
高級ブランドは、なぜ一等地に店を構えるのか。御堂筋を歩いて考えたこと
大阪・御堂筋。
この通りを歩いていると、
ついつい建物に目が向いてしまう。
ルイ・ヴィトン、シャネル、エルメス。
世界的な高級ブランドが、立派な店舗を構えている。
以前なら、ただ「素敵だな」と眺めていたと思う。
でも、不動産の仕事に携わるようになってから、少し見方が変わった。

これだけの一等地で、いったいどれくらいの売上があれば採算が合うのだろう。
そんなことを考えるようになった。
一等地に店を構える意味
御堂筋のような商業エリアでは、同じ通りでも立地条件によって不動産の価値が変わる。
間口の広さ、人の流れ、建物の視認性。
条件の良い場所ほど、賃料も高くなりやすい。
さらに、高級ブランドの店舗は、
内装や空間づくりにも相当な費用をかけている。
それだけの費用を負担してまで、
なぜ一等地にこだわるのだろう。
調べてみると、高級ブランドの店舗には、
商品を販売する以外の役割もあるという。
ブランドの世界観を伝え、
特別な体験を提供する場所。

確かに、御堂筋の高級ブランド店は、
入店しなくても印象に残る。
ショーウィンドウや建物のデザインを見るだけで、そのブランドらしさが伝わってくる。
一等地に店を構えること自体が、ブランドの価値を伝える手段になっているのかもしれない。
店舗の利益だけでは測れない価値
ここで、もうひとつ疑問が浮かんだ。
仮に、ある店舗の売上が思うように伸びなかったとしても、ブランドはその店舗を維持するのだろうか。
店舗の採算を考えるなら、売上だけでなく、商品原価や人件費、賃料なども考えなければならない。

でも、高級ブランドの旗艦店には、数字に表れにくい効果もあるのではないだろうか。
店舗を訪れた人が、
その場で商品を購入するとは限らない。
でも、そこで感じた特別な空間や体験が、
ブランドへの印象を深めることもある。
そして、その印象が、
後日の購入につながるかもしれない。
また、実際に店舗へ入らなくても、街を歩く人の記憶にブランドの印象が残ることもある。
もちろん、
だからといって採算を無視できるわけではない。
店舗単体の収益性と、ブランド全体への貢献。
この二つを分けて考える必要があるのだと思った。
不動産そのものを買うブランドもある
さらに興味深かったのが、
高級ブランドによる不動産取得だ。
グッチなどを傘下に持つケリングは、2024年にニューヨーク五番街の不動産を取得した。
プラダも2023年、同じ五番街で不動産を取得している。
なぜ、巨額の資金を投じてまで、
一等地の不動産を確保しようとするのだろう。

理由のひとつは、
長期的に重要な立地を確保するため。
賃貸借契約には期間があり、
更新や賃料改定などの問題もある。
一方、不動産を所有すれば、
取得時の資金負担に加え、
維持管理費や将来の改修費なども発生する。
それでも、賃貸借契約の更新に左右されにくくなり、長期的な店舗計画を立てやすくなる。
高級ブランドにとって、不動産は単なる店舗の入れ物ではなく、将来を左右する経営資源なのだ。
あの華やかな店舗の裏側に、
こんな経営判断があるとは。
ブランドが街を育てるのか。街がブランドを呼ぶのか
今度は、貸主側の視点から考えてみた。
建物のオーナーにとって、
賃料収入はもちろん重要だ。
でも、どんなテナントが入居するかによって、
建物の印象は大きく変わる。
魅力的な店舗が集まれば、人の流れが生まれ、
通り全体の価値を高めることにもつながる。
もちろん、ブランドの知名度だけでテナントの良し悪しは判断できない。

賃料の支払能力、契約期間、将来の事業継続性。
貸主として考えるべきことは、たくさんある。
それでも、目先の賃料だけでは測れない価値があるのだと思う。
高い賃料を払ってくれるテナントと、
長く建物や街の価値を高めてくれるテナント。
理想は、
その両方を兼ね備えていることなのだろう。
ブランドが集まるから、
その街に価値が生まれるのか。
それとも、価値のある街だから、
ブランドが集まってくるのか。

おそらく、どちらか一方ではないのだと思う。
以前は、華やかな店舗を見て楽しんでいた。
今は、建物の賃料水準や収益性、ブランドの出店戦略まで気になるようになった。
どうやら私の職業病は、
御堂筋を歩くたびに進行しているらしい。
でも、それが面白い。
ブランドにとって良い立地とは何か。
そして、貸主にとって良いテナントとは何か。
まだまだ勉強することは多い。

でも、同じ御堂筋を歩いているのに、
以前とは見える景色が違う。
その変化が、今はとても楽しい。
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参考資料
本記事の執筆にあたり、以下の公開資料を参考にしました。
* Cushman & Wakefield
「Changes in Ownership: The Impact of Evolving Real Estate Strategies for Luxury Retail」
(高級ブランドの不動産所有戦略)
* JLL
「Luxury retail 2026: quality over quantity」
(ラグジュアリー小売市場の動向)
* Kering(2024年)
「Acquisition of Prestigious Fifth Avenue Property in New York City」
(ニューヨーク五番街の不動産取得)
* PRADA S.p.A.(2023年)
「Discloseable Transaction in relation to Acquisition of Property」
(ニューヨーク五番街の不動産取得)
* Kering(2025年)
「Kering and Ardian sign an investment agreement regarding prime real estate assets in Paris」
(パリの一等地における不動産投資)
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※本記事は公開情報を参考に、不動産の視点から筆者が考察したものです。個別店舗の収益性を示すものではありません。
※掲載画像はすべてAIで生成したイメージ画像です。実際の店舗・建物とは異なります。