メインコンテンツへスキップ
見出し画像

#5-9 イオフィリアの役割|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街

    ←前のはなし    |    →次のはなし

    第9話 イオフィリアの役割


    地上は白い雪に覆われて薄暗く、すっかり冬景色だった。
    タトはマントの首元を押さえた。

    「ふあ〜!!ミミはやっぱり外がいいな!」

    ミミは大きく伸びをすると、

    「ちょっと狩りに行ってくるー!」

    そう叫ぶと、弾けるように冷えた森へと駆け出して行った。

    ミミを見送ったあと、タトが言った。

    「ボクはイオフィリアの所へ行ってくる」

    「僕も行くよ」
    すぐにレイが応じた。


    塔の螺旋階段を上ろうとした時、イオフィリアが部屋の奥に立ってこちらを見ていた。

    タが少し跳ねるように驚く横で、レイがサラリと声をかけた。

    「ああ、イオ。ちょうどよかった。話がしたい」

    「ええ。よろしいですよ」


    *


    塔の一室で暖炉の準備をすると、ルリが熱いお茶を淹れた。

    「それで……結局きみは、何者なの?」

    タがゆっくりと口を開く。タと同じ顔の、トの目線が鋭い。

    「…私は、この世界の何者でもありません。観測し、反映されるのを待っています」

    「観測し、反映…?」
    レイが顎をつまんで反芻する。

    「私は長い間この場所で、必要とされるのを待っています」

    仮面の奥から抑揚のない声が響く。

     
    「あなたは、人間なの?それとも、人間とは違う種族なのかしら?」

    ルリの問いに、少し間を置いてイオは答えた。

    「人間ではありません。けれど、“新しい種族”とも言い切れません。
    私は、こことは違う場所からきました」

    「その仮面は何のため?」

    眉をわずかにひそめてトが尋ねる。

    「この世界を映すためです。」


    「…観測者と言うなら、この世界について何か知っているのかい?」

    レイが身を乗り出す。

    「私はあくまで“蓄積された記憶”を扱う存在。
    ですが、そこから法則を導くことはできます。
    ただ――私の機能が完全であったとしても、それは、この世界の誰かが語らない限り、私は知りえません。」

    その時、遠くで爆発音がした。

    タトにはすぐに分かった。
    火柱が上がる音だ。
    大きい。

    「ミミだ!!森へ行く!」

    タトは、装備を一気に掴むと走り出した。

    教会の裏手へ出た時に、塔の上からイオが指を指した。

    「北西の方向です。」

    よく響く声でそう言うと、崩れた塔の五階からふわりとタトの横に降りた。

    「イオ…!飛べるのか?!」

    「飛び降りたのです。さあ、向かいましょう。」

    二人はちらつく雪の中、
    森へ駆けていった。



    (つづく)


    ←前のはなし    |    →次のはなし



    ◯本篇はこちら


    ◯設定・サイドストーリーはこちら


    画像
    主な登場人物


    画像
    用語解説



    この記事が参加している募集

     
     
    ぼんやりと生きています。心に湧いたお話は『ナルニア国物語』を思わせる、「児童文学ファンタジー」をちょっぴりと目指しています。 ◆note: 長編小説「追憶のオリジン」(全話公開中)イラスト 短編/短歌/自由詩/エッセイ ◆tales: 「追憶のオリジン(改訂版)」「読み切り」

    あなたへのおすすめ