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Photo bynai3_5raku

該当作梨【毎週ショートショート】

    ここは蟻の実(ありのみ)国。本日は一大行事が開かれる。
    皇帝の娘が、婿選びを行う日がやってきたのだ。

    婿候補として名を連ねた若者たちは、自慢の梨をたずさえ姫の前に参上した。代々、姫から一番良い評価を与えられた梨を持った者に婿の座が与えられる習わしである。

    「準備は整いましてございますか、姫様」

    護衛人の蘭丸が尋ねる。姫を一瞥したが、紅潮した顔を隠すようにすぐさま下へ向き直った。

    「ああ、始めてよいぞ」

    どこか憂いを込めた様子で、姫は答えた。胸の内を明かそうと蘭丸に視線を移したが、「承知。」と言って去ってしまった蘭丸の背中を、ただ追いすがるように見つめるばかりであった。

    「この梨はなんと種なしでございます!食べやすさにかけては天下一品!」
    「世界で一番甘い梨。一瞬でほっぺが落ちてしまいましょう。」

    数々の候補の中から、手筈通り一人の若者が婿として選ばれた。

    しかし、あくる朝には姫様の姿はどこにもなかった。
    不思議なことに、姫様と一緒に護衛人までが行方不明なのである。

    全てを悟った婿は一人呟いた。
    「どの梨も、姫様には選ばれなかったのだ。該当作なし(該当作梨)じゃった。」

    *この記事は、以下の企画に参加しております。


     
     
    ぎり昭和生まれのこじらせ派遣社員。下流を悠々自適に彷徨いながら、言葉を紡いで楽しく暮らしてます。美味しそうな餌があればパクっと食いついちゃう、好奇心旺盛なメスです。

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