メインコンテンツへスキップ
見出し画像

#5-12 白い森の先へ|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街

    ←前のはなし    |    →次のはなし

    第12話 白い森の先へ


    ミミの傷は深く、ルリは毎日、手当てを続けていた。

    タトとレイは連日、冬の森で食料を調達した。
    普段はミミに頼りきっていた二人だったが、互いがとても心強い相棒であることを新たに発見していた。

    タトは、レイの耳の良さと狩りの技術に驚かされ、
    一方のレイも、タトの森歩きの“勘”に感心していた。まさに、生まれ持ったものなのだろう。

    長い時間を共に過ごすうち、レイは自分の魔法について少しずつ語るようになった。


    「――あのシロオオタカは、君の相棒かい?」


    ある日、上空を旋回する鷹を見上げて、タトが尋ねた。


    「ああ。あの子は雛から育てたんだ。そして、言霊で契約している」


    「言霊魔法で?」


    「言霊は、基本的には“意味を理解する相手”に作用する」


    レイは、ふと何かを思い出したように続けた。


    「けれど、印を見た者や、音を聞く者にまで有効な場合がある」


    そう言うと、足元から木の枝を拾い上げた。

    短い呪文を唱えると、枝に文字のようなものが刻印された。
    それを力いっぱい遠くへ放ると、枝は別の木にぶつかり、乾いた音を立てた。

    直後、茂みの奥で、ゴソッ、ドサリと音がした。



    「えっ、なに、どうしたの?」


    「あの音を聞いた獣の動きを、止めたのさ」


    倒れた獲物を確認しながらレイは言った。


    「工夫次第で、いろいろできる」


    そして、人差し指を唇に当て、いたずらっぽく笑った。


    「言霊は、聞く者の認識だけでなく、世界の響きそのものにも触れる時があるんだ。極秘だぜ」


    *


    ミミの容体がようやく安定したのは三日後のことだった。


    「ふぅ、ひと安心ね」


    ルリは満足そうに呟き、いつもの快活な笑顔をミミに向けた。


    「どう? どこか痛いところはない?」


    「ルリ……ありがとう」


    「大変だったわね。
    でも…なぜ、あんな現象が突然起きたのかしら…」


    「ミミ、おこりんぼだし……」


    「そんなことないわ。身を守るためでしょ?」


    「うん……。やっつけちゃえって思ったら、こうなってた」


    「そう。力が強いのね」


    ルリは優しく頷いた。


    「あまり気に病むことないわ。もう少し歌いましょうか」


    *


    さらに四日が過ぎた頃。


    「もうじっとしてられない! もう大丈夫! 動くー!」


    ミミが部屋で暴れ出した。
    その勢いに、ルリは笑い、タトは胸を撫でおろした。


    一行はいよいよ出発に向けて冬装備を整えた。

    タトはレイと共に慎重に計画を立てた。
    そうして、誰もいない崩れた「愛の塔」に別れを告げる。


    タ・ト、ミミ、レイ、ルリ、そしてイオは、雪に覆われた白い森を進み、最後の街――「空白の塔」を目指す。


    その街についての手がかりは、どこにもない。
    だが、あの氷山へ続く入り口は、きっとそこにある。

    いま、行かなければならない。

    違うことなく一致したタとトの直感が、そう強く告げていた。



    (つづく)



    ←前のはなし    |    →次のはなし


    画像
    用語解説
    画像
    主要キャラクター


    ◯本篇はこちら


    ◯設定・サイドストーリーはこちら



    この記事が参加している募集

     
     
    ぼんやりと生きています。心に湧いたお話は『ナルニア国物語』を思わせる、「児童文学ファンタジー」をちょっぴりと目指しています。 ◆note: 長編小説「追憶のオリジン」(全話公開中)イラスト 短編/短歌/自由詩/エッセイ ◆tales: 「追憶のオリジン(改訂版)」「読み切り」

    あなたへのおすすめ