルズ
そんな生活を思い返したとき、「A Hard Day’s Night」の歌詞が胸に響きます。
きつい一日の夜さ、犬のように働いてきた。
でも君に会えば、すべてが報われるんだ。
この一節は、当時の自分に重なります。恋人に会う余裕はなかったとしても、「働いても働いても自由がない」という現実はまさにハード・デイズ・ナイト。授業が終わればすぐ配達、休日も集金に追われ、気がつけば季節が変わっている。そんな日々でした。
ただ一つ違うのは、ジョンやポールが歌うように「恋人に会えば癒される」という部分。私の場合は、恋人ではなく「将来の夢」や「学費を支えているという安心感」が支えでした。それがなければ、とても続けられなかったでしょう。
自分にとっての「ご褒美」
新聞奨学生の生活の中で、唯一の楽しみは、授業の後にほんの少しだけ立ち寄るレコード店や書店でした。疲れた体で店内を歩くと、音楽や本の世界が自分を現実から解放してくれる。ビートルズのアルバムを眺めたり、輸入盤を手に取ったりする時間は、短くても心の栄養になっていました。
「A Hard Day’s Night」は、1964年に公開された同名映画の主題歌でもあります。映画は、ビートルズの忙しすぎる日常をコミカルに描いた作品で、常にファンやマスコミに追いかけられる姿は、ある意味で私たち新聞奨学生の生活にも通じるものがあります。自由が制限され、時間に追われる日々。けれど、その中で音楽や仲間に支えられて生きていく。その構図はとても似ているのです。
あの頃を振り返って
今になって思えば、あの頃の私は「大変さ」の中で生きる術を学んでいたのかもしれません。働きながら学ぶという経験は、決して楽ではなかったけれど、確実に自分を鍛えてくれました。
「A Hard Day’s Night」を聴くと、あの慌ただしい生活が鮮明によみがえります。そして同時に、「あの時間を乗り越えたから今がある」と思えるのです。
もちろん、ビートルズのように世界を変える大スターになれたわけではありません。けれど、自分なりに必死で一日一日を生き抜いてきたことは、間違いなく私の誇りです。
最後に
「A Hard Day’s Night」は、ただの恋の歌ではなく、働くことの大変さと、それを支える存在の大切さを歌った曲です。新聞奨学生時代の自分の姿を重ねることで、この曲はより身近でリアルなものになりました。
忙しい日々に追われている人にこそ、この曲を聴いてほしいと思います。もしかしたら、あなた自身の「ハードな一日」を乗り越える力になってくれるかもしれません。