
#2-4 森の中の出会い|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜
第4話 森の中の出会い
「はっ…」
タトは思わず息を呑み、木の陰に身を潜めた。
人がいる――それは想定内だ。
だが、その姿に目を見張った。
小柄な体に、燃えるような赤毛。ゆるくうねる髪の隙間から、獣のような耳がピンと立っていたのだ。
(まさか、獣族……火の化身と聞いたことがある。あんなに小さいのに、これほどの圧を感じるなんて)
その耳がピクッと動き、タトの息遣いを捉える。
次の瞬間には、鋭い視線が一直線にこちらを射抜いた。
それは、敵意に満ちた野生の目だった。
「グルルルル…」
低く、喉を鳴らす音。タトの背筋に冷たいものが走った。同時に全身が熱くなる。動く準備はすぐにできた。
だが、逃げられない。敵うはずもない。
タトは、深くひとつ息を吐くと、木の陰からスッと全身を現した。
「こんにちは。ボクはルミナリーから来たんだ。キミは、フェリサリアの子?」
赤毛の子どもは、一瞬きょとんと目を見開いた。
――ミミは、少し前から気配に気づいていた。近づいてきたので脅かしてやろうと睨んだら、まさかの人間。
しかも、なんだか優しそうだ。
「!?」
警戒が緩む気配を感じて、タトは続けた。
「フェリサリアでは、森で火を使ってもいいのかい?」
「あ、うん。ミミはとくべつなの!」
「ボクは、フェリサリアまで行くところなんだ。少し話を聞いてもいいかな?」
「ミミに!? うんっ、いいよ!」
ぱっとその子の顔が明るくなった。
タトはゆっくりと、森の木陰を抜け、火の灯る広場へと進んでいった。
(つづく)